1時限目『魔物概論』特別講師:ラタトスク 下編

「はっはっはっ! どうっすか皆さん! オレはやり遂げったっすよ! ミッションコンプリートっす!」

リーテン主神教会の小さな聖堂に騎士見習いクラルテの意気揚々とした声が響く。
そしてそれを何とも言えない面持ちで見つめるリーテン主神教会のいつものメンバー。

「はい。魔法による治癒効果の促進とアルコールによる患部の消毒をしておきました。数日もすれば傷跡も綺麗に消えると思いますぅ」

「親切な神官さん、ありがとー」

リーテン主神教会のメンバーが微妙な顔をしている原因はプティー司祭から足の傷の治療をうけ終わった、小さな体に大きく柔らかい栗色の尻尾を持つ獣人……ラタトスクである。

「キミかわいいねぇー。どう僕とお茶しない?」

「ごめんねー、もう気になっている人がいるからー」

オランニェ騎士団がさっそく振られているがそれはまぁいいだろう。
一番の年長者であるボル司教に対して何とかしてくれという視線が集まるが彼は目を逸らす。そして仕方なく、No2であるネーロ執政官が口を開く。

「えー、本日は当教会のためにわざわざ来ていただきありがとうございます。我々の目的を理解し、それに対して協力して下さる…つまり魔物に対する勉強会を開いて下さるという認識でよろしいでしょうか」

「はい。 クラルテ君から聞きました、魔物に対する理解を深める…それは素晴らしいことだと思いますし、ボクの能力がその一助となればと思います」

「はぁ……よりにもよってラタトスクを連れてくるなんて」

「どうされましたか、えーっと」

「ネーロです。皆からはネーロ執政官と呼ばれています。まぁ、こちらの話なのでお気になさらず」

「そうですか。あっ、私はラタトスクのラスクといいます。では、早速ですが勉強会を開かせていただいても?」

ラスクの問いにネーロ執政官は手を口元に当てて長考する。その長考の後、ネーロ執政官は「お願いします」とだけ短く伝える。

こうして魔物による反魔物国家の教団職員への勉強会という奇妙な取り組みがスタートした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――
「では、では、魔界の情報屋さんことラタトスクによる『魔物概論』の講義をはじめますー」

「……わぁーい」(意気消沈)

「むぅー、皆元気ないよー! 講義をはじめまーす」
「そうっすよ、折角の機会なんすから」
「そうだねー、元気にいこうよ」

「わぁあい!」(ヤケクソ)

講義に乗り気のクラルテとオランニェ騎士団、講義に気が進まない残りの面子も半ばヤケクソ気味に講義に参加する。

「では、そもそもですねー。皆さんは魔物ってどんなものだと認識してますか?」

「半裸のエロイねーちゃん……かな」

「だれかオランニェ騎士団長をこの部屋からつまみ出してくれませんか」

「そうですね、オランニェさんの認識でけっこう合ってますね」

「ま、まさかの正解だったみたいですぅ…」

「私たち魔物はだいたいエロイです。なぜなら、エロイことが私たちの本能に係るからです」

「あ、てめぇら魔物とエロイことになんの関係があんだよ、え!」

「私たち魔物は気性や性質については種族によって様々ではありますが、魔物達の多くは性欲旺盛かつ好色で、人間の男性、そして人間の男性との性交が大好きなんですよ。そうだとしたら……エロイ方が何かと都合がいいとは思いません?」

ラスクの語る魔物像にリーテン主神教会のメンバーはまったく納得できないという様である(一部除く)。

「あ? じゃあ見た目がバケモノみたいなやつらはどうなんだよ。 俺ら人間が肌が青い女や目が1つしかない女、背中に蜘蛛の足が生えてる上に男を半身に変えるような女に欲情するとでも思ってんのかぁ?」

「ふふーん、そういった普通の人間の女性にない特徴も私たち魔物にとっては結構魅力になるんだよー。例えば私たちラタトスクのこの大きな尻尾だって未来の旦那様に自慢できる1つだしね。あ、あとあんまり単眼っ子のことバカにしないほうがいいよ。単眼の子の中には上級の魔物がいるからね。」

ラスクはそういうと、つかつかと授業を受けているクラルテの方に歩み寄る。
そして、尻尾を差し出す。

さわさわ…

「こ、これは……やばいっす」

「なに触っとんねん!」

ロート副団長にどやされそのまま教壇の方に帰るラスク(の尻尾)を名残惜しそうに見るクラルテ。あの尻尾はどうやらやばいらしい。

「まぁそれに、魔物として一番は自分のエロさで男の人に振り向いてもらえるのが一番ですけど、それで無理なら、強引な性交、誘惑、魔術、薬、奉仕、様々な手段を用いて
男性の身も心も魅了し、自らの虜にして、男性を手に入れようとしますからね。例えば私たちが『情報』という武器を使うみたいにね」

「はぁ…
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