暗黒魔界ペルセンプレ グレイリア・サバト暗黒魔界ペルセンプレ支部前
ドキッ…ドキッ…ドキッ…。
「1」「2」「5」……
心臓がうるさいくらいに鳴っている。大丈夫…なはず……だってしっかり勉強したもん。魔法教養学・専門医療魔法学の筆記試験は今までで一番できたと思うし…。
「9」「13」「14」……
魔法の実技試験は……う、うん。実技試験はあんまりできなくてもサバトに入ってからしっかり訓練するから大丈夫らしいし、す、少し失敗しちゃったけど多めに見てくれるはず!
「20」「24」「25」……
面接は……あ、あれは仕方ないよ!「傷ついた男性の患者さんを救うためにその患者さんと長時間肌を重ね合わすことが出来ますか?」って…そ、想像しただけで恥ずかしくて頭の中真っ白になっちゃって…何て答えたのかすら覚えてないんだよなぁ……。うー、面接の前に「必勝!医療サバト面接100選」で対策はしっかりしてたのに……
「28」「35」「39」……
私は、手元に握りしめられた受験票を見る。「【グレイリア・サバト 暗黒魔界ペルセンプレ支部 加入試験票】【受験者名:ビアンコ】【受験番号:43】」私は、恐る恐る自分の受験番号が掲示されているであろう合格者発表掲示板を見る。
「41」「48」「51」 以上合格者15名
「今回も……だめだったかぁ……」
私は、泣きそうになるのをなんとか堪えながら合格者発表会場を後にする。何で私はこんなに出来が悪いんだろう……。私のお母さまは古式魔法の使い手でシロクトー・サバトに加盟している魔女である。なんでも暗黒魔界ペルセンプレ周辺国家の支部長を任されているそうだ。そしてお父様も強力な魔法を操る元主神教会の勇者である。トンビが鷹を産むって言うけど……竜が芋虫を産むこともあるのかな……。
「うっ……ぐすっ…だ、だめ、強い魔女は試験に落ちたくらいで泣かないもん」
自宅までの帰り道、その道のりの中で頭の中が自分を否定する言葉でいっぱいになる。その言葉はそのまま自分の目から今にも溢れ出そうとしていた。道行く魔物娘のお姉さんが心配そうな顔で私を見ている。もし、私がお姉さんやお兄さんに素直に頼ることができる魔女であればそういった心配の目は心強いものであったかもしれないが不器用な私には周囲の皆を心配させてしまている事に対する罪悪感を膨らませるだけであった。
「お嬢ちゃん大丈夫? お姉さん美味しいお菓子のお店知ってるから一緒に食べに行かない?」
遂に見かねたサキュバスのお姉さんが私に声をかけてきてくれた。「ありがとう。お願いします」私はそう伝えようと思った。でも、不器用な私の口から出てきた言葉は……
「っ、心配かけてごめんなさい。 1人で大丈夫ですっ!」
私は親切なお姉さんにそうとだけ伝えるとその場から逃げるように駆けだした。
――――――――――――――――――――
暗黒魔界ペルセンプレ 中央部 路地裏
「ひぐっ…ぐすっ……お姉さんにひどい事言っちゃった。勉強もできない、素直にもなれない、やっぱり私みたいなのが1人前の魔女になるのなんて無理なんだ」
親切なお姉さんから逃げた私は1人、人気のない路地裏でうずくまって泣いていた。
お母さまやお父様は、魔女でありながらいまだに特定のサバトに加入していない私に「焦らなくても自分のペースでいい」と言ってくれている。でも、私と同年代の魔女たちが様々なサバトに加入し、実績を残していたり……大切なお兄ちゃんを見つけていたりすることを知っている私は急がなくちゃいけないと焦りを感じているのだ。少なくともいいサバトに入らなくちゃいけない。そうすれば、こんな私でも認めて大切にしてくれるお兄ちゃんに出会えるはずだから…。
「頑張らなくちゃ……、いいサバトに入って……、いいお兄ちゃんを見つけて……、人並みの幸せを手に入れるんだ」
「勉強を頑張って、いい教育機関に入って、いい仕事先を見つけても必ずしも幸せになれるわけでははいぞ。そこんとこちゃんと理解しといた方がいいと思うぞ」
「えっ!?」
1人で悩みこんでいた私は、私の口から洩れた独り言に返答があったことに驚き顔を挙げるとうずくまっている私のことを興味深そうに眺めている全身黒ずくめのお兄さんと目が合った。
「だっ、だれですか?」
「俺は、……旅の薬師のネグロだ。お嬢さんは?」
「あっ、えっと、魔女のビアンコっていいます」
「そうか」
私は突然のことにかなり慌てた。なんたって1人で泣いていたらいつの間にか目の前にお兄さんがいたのだ。しかも、お兄さん、薬師のネグロさんから放たれている魔力やにおいで分かったけど、このお兄さん未婚者で特定のお相手もいないようだ。暗黒魔界ではかなり珍しいフリーの男性である。ちなみに私は初めてフ
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