恋心を自覚した幼馴染

翔と神社に行った後、山を下りたあたしたちはそのまま解散して家に帰ることにした。

「ただいまー」
家の玄関を開け靴を脱ぐ、家の奥から足音がすると母が迎えに来た。
「おかえり、ご飯できてるから手洗ってきてね。」
そういうとまたすぐに廊下の奥に戻っていってしまう。
母に言われた通り洗面所で手を洗い、居間に向かう。
居間では父がテレビを見ていた。
「ただいま」
「おかえり、また翔君と遊んできたのか?」
「うん」
あたしは席について考え事をする。
考え事とはあの神社の事だ。

あたしはあの神社の奥から何かがこちらを見ていることに気付いた。
けど、そのことを言えば翔は怯えて早く帰るように言うだろう。
だから黙っていたのだが、突風が吹いた瞬間気配が強くなった気がして翔の方に駆け寄った。
翔は開いた神社の扉を見て固まっていた。
あたしは扉の奥にいる存在を睨みながら、翔を引っ張っていった。

あの神社の奥にいる存在、あたしはそれが気になって仕方が無かった。
明日は一人であの神社に行ってみようか。
そんなことを考えながら、ご飯を食べ終わり部屋に戻る。
布団にもぐり、あの神社の奥にいる存在がどんなものか想像しながらあたしは眠りについた。

目が覚めるとあたしは急いで着替えて家を飛び出し山へ向かう。
山を登り獣道を通り神社にたどり着く。
神社は昨日と変わらずにそこに立っていた。
しかし、昨日よりも気配が強くなっているのを感じた。
あたしは神社の中を覗こうとスマホのライトで照らす。
入口付近には燭台がいくつかあるのが見えた。
しかし中は思ったより広いのか全体の様子までは分からなかった。
とりあえず入口に危険はなさそうだと判断し、あたしは扉を開ける。
中に入ると、ふわっと甘い香りに包まれる。
それと同時に扉がひとりでに締まってしまう。
驚いて扉を開けようとするが、何故かびくともしない。
すると、後ろからずるずるという音がした。
スマホで照らしてやろうと急いで取り出したが、何故かライトが消えていた。
さらに電源までつかなくなっている。
あたしは精一杯勇気を振り絞ってずるずると近づいてくる存在を睨みつける。
それが今のあたしにできる精一杯の抵抗だった。
近づいてきたそれは扉から入ってくる日の光に照らされる直前で止まる。
あたしが警戒していると、突然パチンッ!と音が鳴り響く。
それと同時にガタガタと音がして扉が何かに覆われる。
外からの光も完全に無くなり何も見えなくなってしまう。

「待っていましたよ、あなたなら必ずここに来ると思っていましたわ」

突然あたしの目の前から声が聞こえた。
それは女性の声で優しくあたしに話しかけてきた。

「あなたとあなたの幼馴染に秘められた恋心を目覚めさせるため、この蒼龍が全力で支援いたしますわ!」

その声と同時にボウッと燭台に火が点く、そこに照らし出らされたのは下半身が蛇のような形をしており、両腕は鋭い爪と青い鱗に覆われた女性だった。

「……は?」

あまりに現実離れした光景に困惑することしかできなかった。
その女性はこほんと咳払いをして。
「失礼、つい興奮してしまいましたわ、私は蒼龍、この山に住まう龍ですわ」
この山に住む?龍?ますます意味が分からない。
「ふふ、困惑するのも無理はありませんわ、何せ私たち妖……魔物娘はその姿を隠して活動していますの、初めて見たというのも仕方ありませんわ」
もう頭がおかしくなりそうだった、様々な疑問が頭に浮かぶがうまく口に出せない。
「まあ、そこら辺の話は後々分かりますわ、今はあなたの思い……恋心を目覚めさせるのが先決ですわ」
「ま、まって! さっきから恋心、恋心って、一体何のことだよ!」
「何って……幼馴染であるあの子への恋心ですわ」
「意味わかんねー! 翔とはそんな関係じゃねーし! そもそも何であたしと翔が幼馴染だって知ってるんだよ!」
「それは……聞いたのですわ、そういう関係だと」
一体誰に聞いたのか、そんなことより一番の疑問はあたしが翔に恋をしていると思っていることだ。
「あなたは自覚していないのでしょう、けれどこれまでにもあったはずですわ、あなたが彼を意識していると分かることが」
「それってなんなんだよ……」
「例えば、触れられた時に一瞬ドキッとしたり、恋人って関係じゃないと言われたときに心がざわついたり……」
そう言われてハッとする。
確かに昨日翔の家に行ったとき、あたしは翔の家の縁側に寝転がった。
その時に服が捲れて胸が出てしまった、その時は気にしてはいなかったが翔に見られていると思った瞬間、少しだけドキドキしてしまった。
山に行く前にからかって恋人だと思っているのかと聞いた時、お前みたいな男女は嫌だと言われたとき、少しだけ胸にチクリとした痛みが走ったのを感じた。
その時は
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