どろどろにとけてしまいそう

僕は一流冒険家のディグ・ホリー!今日も今日とて洞窟探検に出かけるのさ!

今日僕が行く洞窟は通称『泥の洞窟』という場所。
なんでも、中がものすごい泥まみれでとにかく歩きにくいわよく滑るわよく転ぶわでちょっと危険な洞窟らしい。
しかも最奥はだだっ広い部屋があるだけでお宝が一つも無いとか。

だけど僕は思うんだ、それはただ探索が足りてないんじゃないかってね。
ほら、よくあるけど、道中すごい苦労したからきっと最奥にお宝が置いてある!っていう思い込みってやつ。
そういう思い込みが最奥での探索を疎かにするのさ。

もちろん僕はその点に関しては抜かりはない!たとえどれだけ苦労したとしても、仕掛けは最後の最後まで存在する。
隅から隅まで、それこそ壁や地面に埋まっている石ころの一つ一つを調べる覚悟でいかなきゃダメなんだ!

僕はいままでも、そうやって隠された部屋をみつけてきた。
でも、大抵は先客がいるんだよねえ・・・・・・
財宝を守るグリフォンにドラゴン、そういった魔物が毎回鋭い眼でこっちを睨んでくるんだよ。
もちろん冒険は命あっての物種、そういうのがいたら一目散に逃げる!

・・・・・おかげで毎回しょっぱいお宝しか持って帰れないせいで、その日の宿代にも困る始末。
だから、今回の泥の洞窟ではなんとしてもすごいお宝を見つけていっきに大金持ちになってやるんだ!

なんでも、泥の洞窟は魔物が一匹もいないとか、まさに僕のための洞窟といっても過言ではない!
僕は宿を出て意気揚々と洞窟に向かっていった。



さて、僕は今、泥の洞窟の最奥にいるのだが・・・・・・
本当に道中は魔物が一匹もおらず、それどころか泥だけでこれといったトラップもないというなんともスリルに欠ける洞窟だった。
しかし最奥には前情報と違い、道が続いているかのような穴が開いていたのだ。

まさかこんな分かりやすい穴を見逃すようなやつがいるとは考えにくい。
まさか誘われているのか?
しかし、進めそうな場所があるなら進んでみるのが冒険家というもの。
僕はその穴にホイホイと誘い込まれるように中に入っていったのだ。



しばらく歩くとさっきの場所より少し小さいものの、それなりに広い部屋にでる。
その中心にはこれ見よがしに宝箱が置いてある・・・・・・

「男は度胸!なんでも試しに開けてみるもんさ!」

僕は迷うことなく宝箱を開ける、罠が起動する気配は・・・・・
なかった。
気になる中身は・・・?

「指輪?」

中には綺麗なオパールでできた指輪があった、それも丁寧に二つ。
しかしこれだけ綺麗ならそれなりの額になるはず、僕はうきうきしながらカバンに指輪を入れた。
その時だった。

べしゃぁっ!


何かが僕の背中に張り付いてきた!

「うわっ!なんだあ!?」

張り付いてきたそれはまぎれもなく泥だったが、泥は生きているかのように体を包んでいき・・・・・
あっという間に僕は体のほとんどを泥に包まれてしまった。

「くそっ!なんだよこれ!」

僕は必至でもがくがまったく動かない、というか泥で包まれているというのにだんだん心地よくなってくる。
まるで誰かにやさしく抱擁されているような、そんな感じだった。
しばらくすると、突然目の前で泥が盛り上がっていき、あっという間に胸が豊満な女性の姿になった!

噂には聞いたことがある、泥でできた魔物がいると。
その魔物は人間の女性の姿をして人を誘い、泥で包んで殺して吸収するのだと!
恐怖で心臓がバクバク鳴りだす、その魔物はニッコリと柔らかい笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる!

ズルズル ズルズル ズルズル

「あっあっ・・・やめ、やめて・・・」

ズルズル ズルズル ズルズル

その魔物が僕の顔に手を伸ばしてきた瞬間、僕は反射的に目をつぶってしまった。
しかし・・・・

「んっ・・・ちゅっ
#9825;」

「んっ!?」

唇に何か柔らかいものがあたる
これはまさかキス・・・? キス!?
えっ?えっ?どういうこと?ちゅって聞こえて唇に何かあたったからキスだよね!?
突然のことに混乱してしまう、思わず目を開けると・・・・


「えへへ、やっと会えたあ」

そこには先ほどと変わらず、柔らかく、蕩けた笑顔の魔物がいた。

「ずうっと待ってたんだよ?わたしのお婿さん
#9829;」

「お婿さん・・・えっ?!」

突然のキスに続いて今度は突然のお婿さん呼び。
混乱しすぎて一周回って冷静になる。

「ちょっと待って、一から説明してくれないか?」

「うん!えっとね、お婿さんは私の大切な人っていう意味で・・・」

「お婿さんの説明じゃなくて!どうして僕が君のお婿さんなのかってこと!」

「え?えっと、えっと・・・私の結婚指輪を受け取ってくれたから?」

受け取った?まさか
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