ぬちゃぬちゃと粘性の音が鳴り響く。石造りの洞窟を改造した玉座の間、そこの玉座に私は腰を降ろしていた。
玉座、そういえば普通の椅子が連想されるだろう、華美な装飾がなされた優美な椅子を。だが、私が腰掛ける玉座は正確には椅子ではない。
私より少し背が高い女性。とろけるような美貌、豊満な体、頭に頂くのは小さな冠、私よりもずっと玉座に座るにふさわしい外見の女性である。
だが、実は彼女こそが玉座なのだ。
青く透き通った体、胸に浮かぶ赤い核。彼女はヒトではない。世界に多く存在するヒトに似たヒトならざる存在、魔物と呼ばれる種族の一つである。
彼女はスライムと呼ばれる不定形の体を持った魔物、その中でも彼女はクイーンスライムと呼ばれる特殊な種類のスライムだ。
クイーンスライム、読んで時の如く、女王であるのだが、実際には王に奉仕する事のみを喜びとする隷属の女王。そして、その王が私だ。
私は元々船乗りだった。交易船で香辛料を運んでいたが、嵐で船が難破、海に放り出されてこの小さな島に流れ着いた。そしてここで彼女に出会った。
ヘシ折れた腕を庇いながら雨を凌ぐ為に洞窟に入ると、彼女は一人でそこにいた。大きな石の陰でひっそりと佇む彼女を見たとき、私は心から震えた。
教団は魔物を邪悪なものというが、寂しげに佇む彼女は、儚く、そして何よりも尊く美しい物に思えた。
声をかけようとした瞬間、私は彼女に襲われ、その粘液の体に捕らわれた。唇を会わせ舌を吹い尽くされる。そしてその後耳元でこう囁かれた。
「お待ちしておりました、我が王よ」
クイーンスライムは主人を認めるまでは単体で存在し、主を定めた後は昼夜なく交わり続け、精を蓄える。私も幾度も彼女の手や口で弄ばれ、その透き通った体に精を吐き続けた。精を蓄えた後、彼女が女王である本質が現れる。
体の一部が肥大化、剥離し新しい個体が現れたのだ。その個体は胸に核を抱いておらず、頭に頂くのは冠ではなく丁度侍女が被るようなヘッドドレス。新しく産まれた個体は女王に侍り、王に奉仕する新たなスライムだ。私は便宜的に彼女たちをサーヴァント(奉仕者)と呼んでいる。
その後はサーヴァントも交えて交わり続けた。口も舌も女性器も、同じ軟体の筈なのにすべての感触が全然違う、私は為すすべもなく精を吐き出し続けた。そうして精が蓄積されるとまた新たなサーヴァントが産まれてくるのだ。
不思議と交わり続けていても疲れなかった。どうやら彼女たちの唾液(とおぼしき分泌物)には強い滋養効果があるらしく、どれだけ交わっても疲れない、眠気さえも訪れないのだ。
サーヴァントの数が増え続け、洞窟が一杯になった頃の話だ。サーヴァントは全員容姿が似通っているが、私には何故かすべての個体の区別がついた。どうやら女王は全てのサーヴァントと思考の一部が繋がっており、女王の主、つまり王と認められた私も女王と思考の一部をリンクさせてるからその細かな違いに気がつくのだ。まさに解け合うように交わっていたので不思議ではない、恐らく彼女が有する魔力が私の脳の一部を変質させたのだろう。
ある日、いくら食べなくても疲れないとはいえ、流石に食べ物の感覚が懐かしくなった。何か食べたい、甘い果物が良い。そんな事を思っていたら56番目に分化したサーヴァントが小振りな黄色い果物を持ってきた。恐らくマンゴーというものだろう、交易品として何回か扱った事がある。サーヴァントが持って来た果物を女王が剥き、私の口に運んでくる。この時はじめて私は王である事を自覚した。
まぁ、自覚したとっても何かが変わった訳ではないのだが。それでもサーヴァントが増えるとこの洞窟だけで収まらなくなってきたので、私はサーヴァント達に彼女たちが住むべき住居を整備させた。技術や知識は私を経由して得ているのか、建築方式が故郷に似た建物が建ち並んだ。暫く私は女王が移動式の玉座となって島をうろついた。彼女たちは私が動く事をあまりよしとしないのだ、だから自分が腕や足として代わりに動きたがる、これも奉仕と考えているのだろうか。建物が建ち並ぶようになり、果物が果樹園として栽培される、島はいつの間にか小さな国になっていた。
それから5年、あ、いや、6年だったか? ついに島の住居が一杯になった。これ以上増築しようとすると果樹園の木までも切り倒さねばならなくなったのでこれ以上開発できなくなったのだ。どうした物かと考えていると、女王が島の端まで連れていき、対岸の島を指さしてこういった。
「あの島を開拓しようと思うのですが」
「渡れるのか?」
「問題ありません、許可を頂けますか王よ?」
悩むことはなかった。直ぐにそれを許可し、私たちは洞窟に戻った。
私に奉仕するのは女王とある程度の数のサーヴァントだが、彼女らは女王を除
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