4夜目(前半)

 ・・・ん、ああ君か。すまないね、最近どうもぼんやりしてしまう事が多くてね。折角私みたいな偏屈な人間にわざわざ会いに来てくれているのに申し訳が無いね。
 さてと、君の推論を聞く前に良ければ最後の私の失敗談を話しても構わないかな?


・・・ん、有難う。では最後の私の恋人探し失敗談を話すとしようか。
 少し前に、魔物娘に会うための手段が幾つかあることは話したね。その時に言った手段の一つなのだが魔物娘の生息地に自分から立ち入ってみることにしたんだ。
 京都は盆地で山に囲まれていて、しかも魔力が濃く残っている事は話したね?そんな特異な場所だからこそ山に入れば必ず魔物娘がいるであろうと推測したんだ。とは言え、私も学生の身であるから時間も体力も限られているからね。特別に有名な山を狙う事にしてみたんだ。
 私が訪れたのは稲荷大社の裏にある稲荷山なんだが・・・知っているかな?千本鳥居で有名な稲荷大社を入り口として一周出来る山なのだが、神秘的で気持ちが洗われるようでね君も今度行ってみると良いよ。勿論神社の巫女さんはイナリの可愛らしい子達が多くてね、狐憑きの子もいるらしいのだが私では見分けることが出来なかったよ・・・。
 でだ、観光地されているとは言えあくまでそれは一部であって参道を離れると直ぐに人気のない場所に出られる訳で当然ながら迷う事になるのだが・・・私はきっと愚か者だったのだろうねそんな事を一切考えずにひたすら歩き回ったのさ。
 小一時間も歩くと急に視界が開けて目の前に古びた社が現れたんだ。これは、比喩じゃ無くて急にまるでワープしたかのように急に現れたんだよ。これは、間違いなく人知を超えた力、魔物娘の力だと思って喜び勇んで社に向かおうとしたのだが・・・進まないんだ。
 一歩、また一歩と確実に歩いているはずなのに、目の前に社があるはずなのに何かに拒絶されるかのように進まないんだ。何を言っているのか解らないだろうけど、私もどうなっていたのかイマイチ記憶がはっきりしないのだが・・・兎に角、頭がどうにかなりそうな状況に置かれてしまったわけだ。諦めて、帰ると言う選択肢が頭に浮かばなかった辺りからもう私はきっと精神的に妙な状態にあったのだろうね。
 
これはもうどうしようもないと諦めて休憩も兼ねて座り込むと、ふっと白檀のいい香りと共に琴の音の様に美しい声が聞こえて、慌てて前を向くと美しい9本の尾を持った妖狐・・・なのだろうね、その方がこちらに話しかけてきていたんだ。

「おや、若い人の子が来るとは珍しい。折角だからそんな所で座り込んでいないで私の家で休んで行きなさい。」
 
上手く説明できないのだけれども、あの方は私達人間や魔物娘とすら次元が違う感じがしたんだ。月並みな言葉でしか表現できないのがもどかしいのだかれども、「格が違う」存在だったんだ。だから、私の声が掠れてしまったのはたぶん喉が渇いていたせいでは無いね・・。

「あ、その社には向かうとしたのですが・・・一向にたどり着かないのです。」

ふと妖狐は考え込むとこう告げてきたんだ。

「君が見ている社は 探求の社 と呼ばれる場所でね、何かを探していたり迷って居たりする人の子が辿り着く私の住処だ。」
「そうやって辿り着いた人の子を私が暇つぶしも兼ねてアドバイスや時には道具を贈って迷いから救い出すのが通例なのだが・・・どうやら君は複雑な状態にあるようだね。」

「複雑・・・ですか?」

「ああ、この社には救いを求める者以外には見えもしないしたどり着けもしない。一方で救いを求める者には見えるし辿り着くことも出来るはずだが。」
「だが、君は社が見えているにも関わらず社に立ち入ることは拒絶されている。これは明らかにこの場所の理から外れた状況だ、異常だと言っても良いだろう。」

「ああ、それなら・・・きっと私は迷っているけど魔物娘には一生近づくことすら許されないとかそういった暗示なのかもしれませんね」
 私が自虐の笑みを浮かべつつそう告げると、あの方はそっと微笑みながら全てを見透かすような目でこう返してきたんだ。

「ああ、そうか納得がいったよ。魔物娘と仲良くなりたいのだけれどもどうやっても失敗する滑稽で不幸な男だと自分の事を認識しているのだろうが、人の子よそれは違う。」

「違う?違わないでしょう?だって私は今まで会った全ての・・・それこそ全ての魔物娘に拒絶されて・・・・解ってますよ、魔物娘だって魅力がある人間と優先的に仲良くなりたいでしょうし私にそれほど魅力が無い事ももう十全に理解したんです。」

「ふむ、では人の子よ魔物娘との交際を諦めるのか?」

「ええ、今日の一件でなんだかはっきりした気がしますし。もう無理に魔物娘を追いかけてこれ以上無為な時間を過ごすのもやめることにします。私はもう一生独身で孤
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