前編

ただいま〜。僕は玄関のドアを開け一言。
今日は僕の姉の帰りが遅い日。
いつもなら姉さんが晩御飯の用意をしてくれるけど、こういう日は僕が晩御飯を作る。
姉さんが帰ってくるまでまだ時間があるから、何にしようかレシピ本を読みながら考えようかな。
えっと、昨日のご飯はっと…。


――――――――


生き物というものは何かを食べ、栄養を摂取して生きている。
それは我々魔物娘とて同じこと。食べ物を食べ、水を飲み生きている。
しかし、私にはそれに加えもう一つのモノを体内に取り得ないと生きていけない。
それは、
「晴人ぉ、姉さん帰りたいぞ…。」
我が最愛の弟、天城晴人から放出されるハルトニウムだ。
これを取り続けないと私は寂しくて死にそうになる。
これは決して大げさなことではない。
実際私の体に生えている鱗は心なしか、艶を失っているように思える。
はぁ、授業なんてさっさと終わってしまえ。
そんな風に考えていると、

「また晴人君の事で頭の中がいっぱいか。
 少しは真面目に授業を聞こうとする気はないのか…」

私の隣の席からため息混じりの声が聞こえてきた。

「なんだ奈々、晴人以上に大切なものがこの世にあるとでもいうのか」
「あぁある。少なくとも、今私達が受けているこの授業は大切だ」

相変わらずの堅物ぶりだ。
瀧尾奈々、こいつは私の従妹で私と同じドラゴン。魔物娘専門校トスビ工専の生徒だ。
何でもここの創設者は人間のお姫様、ユニコーンの令嬢と結婚した大企業の御曹司とか。
この学校を開いたのも「人間と魔物に希望と、可能性に満ちた未来を創るため」なんだとか。
偉い人の言うことは難しいが、この学校の御蔭で魔物娘の社会進出が進み、結婚数、出生率も年々増え、この国の経済も安定しだしたのは事実だ。

「そんな授業態度だと内申に響くぞ。そうなると、晴人君養う夢どうなるだろうなぁ」

……。そうだ、私は晴人を姉としてしっかり養うため、この学校に入学した。
つまりこの授業は晴人のため…

「姉さん頑張るぞ!晴人ぉぉぉぉ!!」
「天城さん授業中ですよ。騒がないで」

――――――


バターン!!
派手に玄関が開く音がした。
もう、ドアが痛むから静かに開けって言ってるのに。

「晴人ぉぉぉ!たっだいま〜!」
「お帰り姉さん」
「邪魔するぞ、晴人君」
「奈々さん、いらっしゃい」

帰ってくるなり抱き付いてきたのが僕の姉さん。
ドラゴンの天城光姉さん。
ちなみに、僕と姉さんは血が繋がっていない。
僕は天城家に引き取られた。本当の両親はよく知らない。
小さい頃は施設で暮らしていた。そこに今の父さんと姉さんがやってきて、僕を引き取ってくれた。
姉さんが言うには母性をくすぐられた、守ってあげたい、一目ぼれだったらしい。

「あぁ、晴人の匂い安心するなぁ」クンカクンカ
「姉さん…」

……。ちょっとへんなとこもあるけど、とても優しい自慢の姉さん。

「ほら光、晴人君も困っているだろう、もう離してやれ」
「邪魔するな奈々、もうちょっと位いいだろう」
「いや姉さん、離してもらわないと夕飯の準備が…」
「ごめんよ晴人!いま退くからな!」

やっと離れてくれた。姉さんは普段はクールでカッコいいのに、たまに暴走するんだよなぁ
でも、これも姉さんらしくて僕は好きなんだけど。

「晴人君、そろそろ夕飯にしないか?私も流石に腹が減った」
「おい奈々、いくら従妹とはいえ図々しいぞ」
「そうですね、夕飯にしましょう」
「そうだな晴人!」

…。まぁいいや、

「今日は二人共遅かったし、疲れてると思ったからカレーにしてみました!」
「ビーフカレーか、美味しそうだ」
「晴人が作ったんだ。不味いわけがないだろう」
「ほら姉さん、カレーよそうからご飯盛ってきて」
「わかったよ晴人!」

―――――


「ごちそうさま、また上手になったな晴人君」
「へへ、ありがとう奈々さん。食器は桶の中に浸けといてね」
「美味しかったぞ晴人!姉さん満足!」

晴人の作ってくれたカレーは本当に絶品だった。まぁ、晴人の料理は何でも美味いけどな!

「お粗末さま姉さん。冷蔵庫の中にアイスが入ってるからデザートにどうぞ。奈々さんの分もあるからね」

なんと、晴人は私のためにデザートまで用意してくれたなんて…。
アイスは私の大好物だ。特にチョコレート味のアイスが好きだ。
私は急いで食器を桶に突っ込み、冷蔵庫の扉を開けた。
あぁ、チョコレートがちゃんとある。姉さん嬉しくて何だか目の前がにじんできたよ
嬉々としてチョコレート味のアイスに手を伸ばした。
だがそれは鱗を生やした腕によって妨害された。

「奈々、これは晴人が私のために用意してくれたアイスだ。引っ込んでろ」
「悪いが譲れないな、私もチョコレート味のアイスが食べたい気分
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