後ろに控えているネイレスが手を振るう。
同時にリザールの周りを囲んでいた4体のネイレスが一斉に彼に飛びかかる。
ーーーーー瞬間
4体の動きが止まる。
「え?」
後ろに控えていたネイレスには見えていなかった。
リザールは四方に向かって爪を振るった。
高速で振るわれた爪は大気を切り裂き、大気摩擦により青白い光を放ち対象に衝突。
すると4体は青白く光り、肢体がバラバラになっていく。
体はみるみるうちに塵となり跡形もなくなった。
「そ、そんな・・・」
一瞬のうちに4体の体が引き裂かれてしまった。
その光景を目の当たりにしたネイレスはその場に力なく座り込む。
「結局人形は人形だ」
いつの間にか隣にリザールが立っていた。
「な・・・何を・・・知りたいの?」
ネイレスは恐怖していた。
次に殺されるのは自分だと悟ったからだ。
先程の4体はただの操り人形。
痛みを感じることなく消えた。
だが今回は違う。痛みを受けるのが自分なのだから。
「俺はさらわれた妹の血の臭いを追ってここまで来た。お前は見たか?」
「・・・うん・・・追っ手を殺せって・・・言われた」
「俺の妹を連れ去ったのはだれだ」
リザールの質問に怯えながら答えていく。
「ダークエルフ・・・魔王直属の・・・」
「!!・・・魔王・・・」
リザールはここにきて初めて驚きをあらわにした。
「・・・奴の目的は何だ?」
「そ、それはわからない・・・」
「・・・そうか」
しばしの沈黙が二人の間に流れる。
「・・・俺はもう行く」
「え?」
ネイレスは驚いた。
今まで見てきた人間の男は、魔物を見るだけで武器を振るい次々と殺していった。
経験を積むためだと言って自分を正当化して・・・
だが目の前にいる男は違うのだろうか
彼女の心に言葉では言い表せないような感情が芽生え始めていた。
そしてしきりに思うのだ。
彼についていきたい・・・と。
「あ、あのっ!」
背を向けて歩いていこうとするリザールを呼び止める。
「私も連れてって下さい!」
そう言って彼女は頭を下げる。
「私・・・ここにいても、魔王様に殺されそうだし・・・死ぬの怖いんです・・・」
リザールは振り返る。
「これからの道のりが危険だとしても?」
「はい」
「自分を攻撃に対する盾に使われるとしても?」
「はい」
「お前達の頂点である魔王を敵にまわすとしても?」
「・・・はい」
彼女の答えを聞き、リザールは満足そうに微笑む。
「名は」
「はい、アクラです・・・」
「そうか。アクラ、俺の名はリザール。」
そう言ってリザールはアクラに歩み寄り、手を差し伸べる。
「ついてこい」
その言葉を聞くと彼女は勢いよく顔を上げ、目の前に差し出された手を取る。
「はいっ!」
アクラが見たその時の彼の顔はとても穏やかで、彼女はその優しくも勇ましい蒼い瞳に魅了されるのだった。
・・・・・・・・・・
「ここは蘇生の森と呼ばれており、命亡き者や命を狩る者が生息するとされています。」
アクラはリザールの隣を歩きながら説明を続ける。
「その名の通り様々な場所で命亡き者が蘇りますが、それを狩る者が同時に命を狩るという無限連鎖がなされている場所です。」
「アクラ」
「はい?」
リザールの突然の呼びかけに首を傾げるアクラ。
「お前は地上で戦えるのか?」
「・・・いえ、それほど」
核心を突かれがっくりと項垂れるアクラ。
「ま、まさか、置いてったりしませんよね?!」
助けを求める彼女の眼差しをあっさり受け流すリザール。
「俺は今更決定を覆すつもりはない。」
「ご主人様ぁ〜♪」
アクラはふにゃっと破顔する。
「大好きですっ♪」
リザールの左腕に絡みつくアクラ。
彼女たちネイレスは、地上に出るとき魔物の姿を人間の姿に変容する事が出来る。
アクラには既に地を歩くための足が形成されていて、肌の色も青い肌ではなく人間と同色の薄桃色。
長い黒髪と金色に輝く目が印象的で、人間の女性と比べても彼女が魔物であることがわからないくらいだ。
服装に関しては露出度が高く、男を誘惑するのに適している。
下はショートパンツに上は胸元が大きく開いているもので、身長に見合ったその大きな胸が強調されている。
が、
リザールは全く気にも留めない。
(む・・・ちょっとくらいドキドキして欲しいのにぃ)
心の中で思うものの彼に届くはずもなく。
「アクラ。この門の中央にある石版は何だ?」
「は、はい?!あぁ、これはこの門の鍵です」
動揺しているアクラをしり目にリザールは次の行動に出る。
「なら、壊せば問題ない
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