4語目 イライラブレター(イライラ+ラブレター)

「『アン・バイレ・デ・ラ・サービエンタ』、通称『新君祭』」

新君祭・・・

「我々の世界にはDRコーポレーション以外にも、メイドを教育する企業がいくつもあります。そのいずれかの企業において新たに代表取締役の就任がなされた場合にのみ催される、いわば式典のようなものがこれです。」

・・・まただ
我々の世界、メイドを教育する企業
現実離れした言葉が次から次へと飛び出す。

「開催の周期は先程申し上げましたとおり不定期ですが、決まって人間界で行われることになっています。」

つまり前回の開催は去年だったかも知れないし、もしくは100年前だったという可能性もあるということだろう。

「各社は自社を代表するに相応しいメイドを選出し、どの企業のメイドが優れているかを競います。そして人間界でペアを組ませ、全てのメイドがペアを組んだ時点で開幕となります。」

「競技内容は『戦闘』。それぞれ教育の中で培った能力を生かし、力の限り戦います。・・・とはいっても相手を殺すまではいかず、アンサーの身につけている『シンボル』の破壊で決着となります。」

「中には、シンボルを壊すことなく残虐な戦いをする者も出てくるのは事実です。必ずしも殺されないとは限りませんのでご注意ください。」

「私からの説明は以上です、ご静聴感謝致します。詳細や不明な点があればご質問を受けますが?」

言葉が出るはずない。
戦闘・破壊・殺される
比較的安全な今の世の中でこんな事を言われたら誰だってパニクるに違いない。
実際俺がそう。
言っている意味は把握できる、説明全ては理解した
だけど、分からない。
理解していないのではない、分からないんだ。
きっとこれは自分の気持ち的な問題で、これを受け入れてしまったら現実になってしまうのではないか
その気持ちが意図的に思考を鈍らせている。

「ではそろそろ失礼させて頂きます、アンサー。私たちは弊社を代表するあなたを敬意を表してそう呼びます。良い答えを提出して下さること、社員一同期待しております。」

ベンチ越しにあった気配が消える。
俺は振り返ろうとするが、体がベンチに”張り付いたよう”に動かない。
今のが現実だったのかどうか
確かめることすら俺には出来ないのか・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれからどれくらい経っただろう
未だベンチに座り続ける俺。
気持ちに整理がついたわけではないが、だんだん落ち着いてきた。

「ふぅ・・・・」

辺りからはようやく音がし始め
いつもの住宅街に戻っていた。
青葉も心配するだろうし、そろそろ行かなきゃな・・・・

「・・・青葉」

・・・・・・もし
もし、先程の話が本当だとしたら
彼女がこの戦いに巻き込まれる事は必須。
彼女が傷つく可能性も・・・・・

ドクン

そう考えると自分の胸の奥が熱くなるのを感じる。
守りたい、彼女を傷つけたくない
きっとそんな想いからくる熱さなのだろう。
・・・・・正直言って、らしくない。
俺はそんなにカッコイイ性格ではない、まして戦いから彼女を守るなんて出来るはずが

「ああっ!やめやめ!!」

まだ確定してない現実から未来を導き出すなんて蛇足は人を余計に不安にさせる
今はなるべく、そう、なるべく考えないようにしよう。その時が来るまで。

「よいしょ・・・」

その場をあとにしようと足に力を入れる
が、
なぜかベンチから体が離れない。
え、何?!
何度やっても結局だめ
はあ?どういう事?

クシャ・・・・

おっと、なんかゴミ踏んじゃった
辛うじて首だけ動かし足下に目をやる。
踏んだのはどうやら紙。
足首を動かし、足を避ける

『ペンキ塗り立て』

・・・・・・。

ヒュゥ〜〜・・・・・

風と共に紙が飛んでいく。
あ、「張り付いたように」じゃなくて、本当に張り付いてたんだ
ふふふふはははははははっ!!

「誰がやったコラァッ!!出てこいや我っ!!」

ベンチにくっついたまま挑発する間抜けな俺
その目の前を風が何度も何度も通りすぎるのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「青葉、ここに座ってくれない?」

夕食の後、俺は今日の出来事を彼女に話すことにした。

「わかりました」

俺の真剣な声を察してくれたようで、青葉は俺の隣にそっと腰掛ける。

「今日、DRコーポレーションの使者に会ってさ」

「はい」

「新君祭が開催したらしいんだ」

「そうですか・・・」

反応を見る限りその存在を認知しているようだが、あまり嬉しいものじゃないらしい。
そんな彼女に思い切って今の気持ちを言ってみた。

「俺は、どうしたらいいのかな?」

他人に自分の決定を委ねるのは正直残酷だと思う
それは受ける方に重
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