EYE - 俺の左目が君の左目 -

雪が融け、小鳥が囀り、草木は葉を付け始める
春の季節が到来した。
旅人たちは再び歩を進め
他の生き物も再び活動を始める、そんな季節。

一人の旅人もまた、春の到来を心待ちにしていた。
ジェイル=ミラディア。
それが彼の名だ。
普段は軽口を叩くような男だが
ひとたびハープを持てば
美しい音色と透き通る声で全ての者を魅了するほどの才を持っている。
また治癒に関して高度の技術を有している実力者でもあるのだ。
そんな彼は今
街外れにある川の畔に立っていた。



<Main View>

目の前には向こう岸に渡るための赤い橋
・・・と、
それを渡る鎧の女。

「おいっ、鎧女っ!ちょっと待てよ」

実際
鎧を纏っている女など見たこと無いし
怪しいと思って、声かけるのだって躊躇したくなっちまうとこだが
そうもいかないんだよなぁ、これが。

「怪我してんだろ?」

怪我してる奴をほっとけないからな

「なんだ貴様、丸腰でよく私の前に姿を現せたな」

鎧女は両目を閉じたまま振り返る。
おっ・・・なかなかの美人じゃねぇか!

「その目。怪我してんだろ?見せてみろよ、俺こう”見えて”治癒魔法得意なんだぜ」

「・・・なんだ、全く殺気が無いと思ったらただの薬師か。」

「薬師じゃねぇよ」

「お前のなりは知ったことではないが、これは生まれつきだ。気にするな」

特に怒る様子もなくさらりと言ってのける。

「それより気になるのは、なぜお前が目を見ずに私の障害を見抜いたのかということだ」

ま、最初は誰だって驚くよな

「俺の目には術式を組み込んでんだ。左の紅眼には相手の損傷ヵ所や弱体ヵ所が見えて、右の蒼眼には相手の治癒頸や滋養ツボなんかが見えるようになってる」

「紅・・・蒼・・・」

少し俯きながら俺の言葉を復唱する。
ああ、そういうことか

「色、わかんねぇよな」

「・・・ああ」

「見てぇと思ったことは?」

「無いこともない。だがそんな想いは既に捨てた、見えないことで見えるものがあることにも気付いたからな」

「へぇ、奥が深いこった」

俺も女も橋の上に立ち止まり、互いの存在を感じながら話す。

「そういえば薬師。お前はなぜここにいる」

「だから薬師じゃねぇって。俺は旅してっからな」

「旅の薬師か、奇遇だな。私も旅をしている。」

もう突っ込むのはやめ!話進まねぇし!

「なんで旅してんだ?」

「お前・・・私を見て何とも思わないのか?」

女は怪訝そうな顔をする。
鎧で旅する女ねぇ・・・

「・・・変態?」

「斬るぞ」

眉間に少ししわを寄せ、剣の柄に手をかける鎧女。

「わ、わかった!鎧美人だな?!」

「・・・多少無理があったような気がするが、免罪。」

免罪って、おいおい
有罪だったらどうなってたんだよ!

「本当に知らんのか・・・?」

「おう」

「・・・私はデュラハンという魔物だ」

「へぇ・・・あんたがデュラハン」

「見たこと・・・無いのか?」

「ない」

「・・・」

「・・・」

「お前本当に旅の薬師か?」

「だから薬師じゃねぇよ」

「ならなんだ?」

「旅の歌人」

「・・・」

どうせ言うんだろ
お前が歌人とは笑えるな、とかさ。

「お前が歌人とは笑えるな」

まんまキタァーーーーー!!!

「笑えるな」

二度言うなよっ!

「と、言いたいところだが」

この時初めて、鎧女が微笑んだ。
何というか・・・綺麗だなぁ、おい。

「実に興味深い。私のために一曲歌ってくれないか?」

歌ってくれ・・・か
こんな風に求められたのはいつ以来だろう
確かに
これまで俺が歌えば人は集まってきた
だが歌って欲しいと言われた事はなかった
素直に嬉しいっ!

「いいぜ、とりあえず向こう岸にある岩んとこに座ろうや」



<Side View>

ガチャ、ガチャ・・・ガスッ

私が岩だと思われる場所に腰掛けると
薬師は向かい側に立って準備をしているようだ
気配で分かる。

ポロン〜ポロン〜・・・

ハープを使うのか
未だ声しか聞いたことは無いが
軽口のわりには出来る男なのかも知れない。

「鎧ちゃん、名前教えてもらっていいかな?」

鎧ちゃん・・・
危うく丸腰の相手を斬ってしまうところだった。

「・・・レイラ=インテリカ」

少し低い声で応えてみる。

「あ、あれ?怒ってる?」

流石に向こうも察したようだ。
何というか・・・
こいつと話していると充実感があるな

「続けろ」

笑いそうになりそうなところを堪え
表情を引き締め返答する。

「お、おう」

コホンという咳払いの後

「では誇り高き種族デュラハンのレイラに向けて歌います。曲名は『5−1=私に欠けたもの』」

穏やかなハープの音色が聞こえてくる。

「必要ない〜
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