誇りの果てに・・・

これは私がまだ勇者という人間の男を見たことがなく、人間に対して好意を抱くことさえ半信半疑だった頃の話だ。

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私はある遺跡への赴くよう任じられた。
その遺跡では武器や防具の材料として用いられる希少価値の高い鉱石が採掘出来ることから”勇者”が頻繁に出入りしているという。
その鉱石はとても美しく私たちドラゴンが好むもので何頭も幾度となく訪れたことがあるほどだった。
しかし長年の採掘によって鉱石は著しく減少し、資源の底が近いと判断されたため私たちドラゴンが保守することになった。

ゆうしゃ・・・

親や他の同胞からも聞いている。
人間の男に好意を持つ者もいると。
ひ弱な人間に好意をもつだと?
私はいろいろな奴の宝となった男を見てきた。
しかしどれも既に”所有物”と化しており、勇者としては見る影もなかった。
実際私の父親も人間だが彼は偉大だ。
なんたって私の母に勝利し私という子をもうけたのだから。
いずれにせよ
この遺跡には近いうちに勇者が来る。
じっくりと見極めてやろうではないか。

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ジャリッ!コッコッコ

俺は遺跡に足を踏み入れる。
この遺跡では我々勇者にとって重要な装備の素材が眠っている。
しかし近頃この遺跡にドラゴンが住み着いたらしく、何度も素材採掘のため勇者が派遣されたのだが誰1人として帰ってきた者はいない。
実際のところ俺はドラゴンがどういうものなのか知らなかった。
教団では伝説として語り継がれていたが、それによるとドラゴンは膨大な魔力を内に秘めていて魔王の交代の後も凶暴な姿を維持できるほどだとか。
つまり・・・”地上最強に最も近い存在”ということだ。
自分の剣の腕に自信がないというわけではない。
だが俺にとってそこは未知の領域。
油断は出来ない。
ドラゴン耐性は万全。剣の切れ味は抜群。
勇者は自分を奮い立たせながら遺跡の奥へと歩みを進める。

と、

「・・・・・・・・・ぃゃぁぁぁーーーー・・・」

ずいぶん遠くの方から悲鳴が聞こえた。
っ!!何があった?!
勇者は堪らず悲鳴のする方へ駆けだした。

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「ぎぃぃやぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっっ」

目の前には悲鳴を上げる勇者。

バキッボキッメリメリメキョッ

悲鳴と同時に聞こえる骨が砕ける音。
弱い。
さらに胴にまわした腕に力を込める。

ぎゅぅぅぅぅっ

すると悲鳴はより一層大きくなり、骨の断裂音も激しくなる。
私の目前では筋肉隆々でいかにも屈強な中年勇者がベアバックされている最中だ。
なぜこのような状況になったのか
一言で言うと
隙だらけだった。
こいつは私を見つけると一度身構えるものの、女とわかってか嘲笑を顔に浮かべながらこう言った。

「貴様がドラゴンか、これはこれはとても強そうなお嬢さんだ」

ーーーーーーーーー刹那

私は一瞬でこいつの前に移動し腕を胴にまわし重たそうなその体を持ち上げた。
そして今に至っている。

「ドラゴンの誇りを傷つけた代償・・・高くつくぞっ」

ぎゅううううぅっ

今まで戦ってきた勇者の中でここまで不快な奴は初めてだ。
腹の底から黒いものが溢れてくる。
他の勇者は気絶させサキュバスとかいう下等生物の巣に放り込んでやっていた。
人間を殺す・・・というのは私に何か罪悪感を与えるからだ。
が、こいつはそうはいくまい。
粉々にしてやるっ!

バキッゴキャッメリメリナリッ

びくっ!びくっ!と勇者の身体が痙攣し始めた。
もう一息だな。
さらに力を込めようとしたその時

ーーーーーッコ・・・・ッ・・コッコッコ

こちらに何かが走ってくる音がする。
なんだ?

ダッダッダッダッズザァァーーーッ

そこに現れたのは容姿端正な1人の青年勇者だった。
手には剣と盾。
また、ドラゴン耐性として炎に強い防具を身につけていた。
視線がぶつかる。
私を見つめる鋭い目。
その時
私の中で例えようもない衝動が湧き起こる。
な、何だこの感じは?!
彼が・・
どうしても彼が

欲しい。

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俺はその場の光景に一瞬戸惑った。
そこにはいかにも屈強そうな男をベアバッグしている女がいたのだ。
しかしその女の手足には緑色をした大きく鋭い爪。背からは緑色の翼。
そしてこの威圧感。
この姿はまさしく
ドラゴン。
彼女と視線がぶつかる。
彼女の鋭い目が俺を射抜き、その絹のような長い髪が俺を魅了する。
美しい。
彼女が普通の女性であればどんな
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