うーん……どうしたものか……
とある親魔物国家からやってきたこの男は、無数にある煌びやかで妖艶な店の前で頭を悩ませていた。
ここは歌声響く水の都、コートアルフの一角である色欲の街デ・リューア。
その娼館街にて男はどの店に入るか悩んでいた。
なにせ、入ったからには一生を共にする相手と出会うことになるのだから。
つい最近結婚した幼馴染の嫁が魔物だったために、この男は目の前でイチャついているのを見せつけられ、たまらず長期の休みを取ってこの島へ魔物との出会いを求めてやってきたというわけだ。
サキュバス……獣人……マーメイドも居るのか……やべぇぞ、全然決まらねぇ……
しかし、勢いに任せるままここまで来たもののいざどの店に入るかという段階になって、男は今後の人生を左右する選択を前に尻込みしてしまったのだ。
もちろんここまで来て何もせずに引き下がる選択肢はとうにない。男としても、あんな美人とセックスできるチャンスを手放したくなかった。
「そこのにーちゃん、なに突っ立ってんだ?」
頭を抱え悩みに悩んでいた男の背に突然声がかけられる。
背後を見ると、そこに居たのはパーカーのポケットに両手を突っ込み、フードを被った少女だった。
何故ここにこんな娘が、と思ったがその背にある羽と尻尾を見て人ではないことに気づいた。
「その……どの店に入るか迷ってな……」
彼女はチラリと男の後ろにある店を見ると
「テキトーに決めればいいんじゃねーの?ヤることヤって気持ちよくなる店なんだし、別にそんな考え込まねーでも」
「いや、ここの魔物と夜を過ごすとなると一回だけで終わりとはならないだろ?そうなるとそうホイホイ決めれないと思って、考えこんじまって……」
「ふーん、こんな島に来た割りにはその辺細かく気にすんだな」
「うぐっ!」
確かにさぁ……出会いを求めるとか綺麗な事言ってるくせに、一番ヤりたい放題出来そうなエロい島を選んでる自覚はあったけどさぁ……
自分でも気にしていたことを言われ、がっくりと膝をつく男。
そんな男の姿を面白がったのか、彼女は二ヒヒと笑いながら一歩男に近づき、男の顔を見ながらある提案をしてきた。
「なあにーちゃん、良かったらアタシがこの街を案内してやろうか?」
「案内……?」
「ああ、街を回ってちょっと頭冷やしゃあ考えもまとまるんじゃねぇかな。それに、わざわざコートアルフまで来て娼館だけ行って帰るんじゃもったいないだろ?だからアタシが案内してやるよ」
「いいのか?ガイドさんは別に居るんだろう?」
まぁ魔物とはいえ女性と一緒にこんなところに来る勇気がなくてガイドを着けなかったんけど……
「ああ、アタシも暇だったし、アタシの散歩のついででにーちゃんも来ねーか?」
なるほど……確かに、せっかく旅行地に来たんだから出来る限り楽しまなきゃ損だもんな
「じゃあお願いしていいか?」
男がそう言うと、少女は両手を握りしめ飛びあがった。
「よっしゃ!じゃあ早速行こうぜにーちゃん!」
彼女は尻尾を手招きするように振ると、早足で街の奥へと向かおうとする。
「ちょっと待ってくれ!キミはなんて名前なんだ?」
男の声に、彼女はその場でくるりと振り返ると
「アタシ?アタシはスピサだ、よろしくな♪」
そう言って彼女は男に手を差し出しながら、ニッコリと笑った。
―――――――――――――――――――――――――――――
「そういや、スピサはここに住んでるのか?」
「まーそうだな、知り合いがここに住んでてな、一か月前くらいから一緒に住ませてもらってる」
二人は「まずは中心街に行こーぜ」という彼女の案の元、この島の深部へと歩みを進めていた。
「なるほど、だから詳しいんだな」
「アタシ……というかパイロゥってホントは火山とかある場所に住んでんだぜ。だから初めてここに来たときは周りが水だらけでなかなか慣れなかったなぁ」
「へぇ〜、なんでわざわざ故郷を離れてコートアルフに来たんだ?」
「そりゃあ出会いを求めてさ!イイ男を探してるってその人に言ったら、ここに誘われたのさ」
「ほ〜ん」
そんな他愛のない会話をしながら歩いていると、徐々に道幅が広くなり、人や魔物の数も一気に増え始める。
左右には店が立ち並び、卑猥な衣服を纏った呼び子が一人で歩く男を自身の店に連れ込んでいる。
その騒がしさはまさしく大通りの雰囲気だった。
「ここは?」
「快楽通り、デ・リューアの名物の一つだ」
水路の横にある道を彼女と並んで歩きながら男は周りを見回していた。
さっきの場所とは異なる娼館に飲食店、怪しげな店にストリップバーまである。
そして、何よりも男の目を引いたのは
「すげぇな、どうやってるんだ……」
水路の周りにある棒に艶めかしく
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