「娼館かぁ…」
朝刊に書かれていたニュースの一つ、町に魔物娘の娼館がオープンしたという物を読んで私はふと呟いていた。
これといって行く予定はない。魔物娘の運営するああいった店は大抵婿探し用の物で、そして多くの場合未婚の男性を誘い込むための場なので、すでに相手の居る私にはあまり関係のない話だった。
もちろんハーレム願望のある男性なら、嫁が居ても行く可能性はある。私もハーレムへの憧れは確かにあるが、さすがにホルムさんの前でそんなことを堂々と言う勇気はなかった。
とはいえ、ハーレムにもああいった店に興味があるのも事実、そんな矛盾した思いが言葉として出ていた。
しかし、誰に向けて言ったでもないその言葉を全く聞き逃していない者がすぐそこにいた。
「興味があるのですか?」
コーヒーの入ったカップを机に置き、ホルムさんはいつも通りの無表情で私の目をじっと見てきた。
「あえっ!?いやっ!全くです!一切ありません!ハイ!」
怒らせたと思って私は焦って言い訳をする、しかし返ってきた言葉は意外なものだった。
「構いませんよ、ハーレムの形成に関しては私は積極的に行うべきと思っています。相手が増えれば貴方はインキュバスとしてさらに強力な存在になりますし、使える魔力の総量も増えますからね、快楽の追求の上でハーレムは決して外せないでしょう」
なんでホルムさんは私の心を読めるんだろう……それだけ自分を理解してもらえている嬉しさと、理解されすぎてることに若干の恐怖を感じ、僅かに顔をにやけさせながらも背筋はピンとなっていた。
そんな私を見てホルムさんは少し微笑むと、しかし、と前置きをして話を続けた。
「まだ私は、ハーレムについての淫魔法をほとんど習得していません。ハーレムを作ること自体は賛成ですが、可能ならば私の魔法の準備が整ってからの方がありがたいです。その方が貴方もより気持ちよくなれるでしょうし」
そう説明されれば文句などあるはずもない。私は未来のハーレムに胸を期待で膨らませながら、自分のコップに入っているホルミルクを飲み込んだ。
しかし娼館そのものに対する憧れは消え切っていなかった。聞いた話ではバニーガールが店の中に居て、中央ではビキニを着た魔物娘がポールダンスをしているらしい。正直見てみたい!しかしさっきああ言った手前行くわけにも……
そう悶々としているとホルムさんが話しかけてきた
「ところで、一週間ほど掛かると思うのですけど構いませんか?」
……一週間?何のことか聞いてみるとその答えは想像もしていなかったものだった。
「私が言ったのは、まだハーレムの形成には早いということです。貴方がああいった店に興味があるのは分かっていますし、もちろん私はその欲望を叶えて上げたいです。しかし、店自体に行くとそこで新しい伴侶が出来てしまう可能性がありますから、ですので……」
この時、私は最近忘れていたことを思い出した。
「私が、私達だけの、ちょっとした娼館を作ります。そこで楽しむというのはいかがでしょうか?」
ホルムさんが行動力の怪物だということを。
「ではいきましょう」
いつも通りのお出かけ用のローブに着替えたホルムさんと腕を組んで私達は街へ向かった。
この一週間、ホルムさんは例の計画のためにいろいろと準備をしていたようだったが、はっきり言って何をしていたのかは分からなかったりする。
自室で何かしらの設計図を書いてたり、なにか刻印を刻んでいたようではあったが詳細までは分からなかった。
今日の私に伝えられたことは、そのお店は街の空いていた部屋の一室を改造して作ったということ、そしてふと気づいた、なぜかホルムさんがローブをいつもよりしっかり着ているということに。そう、まるでその内側を隠すかのように。
いったいどんなものなんだろう、歩いている間、私はワクワクが止まらなかった。
そんな私に、ホルムさんが声を掛けてきた
「もう興奮していますね?それほど期待してくれて、私も嬉しいです。貴方の想像以上の物を用意できたと思うので、ぜひ楽しんでくださいね」
そんなことを言われ、もう私の頭は期待で一杯になっていた。
「ここです」
着いたのは老朽化していた建物の2階だった。どうやら数日後には一度取り壊して新しい建物にするらしく格安で借りれたらしい。
快楽のためであればその辺の調査や金銭管理なんかも完璧なあたり、さすがとしか言いようが無かった。
ドアの前に立つと、ホルムさんは私と組んでいた腕を離し、後ろに立った
「その扉は貴方自身で開けてください。その瞬間から、貴方はお客様です」
なるほど……その辺の設定も完璧なわけか、ならば今日は全力で客として楽しもう!
そう意気込み、私は勢いよく扉を開けた。
「これは……!」
視界に入ってき
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