ここは魔立第一高校のとある教室。
秋の夕べらしいサラサラとした風が
カーテンを揺らす。
そんな教室で
クラスメイトのキューピッド
ウィステリアさんから愛の告白を受けていた。
「あ…う…その、付き合って貰えませんか」
頬を真っ赤に染め、彼女は告げる。
桃色の羽を恥ずかしそうに
はたはたと動かしながら、
愛おしそうに僕を見つめる。
「その、ごめんなさい…」
罪悪感に蝕まれながら一言だけ返す。
一直線に僕を見つめる彼女とは対照的に、
彼女をしっかり見ることが叶わない。
「え…その…ダメでしょうか?
あ、えっと…その…なんで…」
「その…きっと僕といてもつまらないし…
お互いのためにいいと思うんだ。
ごめんなさい…」
一瞬で彼女の顔は真っ青に染まり
呼吸が不規則になった。
こちらからも動揺が見て取れる。
良心の呵責とでも言うべきだろうか
胃の底が急激に冷えていく感じがした。
でも、今の僕にでは彼女を幸せにできるはずがない。
ここで断るのが、最善の選択だ…
「え…そんな…
私のどこがダメですか?
だ、ダメなところは直します。だから…」
ダメ…そんなところあるはずがない。
品行方正、端正な顔立ち、
欠点らしい、欠点は見つからない。
そんな彼女の告白を無下にすることなど
どんなに罰当たりか。
ダメなのはむしろ僕だ。
「本当にごめんなさい…
僕なんかよりいい人を探してください。」
そう言うと脇目も振らず教室から出ていく。
背後からは彼女の嗚咽が聞こえてきた。
背中にチクリと痛みが走る。
帰宅後もウィステリアさんの
鳴き声が耳から離れることはなく、
食事が喉を通らなかった。
ならば、早く寝ようと目を閉じても
あの時の今にも泣き出しそうな絶望に満ちた顔が浮かんでくる。
自分は、ウィステリアさんの好意を
無駄にしてしまった。
自信のなさを理由にして
他者からの愛に向き合おうとしなかった。
今更ながらに後悔や罪悪感が押し寄せてきた。
「きちんと謝罪しよう…」
そう心に決めて、
悶々と夜が過ぎるのを待った。
その後、学校にて…
「あ、ウィステリアさん…」
「ああ…おはようございます…
今、忙しいのでまた後でいいですか?」
「すみません、ウィステリアさん…」
「なんです?昼食を頂きたいのですが…」
「あ、あの…」
「すみません。本日は忙しそうなので…」
完全に避けられている。
5日間、声をかけ続けたが全てダメ。
避けられ続ける日々を過ごす中で
自分の情けなさと比例するように
ぽっかりと穴が空いたような喪失感が
日に日に大きくなっていく。
そんな気持ちを紛らわすように、
夜になると1人寂しく自分を慰め続けた。
まるで極寒の地で熱を探し求めるように
一心不乱に…
だが、一向に気持ちは紛れず
むしろ寂しさと虚しだけが残り続けた。
そんなある日、ウィステリアさんの机に
ハンカチが置いてあった。
無意識にそれを手に取った…
ふわりと香る花の香りに鼻腔をくすぐられ
情欲を煽られる。
こんなこと絶対にいけない…
他人の私物に手を出すなど…
背徳感とウィステリアさんへの思いが
鼓動を早くする。
結局それを机へと戻すことはなく、
辺りを見回したあと自分のカバンに入れた。
帰宅後、すぐにカバンからハンカチを取り出すと、鼻に押し当てて慰めを開始する…
「ぅぅ…
#9825;ウィステリアさん…」
彼女が見たら、幻滅するだろうか…
だが、喪失感を埋めるにはこうするしか…
その日はそのまま泥沼に浸かるように
劣情に身を任せて自分を慰めた。
次の日、
「時間が作れず申し訳ありませんでした。
本日なら、暇なのですが…
ゆっくりお話をしたいので
教会にいらっしゃいませんか?」
「は…はい…」
虚しさも、彼女への思いも限界に高まっている状況で誘いを断れるはずもなく、彼女へ大人しくついて行くことしか出来なかった。
教会へ着くと、そのままウィステリアさんの自室へと招かれる。
「ふぅ…
#9825;ほら、座りましょっか…
#9825;」
言われるがまま、ベッドに腰掛けると
腰に手を回され、さわさわと尻を揉まれる。
表情はいつも通り清楚なまま
彼女はドロドロとした情欲を含んだ手つきで
「逃げるなよ?」と脅すように
念入りに揉み続ける。
快楽で悶え始め、抵抗出来なくなった頃、
彼女はゆっくりと口を開いた。
「私の愛を無下にしてから約1週間…どうでした?」
「す、すみませんでした…
言い訳して、逃げて…
愛を無駄にしてしまって…
人間の分際で天使様の告白断って…
本当にごめんなさい…すみませんでした…」
神の前で懺悔するように
自分の反省を情けなく彼女に詫びる。
必死に必死に、許して貰えるように縋った。
彼女は、満足気
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