契約交際を終わらせようとしても…

雪が溶け出す冬の終わり。
僕はサキュバスのお姉さんをカフェへ呼び出した。

お姉さんの名前はメリッサ。
長い黒髪と白い肌、目元の涙ぼくろが
特徴的でサキュバスらしい扇情的な
身体つきをしている。
いつも笑顔で優しく接してくれる。


僕は単刀直入に一言言う。

「もうこんな関係終わりにしましょう…」

「どういうことかな…?
お姉さんと正式にお付き合いする気になった…?」

言い出すのに少しためらう。
息を深く吸い、告げる。

「別れましょう…」と

顔はいつもの笑顔のまま。
だが、少し動揺したように見えた。


「お姉さんに不満かな…?
顔?身体?性格…?お金が足りないかな…?」

「不満はないです…
ただ、こんな関係を続けていれば
お姉さんに迷惑というか…」

僕らは所謂、契約交際の関係を続けている。
指定の日にデートを行う。
加えて、体の関係も持っている。

だが、あくまで契約交際。
お姉さんはわざわざお金を払ってまで
この交際を続けている。
魔物娘の友人にバカにされるのが嫌だからと聞かされている。

「お姉さんならわざわざ僕なんかと
契約交際しなくても
もっといい人ができますよ…」

「そう…意思は固いの…?」

「はい…」

少しの沈黙も、すごく長く感じる。

「そっか…周りの人が気になるから
とりあえず場所移してもいいかな…?」

僕らはカフェを後にした。
お姉さんはスっと手を出し、握りしめる。
しばらく歩くと、お姉さんが口を開いた。

「魔物婚姻契約法って知ってる?」

「いえ…詳しくは…」

最近できた法律だった気がする。
人間と魔物に友好をもたらす法律だとか…

「ざっくり説明すると
一方的な婚姻契約の締結、破棄をできなくする法律よ…
表向きは婚姻契約の正常化を目指す
法律なの…」

「な…なるほど」

少し、お姉さんの手の握りが
強くなっただろうか…

「でもね、少しでも性行為の証拠があれば
婚姻契約は簡単に認められる。
だから、結局意味なんてないの…」

握る力はさらに強く。
変な冷や汗をかいてきた…
背筋に水をかけられたかのような寒さが伝わる。

「魔物娘って意外と貞操観念は
しっかりしてるの…
サキュバスにとっても双方同意の性行為は
婚姻に同意したとみなされる。
その証拠を見せれば婚姻契約は完成。
証拠は…そうね…
#9825;例えば、」

歩みが止まり、グイッと肩を寄せられる。
そのまま、お姉さんは囁く。

「ハメ撮りとかね…
#9825;」

悪い予感が今確信へと変わった。
お姉さんの口角が淫靡に上がる。

「覚えてるかな…
#9825;
初めてやったあの日のも、
甘々な甘やかしプレイしたあの日のも…
#9825;」

わざとらしくスマホを取り出し
これ見よがしに振る。
淫靡な笑みと甘い声。
普段のお姉さんと同じはずなのに…
こうも印象が変わるものなのか…

「さて、今日は疲れたしここで休もっか…
#9825;
お姉さんの家…
#9825;いや、これからはあなたの家でもあるね…
#9825;」

先程まではラブラブな恋人のように
繋がれていた手を
ねっとりと僕の腰に回して家へと誘導する。

「入って…
#9825;」

今まで見たこともないくらいに
鼻息を荒くして、腰に添えた手を
さわさわと動かす。

「ん…くっ…
#9825;」

今日の様子から考えて、タダでは返してくれない。そんな恐怖から体をよじり抵抗を図る。

お姉さんはそんな抵抗など意に介さない。
片手で体を拘束したまま、器用に扉を開けて部屋へと入る。

「んー、抵抗するフリなんかしちゃって…
#9825;
今日は背徳シチュをご所望?
お姉さんはあんまり好きじゃないんだけど…
下品な感じになっちゃうからさぁ…
#9825;」

ボヤいているがノリノリで、
僕のカバンの中から学生証を抜き取り、
スマホのカメラを起動する。

「はーい…
#9825;こんにちは…
#9825;
今日食べちゃう子はぁ…
#9825;
〇〇大学△△学部の××君でーす…
#9825;
ほらピースしてね
#12316;
#9825;」

ベッドの縁に座らせられると
学生証の情報を読まれ、紹介が始まった。

「お姉さんは超絶ラブで今すぐに
食べちゃいたい気分。
でもぉ…
#9825;××君は食べられるの嫌みたい…
なので、土下座してハメてくださいって
懇願するまで寸止めしまーす…
#9825;
がんばろーねぇ…
#9825;」


「じゃあ、まずはキスからだよ」

「んむぅ…!?」

そう言うとお姉さんはいきなり、奥まで舌を突っ込み捕食者気分で口内を蹂躙する。

「あっ、あぅ…あっあくぅ…
#9825;」


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