夢。
それはまるで現実の様な世界。
でもそれは別の世界であり、この世界でもある。
…。
いや、俺は悟りを開いた訳じゃない。
この小説を書くことになったきっかけが俺が見た夢。
その夢は普通の夢ではなかった。幼稚園の頃からずっと見てきた夢である。
*
ここはどこだろうか。
辺りを見回すと、ブランコ、砂場、幼稚園が目に写る。
その中に一際目立つ物がある。
それは茂み。ただの茂みである。
俺は好奇心からか、すぐに潜り込んだ。
潜り込んだ先に見えるのは、抜け道の様な穴。幼稚園生がギリギリ入る位の穴が空いていた。
俺は電車の踏切の前に出た。
その踏切の中に俺と同じ位の少女がポツン、と立っていた。
黒髪で肌は真っ白。小柄な姿に肌着の様な黒いワンピース。
下は履いてなく、ワンピースで大切は所は隠されている。
靴はなく素足、少女の足は汚れていた。
俺は「危ないよ!」と、声を掛け腕を引っ張る。
しかし少女は全く動かず、逆に俺が引っ張られてしまう。
そして少女は俺の目を見て話す。
…話してくれたんだ、確か…。
…ダメだ、思い出せない…。
ああっ。待ってくれ、もう一度言ってくれ。
待ってくれ、君は何者なんだ。なぜ俺の前に現れたのか。
まだ聞きたい事があるんだ、だから行かないでくれ…。
待って…く…れ…。
目が覚める、見慣れた天井。
また俺は続きを見れずに、一日を始めてしまったのか。
*
「よぉ!」
「おぉ、うっす。」
朝からうるさいと思ったら、友達の中田だった。
「どうしたんだよ、テンション低いねぇ…」
「おめぇが高すぎんだよ。」
また下らない話が続いたが通学路の道がやけに短く思えた。
「ふぅーっ、やっと着いたな。」
「ただの運動不足じゃねぇの?」
「ひでぇなぁ、ほんじゃまた後で!」
下駄箱で別れを告げ、上靴に手を掛けた。
取り出す気にならない、俺の体がそう言い出す。
兎に角、俺は外に出る。この気が軽くなるかも知れないので。
だが、予想は外れて更に気が強くなる。
勝手に足が進む。なんだよ、どこに行く気だよ。
…この方向はグラウンド?なぜ今行くのか?
足の力が弱って、ついには止まった。
そこはグラウンドの隅の茂み。何一つ変わらない茂み。
だがどこか懐かしく、まるで初めてでは無いような気持ちが溢れた。
まさか。その気持ちが押さえられず、鞄を投げ捨て、その茂みの中を見渡す。
やっぱり同じだ、本当ならばあり得ない事だ。
だが潜り込まない訳にはいかず、ほふく前進の様に、地面を這って進んだ。
*
茂みの中は少し狭く、進むのに手間取ってしまう。
やっとの思いで狭い茂みを抜ける。
そして、茂みを抜けた先の景色は目を疑わせた。
「お前は…」
まさかとは思ったが、あり得ない事が起きた。
夢の中の少女が立っていた。
しかも、夢と同じように踏切の中で。
「お久しぶりですね。」
夢ならば覚めるな、現実ならば続きを見せてくれ。
俺は夢で無いことを願いつつ話しかけた。
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