「姉さん、お願いだからその格好何とかしてくれよ」
「んん〜。どうしたんだ、突然」
ソファに寝転んでテレビを見ながら、ぐでーんと伸びきった姉さん。下着から飛び出た黒い尻尾はだらりと垂れ、長い髪は造作もなくボサボサになっている。獣人特有の大きなモフモフの手で、器用にリモコンを操る姿はまるで人間のよう。これがヘルハウンド……魔界の猟犬と恐れられる、凶暴な種族の一人なのだからおかしなものだ。
「いや、その……大学生にもなって、いつもこんなだらしない格好ばっかりしてるのはどうかなって」
「ふん、だらしないとか。せっかくアパート借りて二人きりなんだし、別にいいだろ」
「よくないって! もう社会人なんだし、こういうところもしっかりしたほうが――したほうが、いいと思う」
姉さんは上半身を起こし、そのままソファの上であぐらを掻いた。こちらに訝しげな視線を向けてきた瞬間、思わず恥ずかしくなり目を背けてしまう。そのエッチすぎる格好に昼間から前のめりになりそうなのを、目を合わせればすぐ悟られそうで……。
よれよれの白いTシャツ一枚に、ノーブラという恥ずかしい服装。ずっしりしたおっぱいの形が、どたぷんっ、とシャツの裏から重量感を訴えてくる。大きすぎる胸に引き伸ばされてすっかり緩んだ襟首は、堂々と魅惑の谷間を強調するし、下はといえばぴっちりした水色の縞パンだけ。引き締まった木炭色の体躯とは対照的な、ちょっとした女の子らしさがにじみ出てつい意識してしまう。
俺より数年は年上で、いち早く大学に行きはじめたしっかり者だというのに、姉さんはいまだにこんな格好で家をうろついているのだ。
「そんなに気にしてるなら、手伝ってくれてもいいんだぞ」
姉さんはソファからぐっと身を乗り出し、ほぼ四つん這いの姿勢になると、無造作に床に投げ捨てられていたリュックを漁りだす。ガサゴソとかばんを掻きまわすたびに、重力に引っ張られるまま扇情的に弾むおっぱい。男の性か、気にしないと決意しようとチラチラと視線が吸い込まれてしまう。しばらくして姉さんは目当ての品を見つけると、勝ち誇った顔で戦利品をぽいっと投げつけてきた。その正体を確認する暇も無く、俺は小さくて軽い何かをパッと空中から掴み取る。
「じゃじゃーん。ほら、座れ」
「姉さん、これって」
意味がわからず、唖然としたまま姉さんに聞き返す。手の中にあるのは、使い込まれたピンク色の折り畳みクシ。姉さんは隣のソファをボフボフ叩き、再び俺に座るよう催促した。
「だらしない格好が嫌なんだろ? 面倒くさいから髪を解いてくれよ。なあ、座れってば」
「えっ、あの、服装のほうが問題と言うか」
「……へ?」
待て俺。だらしないのがどうのって言っただけで、別に目の行き場がなくて困ってるとか言った覚えはないだろ! とっ、とにかく、こんな真っ昼間から姉さんを意識してるなんてバレたら、いじられるくらいじゃ済まない。というか、それこそ夜まで絞られるような気がする。さっきまで文句を言ってた分ここで退くこともできず、言われるままに彼女の横に座り込んだ。
……うぅ、近い。すぐ隣にあるむちむちの肉体から意識を逸らそうと、姉さんの髪に櫛をつきいれる。が、突如激しい抵抗感に手を止められた。ボサボサした髪が櫛の歯をがっちりと咥え込んでいる。なるほど、これは面倒くさい。
「なんでこんなになるまでほったらかしにしたんだ……」
「うぅ、髪が長いと手入れが大変なんだって」
「……はいはい、わかったわかった。じゃあ髪を綺麗にしてあげるから、服装もなんとかしような」
「お、おお、着替えも手伝ってくれるのか? おまえも積極的になったじゃないか、ふふふ」
「そ、そういう冗談はよせって。からかうつもりなら髪を解いてあげないからな?」
「ははっ。なんで遠慮するんだ、アタシの裸なんて毎晩見てるのに。それとも、見たくないのか? 手伝ったお礼におっぱい揉ませてあげるかもよー?」
胸をよせあげて強調し、チョロいとでも言いたそうにフッと口元に笑いを浮かべる姉さん。一瞬、心が揺れそうになったのがよけいにムカついた。
……な、何か言い返したい。言い返さなきゃそのまま負けを認めているようなものだ。でもどうせからかわれるだけだろうし、俺は心の中で負けを認めて言われたとおりに髪を梳くことにした。比較的櫛が通りやすい髪の先端から、少しづつ上のほうまで解きほぐしていく。姉さんには何をしてもじっとあぐらを掻いたまままるで痛がらない。しかし引っかかるたびに自分の精神安定上よくないので、ゆっくりと丁寧に梳いていく。髪の量が多くて最初こそ進んでる気がしなかったが、時間が経つにつれふんわりとした触り心地が戻ってきた。
「んぅ…… お前に梳いてもらうとキモチいいな……」
真っ黒な
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