ーーオークション会場の屋敷・1階101号室ーー
ショタ・オークションでは、落札者にはサービスとして屋敷内の一室、通称“味見部屋”が貸し出される。利用するかは自由であるが、使わない者はまずいない。
何故なら落札者である魔物娘達がやることはただ一つ。それは商品である少年、いや“夫”となった男の体を一刻でも早く味わうことであるからだ。
「「………………」」
ファーストコークス少年を破格の1500万ゴールドで落札したホルスタウロスの少女、カナ・マロンフルール。この二人もまた、与えられた一室にて早速二人きりの時間を過ごしていた。
「うふふ。緊張してるの?」
「う、うん……」
少女に話しかけられ、ぎこちなく返事した外ハネ赤茶髪の少年。照れ笑いを浮かべ、顔が赤いが、無理もないことだ。
綺麗な長い黒髪をサイドテールにした目の前の少女。優しそうだが彼よりもちょっと大人びいて、今まで見てきた女性の中でとびっきりに美しく、そして何より胸部がとても豊満であった。
「………」
「うふっ♪」
少年がチラチラとそのとても大きな胸を見やるが、ホルスタウロスは怒るどころか、嬉しそうに笑みを浮かべ、両耳と長い尻尾をピコピコと動かす。
「ね」
「わっ!?」
ベッドに座っていた少年の隣に座るカナ。
「私、貴方のこともっと知りたいの」
「ぼ、ボクのこと……?」
「そ♪」
少女はにっこり微笑む。
「私達はもう夫婦なんだよ?」
「え……ええぇっ!?」
けれども、事態を呑み込めない少年は素っ頓狂な声を上げる。
「ぼ、ボク達まだお互いの名前さえ知らないんだよっ!? キミが誰だって分からないのに!!」
「貴方はファーストコークスくん。私はホルスタウロスのカナ・マロンフルール。
ね、これで知らない人同士じゃなくなったでしょ?」
「あ…」
笑顔でそう言い切られ、少年は言い返せず黙るしかなかった。
「お互いの名前は分かったね。でも、まだまだ知りたいことはいっぱい。だからもっとお話しましょ?」
「う、うん…」
一対の角と長い尻尾、白黒の斑の体毛で覆われた毛深い下半身に両足の蹄。このように少女の容姿は人ではないが、彼を虐待したあのロン毛の男と違い、不思議と信頼に足る存在である気がした。美しいが同時に人懐っこそうなホルスタウロスの見た目は、少年の傷ついた心にも警戒を抱かせなかったのだ。
その後、二人は寄り添いながらお互いの身の上を話し合った。
ファーストコークス少年は炭鉱夫の家の生まれであり、暮らしは貧しい上、両親も既に他界してしまったこと。
他に頼りになる親戚はおらず、他の炭鉱夫達と共にただ黙々と毎日朝から夕方まで働くも、最近はそんな生活に疲れつつあり、段々嫌気が差しつつあったこと。
そして、ある時その貧しく辛い暮らしを奴隷商人達による誘拐によってさらに悪いものへとさせられかけたこと。
一方、カナは牧場に生まれ、やり手の父親の手腕により牧場の経営が軌道に乗り、何不自由なく生活を送ってきたこと。
それだけでなく両親から愛情を受け、友人にも恵まれたが、“夫”だけは今まで見つけることは出来なかったこと。
だが、この度ファーストコークス少年を見つけるにあたり、運命の人だと直感し、高額で落札したことを告げた。
「大変だったのねぇ……」
目を閉じ、しみじみと少年の生涯に想いを馳せるホルスタウロス。
「カナちゃんと違って、ボクは……独りぼっちだった」
「寂しかった?」
「うん」
カナの問いに少々憂いを帯びた笑みを浮かべ、少年は頷く。
「でも、やめたくてもやめられなかった。だって、そういう生き方しか知らなかったから」
「………………」
美しくも神妙な顔で少年の話に耳を傾けるカナ。金銭にも衣食住にも不自由せず、優しく温かい家族に囲まれて育ったカナとはあまりにも対照的な暮らしだった。
「あっ……」
そんな少年の肩にホルスタウロスは微笑みを浮かべて寄りかかる。
「寂しくないよ」
「えっ?」
「貴方は独りぼっちじゃない。だって私がいるもの。ね?」
「………………うぅ」
思いも寄らない言葉だが、それが少年の傷ついた心に届き、彼は涙を流した。くしゃくしゃに顔を歪めて泣く彼を、少女は無言で抱き締めたのだった。
「落ち着いた?」
「……うん」
ひとしきり泣いた後、今度は少年の方が少女の肩にもたれかかっていた。
(良かった
#9829;)
泣いてすっきりしたのか、少年は朗らかに笑った。それがホルスタウロスはたまらなく嬉しくーー
(……可愛い
#9829;
#9829;)
そして魔物娘の本能が疼いた。
(!?)
朗らかに笑っていた少年だが、少女が急に胸を押し付けてきたため驚く。
「ちょ
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