ーーとある屋敷・控室ーー
屋敷に迎えられた子ども達は疲れを癒やすべく、ふかふかのベッドで熟睡した。その後朝8時頃に起こされ、大抵の者にとって初めての豪勢な朝食を振る舞われた後、大浴場にて入浴し、身を清めた。
「何するんだろうね?」
「さあ?」
そしてあの忌々しい男色家の奴隷商人に剥ぎ取られた粗末な衣服に代わり、新しい服を与えられた少年達は屋敷の控室に集められていた。
もうすぐ正午になる。控室にいた少年達は知らなかったが、ぞくぞくと“客”が集まりつつあった。
「もう一回さっきのローストビーフが食べたいなあ」
「ハハハ! デン君お腹すくの早すぎでしょ!」
あの奴隷商人どもと違い、魔王軍は少年達をかなり丁重に扱っていた。朝食においては“精がつくように”わざわざ牛や豚、羊などの肉類を、これまた精力増進に効果大なハーブ類で味付けした料理が振る舞われた。彼等は貧しい農家の子や浮浪児などが大半であり、肉類は滅多に口に出来ないため、現実離れした光景に放心した子さえいたほどである。
当然、皆がっついて食いまくり、育ち盛りなのもあって用意されていた肉もパンもスープもデザートも食い尽くしてしまった。そんな美味い食事に加え、風呂と服まで用意してもらえたのだから、まさに至れり尽くせり。あの地獄から一転、皆幸せを感じている。
(はぁ。ノンキでイイよな、こいつら……)
皆、幼い子どもばかり。一応精通こそしているが、恋愛も、どうやって生き物は子どもを作るのかさえ知らない。
しかし、そんな幼い子ども達の中で1人、妙にませた、あるいは擦れているというべき少年がいた。
(魔物が善意で行動するわけねーだろ。こんなに良くしてくれるのはあくまでオレ達を扱い易くするために決まってんだろうが)
「おっ、ヒナじゃ〜ん」
「ランか」
“開始”までまだしばらくあったため、屋敷の庭に出て時間を潰していたヒナ一行。そこへ別働隊を率いていたハイオークのラン・ドレースがやって来た。
「そっちの方が早かったみたいだな」
「手こずったのか?」
「まさか」
ランは頭を振る。
「変態野郎ども相手に苦労なんざしないよ。それより一人イキの良いガキンチョがいてねぇ、そいつが抵抗するもんだから時間がかかったのさ」
「あぁ、たまにいるな。我々を人食いと勘違いする者が」
「ガキンチョ相手に手荒な真似はしたくないよ。そんなことすりゃますます勘違いされるからねぇ」
「違いない」
相槌を打ったヒナは笑う。
「なんか嬉しそうだねぇ。良さそうな子がいたのかい?」
「ああ」
「! そりゃおめでたいねぇ! 良かったじゃないか!」
同僚がようやく番を見つけられたことを喜び、ランはヒナの腰をバシバシ叩いた。
「お前さんはどうだい」
「残念ながらアタイは収穫ナシさね。さっき言った小僧も好みじゃないしねぇ」
「気が強い子を探していたじゃないか?」
「確かにあのガキンチョは気が強いけど、それ以上に悪ガキすぎて話にならないさね」
ハイオークはうんざりした様子でため息をつく。
ヒナが奴隷商人チキンレッグ・カルパスを成敗したのと同刻、ランの一隊は悪名高き奴隷商人プレーンズ・ダイビングビートルのアジトに侵入していた。
「おらぁー!」
「グワッ(ウルトラマン風)」
魔物娘達は向かうところ敵なしであり、奴隷商人達を薙ぎ倒していく。
「ここがボスの部屋か……」
そうして、組織のボスであるプレーンズの部屋に辿り着いたがーー
「クソッ、開かねぇ! アタイでも開けられないとは、なんて硬い扉さね!」
ハイオークは魔界銀製の両刃のバトルアックスを何度も叩きつけるも、扉は分厚い特殊合金製で通じない。さらに部屋も頑丈に作られている上防音仕様になっており、中の様子も全く分からなかった。
「お前には正義の鉄槌でその腐った心を矯正してやる。こっちへ来い!」
黒い作務衣に、怪しいマスクを付けた男。この男こそ人身売買組織の長にして、商品である少年をつまみ食いするのを趣味とする男色家(ガチホモ)ーーその名をプレーンズ・ダイビングビートルといった。
「縛られてるんだから動けるわけねーだろバカ!!」
そんな変態野郎に抵抗する、全裸の上に縄で亀甲縛りにされた少年。彼は今日の栄えある生贄(オモチャ)に選ばれたのだが、当然受け容れるはずもない。
「この野郎! 私に対して失礼な態度!!」
もっともらしいことを言って怒るプレーンズだが、この場合悪いのは少年を攫って縛る彼の方である。
「けしからん、私が喝を、入れてやる」
チキンレッグと同じく台詞をたどたどしく言う奴隷商人。
「正義執行!」
プレーンズは少年の口にゴムパッチンを噛ませ、それを
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録