『さっさと終わらせるとするか』
自身の復活に対する隠された真実ーー縁もゆかりも無いはずの、目の前の巨大な怪物との関係。それらを告げた魔王の言葉は胡散臭いものであったにもかかわらず、エンペラは強く興味を惹かれた。
本国への帰還のためだけでなく、その真実を知るためにも魔王を倒そうとする。
「貴方が救世主とはいえ、私もズイブンと甘く見られたものね」
「………………」
エンペラの放言に目を細め、くすりと笑う魔王。同時に、背後の巨大な怪物が左右の鎌を合わせて研ぎ、火花を散らせる。
「まぁいいわ。“義理の息子”の言葉故、大目に見ましょう」
『何だと?』
皇帝はまさに苦虫を噛み潰したという表現が一番しっくりくる、極めて不愉快そうな顔で魔王を見た。
魔王の中ではエンペラ一世は47番目の娘、ミラの夫となることが決まっているらしい。もっとも、そのミラは惚れた男に拒絶され、破壊光線を浴びせられて焼き殺されかけたばかりである。
『いつ余が貴様の息子になった!!!!』
「ミラが貴方に惚れてからよ」
ミラは皇帝を見た瞬間、一目惚れをしてしまった。如何にエンペラが拒絶し、手ひどく扱われようとも、金輪際彼以外の男を愛することはないだろう。だからこそ、彼はミラの婿とならねばならないーーミラはもう、彼なしでは生きられないのだから。
「貴方も後ろの子と同じ、私の可愛い息子になるのよ」
『化け物を嫁に貰うつもりも、姑に持つつもりもない!!!!』
魔王の言葉が余程腹に据えかねたのか、皇帝は声を荒げて拒絶する。
「もう決まったこと。覆せないわ」
淡々としているが、同時に有無を言わさぬ口調でもあった。それこそ魔王らしい、傲慢で他者の事情など一切慮るつもりなどというようなものだった。
『やはり貴様らとは相容れぬな!!!!』
解っていたことではあるが、改めてそれを再認識する。魔物と会話をしたところで理解の出来ない返答が来るだけだ。
「今はそうでも、いずれ変わるわ。魔物と人間が一つとなり融け合えばこんな醜い争いなどない、愛と情欲に満ちた素晴らしい世界がやって来るのよ……
#9829;」
神が定めた永劫不変の法則も、いずれ魔王の力が神々を上回れば変わる。彼女が恍惚の表情でその“希望的観測”を語る様に、皇帝は再び嫌悪感を覚えた。
『貴様の言う世界とやらを、何と呼ぶか知っておるか?』
「天国?」
『いいや、『地獄』だ』
魔王の狂気の野望を聞き、忌々しげに吐き捨てるエンペラ。旧時代の魔物しか知らぬ故に、皇帝には魔王の理想とする世界は絶望そのもの、この世の地獄に映った。
「残念ね。私の理想を理解していただけないとは」
頑なな態度の皇帝を見て嘆息する魔王。分かってはいたが、目の前の男の考えはやはり変わらない。
「けど、だからこそ理解のための“教育”のし甲斐はありそうね
#9829;」
しかしここで気を取り直し、魔王はねっとりとした笑みを浮かべる。
『さすがは魔物(クズ)どもの親玉らしい傲慢さと身勝手さだな。貴様の理想など所詮は狂人の戯言以下、まだ路傍の石の方が役に立とう。
そんなものをこれ以上人類に押し付けられては迷惑だ。この不浄の地と貴様の命諸共、余がこの世から消し去ってくれるわ!!』
両者はここで議論を打ち切り、再び戦闘状態となった。
『ヴォォオ! 見えたゾ、あそこダ!』
『いた! いたいた! 陛下だよー!』
『………………』
『我等が一番乗りか』
『ゲガガガガ! 御無事だァ!』
『グモモモモ………いや待て!』
『ちょっ、何よ?』
『何ダ?』
『あぁ成程、お前が言いたいのはあの女だろう? 確かに凄まじい魔力の波動を感じる』
『グムム、その通り。恐らくは奴こそが……』
『魔王か!』
『………………どうする?』
『いくら私たちでも魔王相手にはどうしようもないよ〜〜』
『ゲガガ〜! だが、ここで退いては貪婪軍の名折れだ!』
『ヴォォオォォ! そうダ! 何をシにこんな場所まで来タと思ってるんダ!』
『我等は陛下と将軍方をお救いするため、ここまで来た』
『………………おめおめ帰ったところで他の連中に手柄を盗られるだけ』
『グムグム、ここまで来たのだ。今更命を惜しんでいる場合ではない』
『そっか、決まりだね。では貪婪軍らしく………』
『『『『『『喰って喰って喰い尽くす!!!!』』』』』』
『ん?』
「あら、お客さんのようね」
「………………」
皇帝と魔王、怪物の戦いが始まるかと思いきや、ここで皇帝側に加勢が入る。
『あぁ陛下! 御無事で!』
『ほう。一番乗りは貴様等か』
魔王城上空で戦う二人と一匹の前に現れたのは、皇帝の部下と思わしき灰白色の軍服と軍帽という格好の女。
『
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