狂気の女王と堕ちた王子

「アハハハハッ! ステキよ坊やぁ
#9829; こんなに交わってるのにまだ萎えないなんてッ!!」

 逃げ場無き廃墟にて、アポピスは囚われの王子を思う存分交わり犯す。遮る物の無い夜の砂漠のど真ん中という立地故、氷点下に近いはずの気温であるが、それを感じさせぬほどに寂れた玉座には熱が籠もり、また愛液と精液の入り混じった生臭くも淫らな匂いが充満する。
 そんな中、アポピスは狂ったように腰を動かし、胴体に黒い蛇体を巻きつける。好いた少年の童貞を奪い、淫毒でそそり勃つ逸物を貪る快楽と愉しさはたまらないものらしく、女の興奮は増すばかりである。
 そんな蛇女の心情を反映するかの如く、処女を捨てたばかりにもかかわらず、魔物娘の持つ名器のほぐれきった肉襞は熟練の娼婦顔負けだった。とぐろを巻く蛇が獲物を締め付けるが如き締まりで、かつそのまま回転するかの如く動く。
 その快感はあまりにも強烈であり、童貞を捨てたばかりの少年には酷なものだった。

「あ…ぅ…」

 当然ながら、少年の意識は快楽のあまり飛びそうだった。しかし、少年の両目より伝う涙はそれが理由ではなかったのだが、快楽に酔い狂うアポピスは気づいておらず、知ったところでどうでもいい事であろう。

「あぁぁぁぁっ
#9829; またスッゴイ出たぁ……坊やの赤ちゃんできちゃうかも
#9829;」

 少年の心情など露知らず、彼を愛しつつも容赦の無い冥界の蛇の荒々しい腰使いとうねる肉襞は、今また少年を八発目の射精に導く。浅ましい黒蛇は上半身をビクビクと仰け反らせ、貪欲な肉壷は吐き出された少年の子種と生命力に満ちた精を一滴も零さずに収めていく。

「うん? お客さんのようね…」

 妊娠の可能性と快感の余韻に浸っていたところで、アポピスは廃墟の周りに近づく者の存在に気づく。

「あ〜あ、お楽しみの邪魔してくれちゃってぇ」

 お楽しみのところを邪魔され、アポピスは不愉快に思うが、そこで昼間の出来事をふと思い出す。

(「狼藉者め! 王子を放せ!」――あの犬っころはそう言ってたわねぇ)

 目障りなアヌビスを叩き伏せる直前、確かに彼女はそう叫んでいた。

「へぇ〜、貴方王子なの? 確かに普通の子とはちょっと違う雰囲気だとは思ってたけどねぇ〜」

 意識が朦朧とするトーヴに語りかけて笑うアポピスだが、彼の身分を今更知ったところで動揺はしなかった。別に彼が王子だろうが乞食だろうが、気に入った男である事には変わりはないからだ。
 元が何者であろうと、アポピスはこの少年と生涯を共にしたいと考えているし、例え身分が卑しかろうと差別しない。別に肩書や高貴な見た目で気に入ったのではないし、ただありのままのこの少年を見て、番になりたいと思っただけだ。
 もっとも、そのやり方は文字通りの誘拐であり、本人の同意を得ていないのはもちろん、親元からも無理矢理引き離してしまっているのが問題なのだが。

「…という事は、“追手”か」

 探知魔術で遺跡の周囲を探ると、明らかに百人以上の魔物娘の集団が遺跡を囲んでいるのが分かった。これほどの集団である以上、単に旅行者や隊商の一団が遺跡に近づいたのではなく、明らかに自身及びこの王子が目的だろう。

「アヌビス、スフィンクス、マミー、ギルタブリル、サンドウォーム。そして…」

 彼女の種族が本能的に敵対する種族。神話の時代の砂漠の支配者にして、冥界の蛇と対になる『太陽の王』。

「ファラオ」

 その存在を感知した途端、アポピスは臨戦態勢となり、邪悪な魔力が全身から滲み出る。その存在を憎み、毛嫌いしつつも、種族の宿敵との出会いから、蛇女は黒い目を見開き長い舌をだらりと垂らした、淫らながらも凶悪な笑みを浮かべる。

「んもぅ、坊やも人が悪い。貴方のママはファラオだったなんてねぇ」

 しかし、それとこれとは話は別。ファラオの息子だったとしても、アポピスがこの少年を嫌いになるわけではない。

「でも、だからかしら? 貴方からどこか不愉快で、それでいて懐かしい匂いがしたのは」

 アポピスの本能から、ファラオの匂いが不愉快なのは納得出来る。けれども、その匂いから何故か“懐かしさ”を感じるのも何故だろう。それはこの冥界の蛇にも分からない。
 だが、自分好みの牡の匂いと共にそれらが混じり、このアポピスを少年の下へ導いてくれたのは事実である。

「ま、今考えてもしょうがないか」

 とはいえ、今そんな事を考えても結論は出ない。遺跡の外側には百人以上の魔物娘達が集結しており、それらへの対処が先決だ。

「坊やはどうしたい?」
「………」

 しかし、淫毒と快感のあまり意識が朦朧とした少年に尋ねたところで応えるはずもない。だが返答がどうであれ、アポピスはこの少年を好いており、彼と別れるという選択肢は
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