受胎

(………………)

 どれだけ時が経ったのだろう。今のアポピスにはそれすら分からない。
 延々と繰り返される“生き地獄”の中で泣き喚き、呪詛の言葉を吐くもやがてそれらの行為にも疲れ果てたアポピスは、いつしか全ての感覚が麻痺してしまった。

(………………)

 毒々しく、禍々しく、冷酷で我儘。それでいてこの世のものとは思えぬほどに妖艶で淫らな冥界の蛇だが、今や心ここにあらず。ファラオの治める国、さらには彼女の愛する王子を奪わんとする覇気も尽きてしまった。
 そう、今の彼女は文字通り『蛇の脱け殻』である。

「ぅ………ぁ………」

 時折呻き声を上げて身じろぎするが、それ以外は無言で涎を垂らしながら、アンデッドよりも虚ろな目で虚空を見つめるのみである。
 以前は人外の美しさ、滾る肉欲、溢れる生命力の象徴のような、豊満で瑞々しく、血色良い肉体も今や過去のもの。見ていて哀れなほどに衰弱しきっている。

「ぅ………………」

 このように美貌は色褪せ、身はやつれ、心もへし折れかけた彼女。だがそれでも、彼女の肉体はまだ死を望まなかった。
 何故だかは分からない。しかし、何故か死ぬ気にはならなかった。何故かまだ生きなければならぬ気がした。

(………………)

 それは自分に残った最後の誇り、ファラオに対するせめてもの意地なのだろうか。あるいは魔物娘の本能が、夫を奪われたままで死ぬのを拒んだか。

「ぼ……ぅ………ゃ………………」

 不憫なことに、その愛する夫の名前さえ知らぬ冥界の蛇。しかし、その名前さえ知らぬ少年が、彼女の心の最後の拠り所の一つであるのは間違いなかった。

「っ………………」

 だが、その心の拠り所は、同時に彼女をさらなる絶望に追いやってもいた。

「………………」

 今またシアタークリスタルが作動し、映像を中継する。途端、女王と王子の背徳の交わりが映し出され、物音一つしない暗い牢獄に破廉恥な音声が響き渡る。

「………………」

 これでもまだ死を望まないが、かといってもう放送を止めるよう懇願する気力もない。けれども、愛しい男にいつも跨がり、娼婦の如く腰を振る女王を見つめるその瞳には、まだ憎しみがあったのも確かである。










 同刻、親子の寝室ーー捕らえられた冥界の蛇が拷問を受けているなどつゆ知らず、今日も王子は養母と淫らな愉しみに浸っている。

「あぁっ、母様!」

 二人は血の繋がりはないとはいえ親子でありながら、今日もお互いの肉体を求め合う。ましてや脂の乗った美女と年若い少年の交わりともなれば、その激しさは否応でも増すというものだ。

「んっ……
#9829; そうよ、もっと奥を突いて……っ
#9829;」

 正常位で腰を打ちつける息子に優しく微笑む母は、両脚を愛おしそうに彼の腰に絡める。相変わらず技術も何もない、若さに任せた拙いトーヴのピストンであるが、寛大な女王のほぐれた膣肉にはむしろ好ましい刺激を与え、快感を齎していた。

「でも、ただ腰を打ちつけるだけではダメよ? 正常位ではーー」

 しかしただ甘やかすばかりでなく、時には息子に性技について教え諭し、導くのも忘れない。

「うん」

 トーヴは素直な子だから、母の教えを真摯に聞いてくれる。
 それに夫の性技が拙いというのも悪いことばかりではない。今みたいに教える楽しみがあるし、腕前の上達の過程を見るのもまた楽しい。

「イイ子ね
#9829;」

 にっこり微笑んだ女王は、御褒美とばかりに息子と濃厚な口づけを交わす。

「次は母様の番
#9829;」

 性交時、最初は息子の好きにさせるが、後半はメシェネト自らが好きなように動くようにしている。
 正常位自体は息子の顔を見て交われるので好きだが、彼女が一番好む体位は騎乗位である。女王らしく主導権を握るのが好きというのもあるが、何より激しい腰の動きになんとか耐えようと歯を食いしばるトーヴの顔を見下ろすのが愉しかったのだ。

「んっ
#9829; ふっ
#9829; んぅっ
#9829;」

 甘い声を漏らしながら、息子に跨がり激しく腰を上下させる女王。大きな尻が弾み、爆乳が跳ねるその様はたまらなく淫靡である。そして、それは一物を呑み込まれ、多量の愛液で湿った極上の蜜壺で扱かれるトーヴにもそう見えた。

「ふあぁ……っ!」

 白い肌の華奢な少年はクネクネと蠢く搾り取ろうとする養母の肉厚の膣の名器ぶりにたまらず声を上げる。

「ウフフ
#9829;」

 それも当然とばかりに媚笑を浮かべる母。彼女の体は最早息子専用に仕上がっており、彼が性交において最も快楽を感じるように出来ているからだ。

(………………)

 そう、他の誰よりも。断じて、あの蛇にこの体が負けるはずがない。

「トーヴ、
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