――アイギアルム――
「あぐぅっ!?」
溶解泡の弾丸がガラテアの両肩と両腿を無慈悲に貫き、リリムは傷口から煙を発しながら倒れる。
『ガモモモ!』
そこへ好機とばかりに、ガラテアの顔面目がけて狼牙棒を勢い良く振り下ろすガモス。
『ブロンズ像になるのがイヤなら、ここで脳味噌ブチ撒けて死にさらせやぁ!!』
「〜〜〜〜ッッッ!!」
いくらリリムとて、ガモスほどの腕力の持ち主相手に鈍器で頭部を殴打されれば、スイカのように砕かれてしまうは必定。反射的に対打撃の小型防護結界で全身を覆うも――
『ムダだボケがァ!』
ガモスは狼牙棒を引っ込める代わりに口から大量の溶解泡を再び吐き、ガラテアの全身を覆い尽くす。
「!? 結界が…!?」
なんと、泡は防護結界を水に濡れた紙の如く侵食し、そのままリリムの柔肌へと到達せんとする。
『ガモモモ! オレの【アトミックリキダール】は特別製! 溶かすのは物質だけじゃねぇ!
例え防護結界だろうと、それごと溶かして本体に到達するのよ!』
「……ふんっ!」
しかし説明のさなか、肌が溶かされる前にガラテアは全身より高出力で魔力を噴射、泡を吹き飛ばした。
「うぅ、お次は…!」
撃ち抜かれた肩の痛みに耐えながら上半身を起き上がらせたガラテアは悪漢へと右手を向けると、そのまま掌から数本の触手を生やし、ガモスへと伸ばす。
『うおっ!?』
伸びてきたそれを咄嗟に狼牙棒の柄頭で直撃は防ぐも勢いは衰えず、ガモスは庭から弾き飛ばされてしまう。
『……ちぃッ!』
屋敷の庭を飛び出し、門の前の路に投げ出されたガモス。体勢を立て直そうと起き上がるも、そうはさせまいと触手が彼の体へと絡みつき、動きを封じて再び倒す。
『!? ぐげっ、こっ……こんガキャあ!』
もっとも、ガモスの溶解泡ではリリム特製の触手とて耐えきれず、拘束から簡単に脱出出来る。ガラテアの方もそれは先刻承知済みだったため、そうはさせぬと手を打った。
ガモスの溶解泡は口から吐き出す。故に触手の束は男の首に巻き付き、締め上げて気道を圧迫、泡を吐き出させぬようにしたのである。
『貴様ァ!!』
こうしてガモスはあっさり無力化されてしまったが、敵はもう一人残っている。
締め上げられる同胞を救出するため、激怒したヒッポリトは巨大な左足でガラテアを踏み潰そうとする。
「【ヒートウィップ】!」
『ぬッ!?』
だが、リリムは踏みつけようとした足を躱しつつ、右手の触手を掌より切断。今度は左手からも熱した触手の束を伸ばし、赤い巨人の左足に叩きつけるも――
『残念ながら、そうはいかん!』
何故か触手は空を切り、彼の体をすり抜けてしまう。
『ヒョホホホホ! お前の下賤な手では、私に一生触れる事は出来ない!』
「………………」
嘲笑うヒッポリト。ヒッポリトの方は麗羅を掴んだり、地面に大穴が開くほどの威力の拳で攻撃出来る。
一方で何故かこちらの攻撃はまるで空気の如くすり抜けてしまい、一切触れる事が出来ない。
『だがな……ホレ!』
ヒッポリトは右手に握った麗羅の銅像を、遥か下のリリムへと見せつける。
『逆に私は、お前達に何の問題も無く触れるのさ! このようにな…!』
さらには人質に取った妖狐を握る手をグニグニと動かし、不遜なリリムへと状況を分からせようという悪辣な考えが見て取れた。
『だが、これだけ小さいと力加減が難しい! 貴様が攻撃してくれば、当たらずとも驚きのあまりうっかり握り潰してしまうかもしれんなぁ?
勇敢なのは結構だが、そうさせたくなければ自らの状況を弁えた方が良いぞ?』
「外道…」
そう煽り立てる巨人の卑劣さに腹が立ち、苦虫を噛み潰したような顔で不快そうに吐き捨てるガラテア。
『ガモアアアアアアアア!!!!』
そんな中、絡みつく触手に四苦八苦していたガモスだが、気合の咆哮と共についに引き千切る。
「! あれを引き千切るなんて…」
触手から短時間で脱出された事に、さすがのガラテアも驚いた。
ガラテアの作った触手は人間がまず脱出出来ないほどに力強いのは言わずもがな、耐久性の方もドラゴンの爪でさえそう容易くは引き千切れないほどに高いはずなのだ。
『ヒョホホホホ、馬鹿力だけじゃないぞ。ガモスの溶解液は口からだけでなく、全身の毛穴からも放出出来るのさ。
まぁ、そんな物を全身から出せばさすがに自分も危ないとは思うが、見ての通り何ともない。もっとも、なんで平気なのかは知らんがね』
『ガモモモモモモ! そりゃ企業秘密ってヤツだぜ、ヒッポリト!』
ガモスの足元で千切れた触手は酸にさらされ溶けかかり、もうもうと煙を上げている。
『手こずらせてくれやがって、クソガキが! 跡形もなく溶か
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