ダイロ少年とレミエル

 とある民家の浴室。まだあどけない少年と美女の二人が、そこで激しく交わっていた。

「ぁっ! んぁぁっ! ひぃあぁぁっ! はぁぁン!」

 嬌声をあげる女は白い柔肌を薄っすら桃色に染め、少年を蹂躙する加虐の喜びに喘いでいる。










 ダイロは中性的で可愛らしいが、同年代の少年と比べると些か貧弱な体格の男の子である。だが信じ難いことに、そんな彼には勇者の素質があったのだ。
 そして、その事実が発覚したのは三ヶ月ほど前である。それはあまりにも突然やって来た。
 その日の夕方、貧しい農夫である両親とダイロが、いつものように夕食前に神への祈りを捧げていた。しかし三人の背後へ突如、青き装備に身を包んだヴァルキリー『レミエル』が降臨し、少年に勇者としての道を歩むことを告げたのだ。これに本人はもちろん、両親もまた仰天した。
 だが、万歳して喜べる話でもない。何故なら、勇者の人生が過酷なものであるということは、この貧しい農家の夫婦ですら知っているからだ。
 彼等は戦場で敵国や魔物と戦い続ける過酷な日々を送り、凄惨な最期を遂げる者も多かった。現在では魔物は全て女へと変化し、それに伴い何故か彼等が殺される事は無くなったようだが、それでも魔物を討伐に行って帰ってこないという話は以前同様ありふれた話だ。
 しかし、そう解っていてもあえて、その時の父と母は息子を勇者にさせたいと思った。それは過酷な勇者としての生涯がマシに思えるほどの貧困から、愛する息子を解放してやりたいと考えたからだ。
 こうして、急な申し出にもかかわらず、両親はすぐにダイロをこのヴァルキリーに預けることを決断した。とはいえ、息子の方は心の準備が出来ていないとヴァルキリーは判断したため、両親と共に過ごす最後の時間として一週間の猶予を与えた。
 そして、その最後の日。両親とダイロは短い抱擁と別れの言葉を交わした後、ヴァルキリーは少年を伴って旅立っていったのである。





 レミエルはダイロが親と過ごす最後の一週間に、とある山の麓、澄んだ小川の流れる土地に小屋を建てていた。そこでダイロと二人で暮らし、勇者として必要になる知識や技能を直接授けようと考えたのだ。
 ちなみに、これはヴァルキリーの職務からは些か外れている。本来ならば、彼女等はあくまで勇者の守護及び覚醒を促すだけで、専門的なことはその地域に存在する教団の教育機関が教えるからだ。
 だが嘆かわしい事に、それらの場所でまかり通るのは権力と家柄、金だった。ようするに、高い寄付金を得られる王侯貴族や金持ちの息子へ入学が許可・優先され、如何に才能があろうと授業料を払えぬ農民の子では入学すら渋られる。ヴァルキリーたるレミエルが教団の上層部へ直接交渉に赴いても尚、結局ダイロの入学が許可されかった事に彼女はひどく驚き、落胆したものだ。
 他の地域も当たってみたものの、結局良い返事は帰ってこない。そんな教団の現状に失望したレミエルは、自身が直接ダイロを教え、鍛え、導き、勇者として一人前にする事を決めた。そうして、ダイロ少年が勇者となるべく修業に励んで三ヶ月経つ。
 彼は毎日、朝八時から午後十二時ほどまでは体及び体力作りを兼ねた剣術の稽古をレミエルと行う。そして一時間の昼食を兼ねた休憩を挟み、それから午後六時までは読み書きや一般常識、あるいは戦いに必要な知識を彼女から習った。
 勇者になるのだ、これぐらいの事はさせられるだろう――そこまでは彼も大方予想していた。だが、苦痛とは思わない。
 彼は過酷な未来が待っていることをあえて両親からは伏せられていたが、それを抜きにしても修業の日々を楽しんでいる。しかし、やはり少年の心を一番満たしたのは、この美しいヴァルキリーが少年と共に暮らしていたという事であろう。ダイロは密かにだがレミエルに恋し、彼女と共に暮らせる日々に喜びを覚えていたのだ。





「さぁダイロ、今日も体を洗ってあげましょう」

 夕食の後は入浴の時間と決まっている。そして、少年とヴァルキリーは浴室で共に体を洗い、一日の汚れを洗い落とすのだ。
 
「うん…」
「〜♪」

 もう同棲して三ヶ月経つ。お互いの裸をさらすことも初めてでない。
 今日もレミエルは己の腰に生えた二対の翼に石鹸をまぶし、鼻歌を歌いながらダイロの背中を器用に洗ってやる。

「〜♪」
「……」

 しかし、一緒に風呂へ入るようになって二週間ほどになるが、ダイロの方は未だ慣れない。
 主神の従者にして中位の天使、清純にして気高き戦乙女。にもかかわらず、彼女の見た目は些か官能的過ぎるからだ。
 彼女が整った顔立ちの美女であるのは、誰もが認めるところ。だが、それだけではない。
 シミや傷の一切ない白い肌に、腰まである美しい金髪と透き通った青い瞳。ダイロより頭一つ背
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