――浮遊島『ネオヴァルハラ』王城・地下三階特別牢獄――
(………………)
帝国残党に敗北後、ゼットン青年と共に攫われたガラテアはそこに閉じ込められていた。
その僅かに身体を覆う革製の下着は電熱を浴びて焼け焦げており、皮膚にも同様に重度の火傷がちらほら見受けられる。そのせいで雪のように白く美しい肌は所々傷ついて赤くなっており、その美貌も大分色褪せたものとなってしまっていた。
「モガモガ……」
口には猿轡が咥えさせられており、このように喋る事もまともに出来ない。加えて両目には目隠し、両手首と両足首にはそれぞれ錠がはめられており、それから伸びる鎖は壁に繋がれているため、座る事すら出来ない有様だった。さらには白い両翼と尻尾にまで、ご丁寧にも重石を繋がれているという念の入れようである。
そして、それらはいずれも魔術を封じる材質で作られているため、魔術を用いて脱出する事も出来ない。自身の優れた身体能力を用いようにも、さすがにオーガやミノタウロスほど膂力に優れているわけでもないので拘束の破壊は不可能である。
「モガガ……」
メフィラスの雷撃によって焼かれたために脱出どころか生命維持で精一杯、しかも回復魔術を使おうにも魔術は封じられている。だが、そんな状態にもかかわらず、ガラテアの精神は己でも不思議な程落ち着き払っており、冷静な思考が出来たのだった。
(……今頃、皆何してるのかしら?)
いろいろと思いを巡らせるガラテア。帝国残党が自身をまだ殺す気ではない事をガラテアは承知していたので、今のところは外部からの干渉を気にせずに生命維持だけに集中出来る。
しかし、だからといって状況が気にならない程責任感が薄い彼女ではない。
(無事だといいのだけれど…)
不幸中の幸いな事に、メフィラス達は目的を果たしたので戦闘をあれ以上継続せずに引き揚げた故、ガラテアの心配するような状況には陥っていない。
もっとも、彼女等は今後魔王軍に居づらいかもしれないが。
(それと…お父様、お母様は捕まった私を心配してくれてるのかしら?)
娘としてそれは気になるところであるが、二人の性格上放置するはずがないのはガラテア自身も重々承知している。姉妹達も彼女が捕まって平気でいられるような者などおらず、大いに心配してくれているだろう。
(でも、ここの場所が分からないから助けには来れないわね)
視覚と身動きは封じられているが、リリムの持つ高い魔力感知能力により、己の置かれる環境の異常さは理解しているのはさすがと言えた。島全体を包む桁外れに強力で巨大な防御フィールドが、島に対する一切の物理的及び魔術的干渉を防いでいる事を、彼女は察していたのだ。
それはたとえリリムがここにいようと、その魔力の一切が漏れ出るのを遮断しており、あらゆる探知系の魔術・呪術を無効化する事にも繋がっている。
そして、転移魔術は予め行き先を指定する必要があるが、肝心の座標が分からなければどうしようもない。
(あ〜あ……白馬に乗った王子様が現れて、私を助けてくれないかしら)
自身が脱出不可能な牢獄にいる事を理解しながら、そんな事をガラテアは考えてしまう。彼女にしてみれば、両親に助けられるという事は自身の失敗を彼等に尻拭いさせるという事であり、あまり体裁は良くない。
しかし、見ず知らずの素敵な殿方に助けられるのはそれから一転、最高のシチュエーションと言え、実にロマンティックなものと言える。
(あぁん、ヨダレ出ちゃう…)
死にかけにもかかわらず、その後の展開を想像するだけで秘部からはつい愛液が漏れてしまい、股布を濡らしつつあった。
ただでさえ異常に退屈な場所故、妄想力と性欲ははちきれんばかりに増しているとはいえ、その淫蕩さは瀕死の状態でも失われない。
(でも、助けに来るのはヒョロヒョロの細面イケメン王子じゃなくて、精悍なマッチョ系王子がいいわね〜……で、私の胸を激しく揉みしだいてから吸いついて、犬みたいな格好で私を犯してくれるの。
もしくは対面座位で彼の逞しさを感じながら犯されるのもGOODね)
『白馬に跨った何処かの国の王子』が現れ、囚われの姫を救い出すというのはありふれた物語である。そして王子と姫は結婚し、末永く幸せに暮らすというのがお約束だが、もし助けられる姫が淫蕩の権化であるリリムならば、その結末は非常に淫らなものとなるだろう。
(……そうよ、まだ死ねない。そんな素敵な王子様が来ても、私が死体じゃ意味無いわ。殿方に犯されるにしたって、死姦されるのはゴメンよ)
それを証明するかのように、リリムの頭はいずれ自分を助けに来るかもしれない素敵な殿方との交わりの事でいっぱいとなった。さらに、淫蕩な妄想はやがて生還の覚悟となり、彼女の生きる意
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