『『『『『エンペラ帝国七戮将、見参!!』』』』』
蒸気渦巻く次元の裂け目から現れたのは、クレアが撤退させたはずのエンペラ帝国残党であった。
「この忙しい時に!!」
一難去ってまた一難、相次ぐ息災に苛立つクレア。
だが、メフィラス、デスレム、グローザムに加え、新たに二人知らない顔がいるのに彼女は気づき、顔を不快そうに歪ませる。
一人は恐ろしい程の巨漢で、人間離れしたデスレムよりもさらに大きい。古の巨人族にも匹敵する体格だ。
しかし、こちらはそれですらどうでもいい程と言える。もう一人、いやもう一体と呼ぶべきだろう『機械獣』がその後ろで不気味な駆動音をあげているからだ。
『……!?』
暗黒の鎧も、巨大な機械獣のクローアームに捕らわれては為す術もない。必死でもがくが、一向に抜け出せる気配は無かった。
『ふん!』
メフィラス達及びその後ろに控える機械獣は、真紅の裂け目から歩いて抜け出ると共に、二本のアームが暗黒の鎧をその中に放り込んだ。
『戻れ、次元の壁よ』
その操縦者の呼びかけに呼応するかの如く、砕け散った空間の破片は時間が巻き戻るかのように浮き上がる。そして、そのまま破片は元の形へと急速に結集し、巨大な裂け目が完全に塞がり、噴き出す蒸気も完全に遮断されてしまう。
同時に暗黒の鎧も完全に虜となり、異次元に囚われてしまったのだった。
『次は“肉体”ですね』
メフィラスは倒れ伏すゼットンをちらりと見やると、今度はクレアの方に視線を移す。
『また会いましたね、お嬢さん』
「あんた、死んだんじゃ…!?」
初めこそ状況の急変に気を取られて意識していなかったが、メフィラスの声を聴き、事態の異常さにクレアは改めて気づく。
断末魔の叫びをあげて爆散した邪悪な魔術師が、今再び彼女の目の前に姿を現した事は、不可解だとしか言いようがない。
『フッフッフッフ、私が生きているのは不思議ですか? なぁに、つまらない理由ですよ』
何やら含みのある言い方で笑うメフィラス。真相はあまりにもつまらないため、わざわざ語るに及ばない。よって、相手の推理力に任せる事にしたのだ。
(あの時死んだアイツは偽物か…)
クレアが真っ先に思いつくのはその程度であるが、それこそが正解であり、そして簡単に当てられる程『常道で、芸の無い』やり方でもある。
その用心深さと卑怯さには呆れるが、彼の振る舞いを見る限り、それが有効に活かされているとは言い難い。
「ふ〜ん……まぁ、大体察しはつくよ」
『それは何より』
フードに覆われているので表情は窺えないにもかかわらず、クレアにはこの魔術師が笑ったように見えた。
しかし態度からして慇懃無礼、気持ちの良いものではない。
「でもね、私はアンタ達とこれ以上遊んでるヒマは無いの。あの鉄屑とデクの坊、汚い豚と粗大ゴミを連れて、さっさと帰りなよ」
『『『『!!!!』』』』
あまりの言われように、プライドが高い彼等は当然憤る。一斉にクレアを睨みつけ、殺意を滾らせた。
『まあまあ、落ち着きなさい諸君……お嬢さん、時間は取らせませんよ。そこで情けなく倒れるゼットン君を渡してくれればよろしい』
「! いけしゃあしゃあと…」
夫が仰向けで気絶しているのも、元はといえばメフィラス達のせいである。理由はよく分からないが、暗黒の鎧を纏わせた夫を操って暴れさせ、危うくクレアも殺されるところだった。
しかし、彼等からしてみれば異例という程の寛大な対応である。
本来、彼等の信条からすれば魔物娘と取引など行うはずがなく、例え冗談でも見逃してやるなどとは言わないからだ。
「渡すと思う? 夫を悪人にくれてやる魔物娘なんか、この世界にはいないよ!」
『…それが返事か!? ならば貴様は死ぬしか道が無い!!』
当然魔物娘が夫を渡すはずもない。そんな彼女に業を煮やしたグローザムとデスレムはこの小癪な羽虫を始末すべく、前に進み出た。
『先刻は不覚を取ったが、今の貴様なら恐るるに足らん!』
『グオオ…!』
先程のクレアは病み上がりとはいえ、まだ余力があった故、この二人を圧倒する事が出来た。
しかし、今は体力が精々平常時の二割というところで、勝率は相当に低くなっている。彼等の言うことも、あながち間違いではないのだ。
「なめるなよ、糞ったれども…! 私が死んでも、夫だけは守りぬいてみせるさ…!」
『ほう、薄汚い魔物にしては見上げたものだ。しかし、その威勢の良さがどこまで続くかな?』
グローザムは機械音をあげながら両腕を分割、四本腕となる。さらには腰に装着した魔導激光剣(マジック・ビーム・ソード)を起動し、四本の光刃を煌めかせた。
デスレムの方もそれに呼応し、虚空に不気味な魔方陣を描き出し、得物を召
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