ヲタクな雪女とどーじんし

  俺の名前はトモヤ。十九歳の血液型はA型。
 半年ほど前、友達の紹介で雪女の子とつき合うことになった。
 肩まである髪をヘアゴムでまとめたおとなしめの子。
 ルックスは良く、色白で胸やお尻はけっこうあって俺好みの女の子だ。
 しかし、徐々に明らかになる彼女の本性。
 俺はとんでもない女の子とつき合ってしまったのかもしれない。
 そいつの名前はトモコと言った。

「おい、トモッ!入るぞ」

 ガチャッと合い鍵でそいつの下宿であるアパートの部屋に入る。
 中はカーテンで締め切られ、昼間だというのに薄暗く寒い。
 まぁ、それは良い……問題なのは本体の方である。
 その本体はパソコンのディスプレイに向かいクリックを繰り返していた。
 耳にはヘッドホン。

「聞いてンのか! コラ!」
「えへ、えへへ……選択肢は間違ってなかったわねぇ……おッ! しちゃう! しちゃいますか? ちょっとまってパンツを――」

前かがみになっていそいそとベルトを外す音、俺は手近にあったメガホンでそいつを殴る。
前にアニメコンサートでもらったヤツだ。

「痛でッ!……何よ〜ともにゃんじゃないの。ノックくらいしなさいよ、変態エロ美大生!」
「変態はどっちだ!?」
「これからイイところだったのに! デリカシーってモンを考えなさい!」

 そいつは頭を抑えて恨めしそうに振り返った。
 PC用眼鏡を掛けたトモコは結構可愛し、部屋着の胸元を押し上げる乳のせいでプリントされたアニメキャラが歪(おびつ)に歪んでいる。
 そう、それはとてもイイ。しかしエロゲーに歓喜の涙を流しているせいで魅力半減だ。

「昼間からヘッドホンしてエロゲーするな! 部屋が暗い! カーテン開けろ! 掃除しろ! ゴミ捨てろ!」
「はぁ〜何も解ってないわね」

 そいつはイスから降りるとボフッとベッドに倒れるとアニメキャラが半裸でプリントされている長枕にむぎゅと抱きクンカクンカスーハース―ハーすると
こちらを振り向き言った。。

「ネットの海は広大よ」

 再びメガホンで頭部を殴打し、カーテンを開ける。
 日光が差し込み部屋の中が一気に明るくなった。

「ああああ! 眼が! 眼がぁ! ああぁ〜! カーテン閉めてぇ! 眩しくて暑いのは嫌いなのよォ! 身体が溶解しちゃう! 身体が腐っちゃう!」
「腐っているのはお前の頭の中だろう」

 昨日一緒に見た天空の城の某大佐の真似しつつ、ベッドの上でのたうちまわるトモコ。
一応、雪女なので直射日光はマジで厳しいらしくカーテンを閉めてやる。

「おのれサンオブサンめ! 我が身を焼き尽くそうというのか」
「あーツッコミなしな――んでお前、ちゃんと昼飯食ったのか?」
「ソリジョイン一本にまいう棒三本食べた。お腹減った」
「不健康すぎだ。今から作るから部屋片付づけろ」
「それならラピュ○パンがいいわ、あとリンゴに一つにあめ玉が二つ」

 もう一回、メガホンがうなった。

 
             
             ****


「あー美味しかった。ともにゃん、ありがと」
「結局、掃除もゴミ捨ても俺がやったし、」

 簡単な食事を作り、腹を満たした雪女はすっかりご満悦らしい。
 雪女ことトモコは重度のオタクだ。
 今や国の文化になっているアニメ、ゲーム、マンガ。
 デートと称して連れて行かれた会場は別世界で、二次創作のグッズやら本がずらりと並べられている様は圧巻だった。

『高校の制服持ってきてね♪』

 と言ったのはこの為か!
 ちなみにトモコも高校時代の制服を着ており、写真を撮られた。
 恰幅がイイとかいうレベルを遥かに超えた方々と平然と会話するトモコ。
 コスプレしたお姉さんやイケメンと軽く挨拶を交わし、ノリノリで一緒に写真を撮ってもらっていた。
 テーブルに突っ伏して感慨に耽っているとトモコが冷茶アニキャラコースターの上にトンと置いて対面に座る。

「お疲れ様、いつも感謝しているよ。ともにゃん、ありがと」
「今に始まったことじゃねーしなぁ……サンキュ」

 黙っていれば可愛いし何も問題ないのになぁ……天は二物を与えねぇわり余計なモンをいくつもつけやがって。

「あの話考えてくれた? どーじんしの話」
「ああ……そんな話していたっけ……絵を描けって話だろ」
「ね、ともにゃんの腕を見込んでお願い! 話は私が考えるからさ。二人でどーじんし作ろう。ともにゃんの画力なら鉛筆画だけでも売れるって」
「……俺さ、アニキャラがヤリまくっている絵を描くために大学に行ってるワケじゃねぇんだよ! それに鉛筆画ってかなり難しいんだぞ?」

 俺の専攻は美術だ。
『絵が上手いから美大行け』と進路指導で言われたまま受けた試験。
 デッサンとか何となく描いて、何となく受かっ
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