私の名前はセラ。リザードマンの戦士。
夫を迎える年齢となった私は、一族の掟で家を出た。
一昔前は、戦が多く夫に相応しい者を戦場で探す事もあったようですが
生憎と今の時代は、戦がほとんどありません。
国同士が話し合いで物事を決める時代になったからです
装備したロングソードに、ダガー、足首に隠しナイフを存分に振るう事が
できない時代の到来です。
いくつかの街を渡り歩き、集めた情報によると、多種族間において
夫になる種族は人間の雄が理想とのこと。何故ならば、人間はどんな種族とでも交配できる上、万年発情期らしいのでいつでも交配してくれるそうです。
それに戦乱に明け暮れた人間の雄は強い者が多いとのこと。
これはリザードマンの私にとって、とても重要なことです。
この周辺で一番大きな街に着いた私は期待に胸が高まります。
界隈を歩いていると、人間とドワーフ、エルフのカップルなど
多種族をよく見かけます。
たまにハーピーやラミア、果てはケンタウロスなんてカップルもいました。
子連れの夫婦はとても幸せそうです。
「いいなぁ……うらやましい」
この街は人通りが多く、さまざまな店や、露店があります。
色々と見て回ると、大通りで人集りができています。
「腕に自信のある者は俺と勝負しろ! 俺に勝つことが出来たらここにある金貨を全て渡す! 金貨一枚からどうだ!」
人間の剣士が木刀を持って声を上げています。
なるほど、腕試しですか……これは好都合です。
私は金貨一枚を取り出し、勝負を申し込みました。
「ま、参った……降参する」
弱い………これで腕試しとはあきれます。
勝負したものの、私の圧勝では話になりません。
剣士の金貨は数えて十枚、路銀の足しにでも……と思案していると
見物してた人間がずいと進み出てきました。
「おい、リザードマンの女、俺と勝負しろ」
「受けて立ちます」
「へへ、ほらよ。金貨一枚」
「いざ!」
「ちょっと待て、真剣でやる気か!? さっきの木刀があるだろ!?」
「は?」
私がダガーを抜くと、傭兵は驚きの声を上げた。
そういえば、先の剣士は木刀を渡してきましたね。
人間の腕試しでは、そういったルールなのでしょうか?
「わかった。では木刀で」
「ったく、世間知らずのリザードマンが……」
その言葉に私はカチンときました。
「参り……まし……た」
弱い! 弱すぎる! 侮辱した罰として軽く打ち据えてあげました。
降参と言っても聞こえないふりです。
いつの間にか、人集りが増え、それぞれにお金を賭けているみたいです。
そろそろ日が暮れてきました。どこかに宿を取らなければいけません。
「はいはい、今日はもう終わり! この続きは明日の昼からでーす」
いきなり現れた甲冑を纏った騎士が声を上げて、『お開き』を宣言しました。
騎士が振り返ると、わきに抱えた女性の顔が二ヒヒと笑って言った。
この種族はデュラハン、初めて見ました。
「いやぁ、面白いものを見せてもらってありがとう。リザードマンさんは
どの宿に泊まるか決まっている?」
「いえ、まだ宿は決まっていません」
「この時間はどの宿もいっぱいだよ。私がバイトしているホテルに来るといいよ。ラブホだけど、男いなくても泊まれるし」
「ラ、ラブホテルですか!?」
いきなりそんな所はいささか抵抗があります。
「気にしない、気にしない。この街は野宿禁止だし、罰金とられるよ?」
「は、はぁ……わかりました」
路銀を取り上げられるのはいただけません。私は渋々、承諾しました。
「ニヒヒ、では一名様、ごあんなーい」
****
ラブホテルに着いた私は部屋まで案内してくれるデュラハンさんに尋ねました。
「貴女は死者がでる場所にいると聞きましたが……このホテルでは死人がでるのですか?」
「いやぁ〜最近はめっきり戦が減って、休業してバイトしているの。ここだと部屋から『もう逝く!』とか『死ぬぅ! 死んじゃう〜』とか聞こえてくるからそれでいいかなぁって思って」
不真面目な騎士さんですね。ちゃんと仕事するべきです。
「それに用心棒とかも兼ねているし、他にもオートマトンがいるしね。いやぁ強いのなんのって」
「そ、そうですか……」
「それにしても『自分より強い男』ってリザードマンの掟も面倒だねぇ」
「種族を繁栄させるためです」
そんな話をしているウチに部屋につきました。
「では、ごゆっくり〜。ルームサービスで軽食なんかは出るけど、
外で取った方がいいと思う。リザードマンはたくさん食べるっていうし」
そう言って首なし騎士さんは出て行った。
私は装備を解き、ベッドに寝そべった。
天井には大きな鏡、本棚にはエッチな本がずらりと並んでいる。
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