-群馬 妙義山-
パァァアアアアアア!!
ヴォオオオオオオオ!!
パァンッ! パァアンッ!
ヴォンッ!ヴォンッ!
ギャアアアアッ!!
人々が寝静まる深い夜。
ここ、妙義山に大気を切り裂くようなエンジン音が響き渡る。
その音を発する2台は高速で下りのワインディングを駆け下りて行く。
?「エアリ様…なんだか乗り方荒いなぁ…。」
高いソプラノを響かせながら、小さな車体でS字を駆け抜けるワンダーシビック。
VTEC特有のハイカムに切り替わる甲高いサウンドが周囲を轟かせる。
そのコクピットに座る全身包帯姿の少女はそう呟く。
?(バックミラーで眺めただけでもわかる…。正直危なっかしいです…。)
そして、ワンダーシビックの後ろに張り付くHCR32。
パッと見ただけではGTRと見間違えるほどRに似せられてはいるが、Rのエンブレムはない。
だが、エンジンサウンドは紛うことなきRB26の音である。
エアリ「くっ…!」
その32のコクピットには、黄金色の装飾が目立つ犬耳の女性が表情を歪ませながらステアリングと格闘していた。
エアリ(わかっているはずなのに…何でこんなに焦ってる…!?)
2台が緩いRの左コーナーへと突っ込んでいく。
直前のストレートではRBのパワーで32が軽々とワンダーに張り付くが、ブレーキングに入った途端、スッと一気に差が開く。
コーナリングを終え、32が立ち上がる頃にはワンダーは既に次のコーナーへと消えていく。
エアリ(やはり下りではいくらRに比べて邪魔なものがないGTS-tとも言えど重いものは重い…!)
エアリ(ワンダーとの重量差は約500強もある…。当たり前なんだ…こんなの…。へこむ必要なんかないと言うのにっ…!)
連続したS字を32が抜けていく、足がしっかりしているのであろう。
トラクションの抜けやすいバンプもしっとりと抜け、大排気量ながらムダなテールスライドはない。
だがしかし、コーナーを抜け、少し開けたストレートに入った時にはワンダーとの差が歴然としていた。
エアリ(くぅ…!!)
ヴォォォォォォォオオンッパパンッ!!ヴォオオオ!!
エアリは必死の余りアクセルを限界まで踏み込んだままクラッチを切りシフトノブを叩き込みクラッチを繋ぐ。
回転数はクラッチを切ると同時にレッドゾーンまで一気に吹け上がる。
レブリミッターにあたり、点火カットされた未燃焼ガスが排気管の中で爆発し、アフターファイヤーとして吹き出される。
エアリ「ぐぐ…ぅっ…!!」
だがしかし、そのように必死に食らいつこうとするエアリを嘲笑うように次のコーナーへと消え去るワンダーシビック。
スゥーっと、ワンダーの赤いテールランプが描く軌跡が『ここまで来てみろ。』と誘うようにエアリの目に焼き付く。
エアリはそれでもアクセルを踏み込み、シフトを繋ぐ。
その時。
ヴオオンッ!!
ギャアアアアアア!!
エアリ「きゃいっ!?」
シフトを入れ、クラッチを繋いだ瞬間。
32のエンジン音が急激に甲高くなると同時にリアタイヤが一瞬ロックし、流れ出す。
咄嗟にカウンターをあてるエアリ。
だが、僅かに対処が遅れてしまい立て直す余地がなくなる。
32はクルリと一回転しながらヘアピンへと吹っ飛んでいく。
エアリ(お願いだ…止まってくれっ!!)
エアリはサイドを引き、フットブレーキを必死で踏み続ける。
そして、32はガードレール際まで吹っ飛ぶと、フロントバンパーの角をコツンっとガードレールに当てギリギリで停止する。
エアリ(……シフトミス…。3速から4速に入れるつもりが…2速に入ったか…。すぐにスッポ抜けてくれたからエンジンに足が生えなくて済んだようだが………まさか…こんなミス…っ。)
引き絞ったサイドブレーキレバーから手を離し、頭を俯かせたエアリ。
髪がサラリと肩から滑り落ち、顔が隠れて表情は伺い知れない。
エアリ「う…うぅ…ぐ…。」
しばらくすると、32の車内に小さくすすり泣く声が響く。
長いブラックラインを続かせたHCR32のアイドリング音が悲しげに妙義の山道に響く_______
~数日後~
-セルフィのガレージ-
エレナ「よっ!」
隆文「うぃーっす。」
優「いぇあ。」
サリナ「どぅーん!」
とある住宅街の外れにある小さな板金屋。
そこにセルフィのガレージはあった。
そこに止められたR34とワークスから2組の男女が降車する。
男女は開かれたシャッターから中へと入っていく。
渉「よ、来たな。」
瞬「よぉ。」
セツナ「全く、待ちくたびれたぞ。」
隆文「わりぃわりぃ。昨日あんま寝れてないんだよ。」
優「同じく…。」
セルフィ「……誰か挨拶の仕方に突っ込もうよ…。」
この日チームメンバーは渉の召集により、セル
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