リザードマンが観光するお話

8月。夏真っ盛りの日差しを照り返すアスファルトが蜃気楼をモヤモヤと浮かびあげる。"~~~PA 〇〇km"の日本語の文が表記された看板がフロントガラス越しに過ぎ去っていく。
「やはりダダ長い高速道路でも、ここまで景色に変化があると面白いものだ。」
コオォォン…とエンジン音を唸らせる軽自動車を駆る緑色の鱗が輝くトカゲのような特徴を持った魔物娘が、高い橋の上から広がる景色。並び立つ山の間から見える地平線まで広大に広がる海を横目に眺めつつ呟く。車内のスピーカーからのFMラジオの…今の時代からすれば古臭い音質だが、そのフィルタリングされた音質が奏でるどこか懐かしく安心する音楽が耳に心地よい。
「普段見えぬ景色が見える事もまた遠出の良いとこだな…。」
決して居心地がいいとは言えない真夏の暑い空気の車内を涼やかな潮風が開け放たれたウィンドウから流れ、心地の良い空間を作り出している。彼女はその窓の縁に肘をつき、その風を楽しんでいる表れかフッ…っと息を吐く。
彼女の視線の先、緑色に塗られた看板には"白川郷 出口 〇〇km"の文字。

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「~~~からの料金ですんで、〇〇〇〇円になりますね。」
「ちょっと待ってくれ。」

やがて料金所に着いた彼女は、高速料金を支払う為に財布をあける。ふと感慨深げな料金所のおっちゃんの声が彼女の耳に届いてくる。
「だいぶ年季の入った車ですねぇ。好きなんですかい?」
「ん?ああ…、このミラの事か?まあ嫌いとは言えぬな。ふむ、これでいいか?」
「へぇ
#12316;、L200型のミラ…しかもキャブのグレードじゃないの!久しぶりに見たよ、出てからもう30年近いんじゃない?今数えるからちょっと待ってな。」
おっちゃんはハハハっと陽気に笑いながらお金を受け取り、少しして発行された領収書とお釣りを手に再び顔を出す。
「ほい、お釣り。まだまだ乗れそうだし、キミみたいな若い魔物っ娘が乗ってるのも味があって俺は好きだなぁ。そういうの。大切に乗ってやってくださいな。」
「ああ、勿論だ。ありがとう。」
「ありがとうございました
#12316;。」というおっちゃんの声に会釈しつつクラッチを繋ぎ、料金所を後にする彼女は一期一会の良い出会いに上機嫌でクォンッ!と意味も無くダブルクラッチでシフトを繋ぐ。

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「フム、やはり観光地だな、人が多い。」
料金所をから白川郷へと続く道を下り、主要道路と思われる通りへと入った彼女は、歩道を歩く人と道路を走る県外ナンバーが占める車両の数々を流しみる。
「とりあえず、止められる場所へ向かうとしよう。」
ある程度中心へと進んだ彼女はちょっとした渋滞に引っかかってしまい、「むぅ…。」と少々不満そうな声を上げるが、その先に見える集落が見えた時、その瞳は期待へと輝きを放つ。
「あれが合掌造りというやつか。是非近くで見てみたいものだ…。」
バスの停留所と思われる建物の前を過ぎ、目の前に広がる白川郷のメインストリートに胸をふくらませる彼女は気持ち急ぐかのように交差点を曲がり、事前に調べていた観光客の為の駐車場へ向けて車を進める。
やがて、駐車場の目の前へと進んだ彼女は係員に誘導され、駐車場へ続く道へと入って行く。
「駐車料1000円か、まあ1日観光でそれなら安いものだ。」
入口へと入り、目の前のバーが上がるのを確認した彼女はゆっくりと駐車場の中へと入り、 空きを探してキョロキョロとしながら車を進める。やがて少々奥の方で空きを見つけた彼女は車を駐車させ、荷物を手に車を降りる。
「ふう、遂に到着だ。ん
#12316;
#12316;…っはぁぁ!やはり暑いなぁ、この季節は。」
風を感じられる車内とは打って変わり、日差しが強く照り返す蒸し暑い外に立った彼女は大きく伸びをして手をうちわにして扇ぐ。
「とりあえず昼まではまだ時間があるな、さっきの中心街らしき所を回ってみるか。」

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「この橋から見える景色もまたいいものだ…。」
サワサワと流れる川と白い砂利が占める川辺が緑の深い土手を挟んで続いている。包み込むように吹く自然の風が橋の上を歩く彼女の肌を撫で、運ばれる匂いは淀みがなく清々しい。
歩く彼女は橋の丁度中心辺りでふと歩みを止め、スゥー
と大きく深呼吸。
「はふぅ…。心地いい…。」
彼女は吹き抜ける風と景色を少しの間楽しむと、また歩みを進め始める。すれ違う人の流れを避けつつ橋の終わりへとたどり着いた彼女は、小道のような入口を抜けると、目的の通りが目の前に広がる。
「これは…言葉にできないな…。」
スイレン池が所々に敷き詰められ、道の端には用水路がサラサ
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