100 英雄が探した愛情

正直な話をすると…俺は、こんなところに一人で立つ事になるとは思っておらず、俺は今日もまた、メガロス帝国の中でみんなと平和に暮らしているものだとばかり思っていた…

じゃあ、そんな事を考えていた俺がどうして戦場に一人で立っているのか…
答えは簡単だ…守りたいものがあるからさ…
ここまで侵攻され、デメトリオが言ったとおり、俺も逃げれば…少しはマシな状況になっていたのかも知れない…
だが、それは一時的な物だって事も分かっているつもりなんだ

実は、いまさら話しても何の意味も持たないんだが、俺は昔…デメトリオと同じように臆病な男だった…
デメトリオのように、逃げの姿勢を何度も取る事はなかったが、それでも…
俺は臆病な男だったと思っている

昔の俺…そうだな、今から8年前の俺だったらデメトリオの逃げようという誘いに、俺は喜んで乗っただろう…


今から8年前、俺はどこの国にも属しない一人の兵士として下働きを繰り返していたんだ
この時は、俺は兵士の中でも新参者で、他の同業者の中でも一番下だったな…
元々は、親の暮らしを少しでも楽にしようと思って始めたことだが、この行動が少々…いや、大分俺にはきつかったんだ…
8年前も、今も戦争で対して変わらない事実の中に、兵士の使い捨てという事実が存在している世の中だ…
その時の俺も、何時死んでもおかしくない状況だった…
だが、俺の場合は戦いに負けるのは当然嫌だが、勝つのも嫌だったんだよ…
簡単に言えば、仕事に向いていなかったというところか?

戦争というものには、敗者は勝者に逆らうことが出来ないという、暗黙のルールが存在する…だからこそ、俺達兵士は戦いに勝って、自由に命令する権利を欲しがったんだろう…
だが、その権利がどうも俺は好きじゃなかったんだ…
戦いに勝って、負けた国の女性を勝った国の男が好き放題に犯している状況を戦場で目の当たりにして、俺は思わず勝ってよかったのかと思ったね

そのくせ、その女性の夫は命乞いをしても無残に殺されたりもした、無情な世界だった…
恐らく、兵士達の好きにされた女性の心境はとても俺の思うところではなかっただろうな
そして、そんな世界に嫌気が差しながら、我慢し続けたあるときだった…
俺は下っ端だったが、それでも初めて大敗を経験したんだ…
その時、俺は運よく逃げることに成功したが…残った同業者は恐らく…
世の中、魔物娘達が人間じゃないからという思想から、魔物娘の排除をたくらむ人間の集団もいるって聞くけど、俺は怖いのはそんな事を普通にやってのける人間だと思うね

そして、大敗を経験してから3年後…俺は逃げてばかりではどうすることも出来ない現実に差し掛かったんだ…
デメトリオはまだ、この現実にぶち当たっていないようだけど…な?
その年には兵士を引退し…といっても、引退も何も無い状況だったんだが、とにかく、普通に人生をエンジョイしていた…
エンジョイといっても、貧相な家に一人暮らし、とても豪勢だとは言えない暮らしだったんだが…それでも、人生をエンジョイしていた…
朝は新聞を町で売り、夜は当時まだ完璧だとは言われていなかった水道設備の修理に明け暮れる日々だった
給料は4銀貨と安時給だったが、それでも一日を暮らすには十分すぎるほどの生活を送っていた時、それは起こった…
その年は、俺にとっては厄年だったんだよ…

その年の春…水道設備の修理が全て終わり、俺は夜の仕事が無くなった…
これは、むしろ喜ばしいことだといえる…だが、その年、異常な程の凶作が農家を攻撃したんだ…
一気に食糧の値段は高騰し、俺は日ごろの生活を送るのが少々苦しくなっていた…
そして、母が当時、難病だといわれていた病気で他界し…俺の心境は穏やかではなかったんだ…
当然、悲しさを紛らわせるために酒も煽ったさ…
生活も苦しいのに、酒ばかり飲んでいた俺は、あっという間に借金を背負うことになってしまった…

当時、その町には悪魔の緑リボンと呼ばれていた形部狸がいたんだが、その魔物娘はとにかくお金の貸し借りにはうるさい人だった…
当時は、俺も悪魔だって言って陰口も叩いてしまったが…本人に会って謝れるなら謝りたいと今も思っている
彼女はただ純粋に自分の仕事を行っているだけだったんだからな…
その彼女がお金を取り立てに来るって日に…俺は夜逃げをするつもりだった…

だが、世の中は俺に厳しかった
いや…当然といってしまえば、当然の結果だったかも知れない
俺は逃げる前に彼女に捕まり、自分が行った行動が常に逃げの姿勢であり…結果的に、逃げてばかりでは自分にいい事があまり無いって現実に気づかされたんだ

その日、俺は酒を飲み…その町から故郷がある方向を向いて、母のことを思っていたんだ…
人は生きている限り死ぬ…そんな当たり前な現実から人は逃げ
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