ドッペルゲンガーの憂鬱

私は私が嫌いだ
だが決して特技や性癖が嫌いなわけではない
種族に至っては大好きだ、だからこそ嫌いなのかもしれない
思い人に出会ってしまった時のことだ
私はその思い人の過去を漁り、思い人の思い人・・・
つまりは自分の手が届かなかった愛しの女性になってしまうのが
どうしようもなく悲しい
これはドッペルゲンガーの特技であり、私は誇ってもいいと思う
しかしその思い人は私本体ではなくその女性、即ち私以外を思い
抱きしめ、愛をささやき、そして接吻し行為に及んでいると思うと
どうも好きになれない 好きにはなれないのだ
別に今までの容姿で恋愛をすればいいじゃないかって?
笑わせてくれる
私達ドッペルゲンガーは
サキュバスのように魅力がある訳でもなく
ワーウルフのように獣耳がある訳でもなく
ローパー達のように触手がある訳でもない
つまり地味
一言で片づけるならこの言葉が良いだろう
しかも私達は失恋した男性の前に本能的に自然的に集まってしまう
要は私がどんなにいい思い人を見つけても結局その人は他の女が好きなのだ
ドッペルゲンガー自体を愛してもらえない
多分私は独占欲が強いのだろう
たまに私たちも含めて愛してくれる男性がいると聞いたが
正直それも余りいただけない
二股されている気分だ、私以外も愛してしまっている

まぁ・・・こんなことを思っていても仕方ないよね
自虐ネタはここまでだ、私は他のドッペルゲンガー達と同じように
姿を変え偽りながら生きていくことを強いられているんだ
あ、あっちになんか失恋しそうな男の子がいるな・・・
いってみよ・・・

_______________________________

こっそり路地から覗くと男性が綺麗な女性に必死にプロポーズをしていた
・・・内容は聞こえなかったがどうやら女性側はその発言で戸惑ってるらしい
しかしこの様子からすると女性は別な男性が好きらしい
でもあの人が好きなの、ごめんなさい! 
決別するためか、はっきりでかい声で叫ぶと
でもやはり少し名残惜しそうに後ろを少しだけむいて
どこかへ走り去っていった

・・・私の出番、なんだよね

私は彼の記憶を読み取り・・・ってあれ?
頭の中に流れてきたイメージは先ほどの女性とまるっきり違うものであった
きっと見間違いだ、別な人のイメージだそうだろう?
さっき見た女性は煌びやかで、御淑やかそうで、なにより輝いていた
しかし彼が好きな女性は地味で黒くて、ちっこくって、まるでこれでは・・・

「ドッペルゲンガー・・・だよね?君」

動揺していて気付かなかったが彼が近くまで来ていた!
ま、まずい早く逃げ・・・!!

「ま、待ってくれ!!」
「ひゅいッ!!!」

彼に肩を掴まれ、変な声が上がってしまった
彼に完全に私を認識させてしまった、私はもう駄目かもしれない

「もう一度聞くよ?君はドッペルゲンガーかい?」

駄目で元々だ 正直に答えよう

「はい、ドッペルゲンガー・・・です」
「やっぱりそうだったか、名前は?」

名前?名前は・・・

「ムウル・・・」
「ムウルさんか、よしムウルさん、僕と結婚しよう!!」

どうせ嫌われ・・・はい?

「あの、今なんて・・・」
「ムウルさん、僕のパンツを毎日洗って下さい!!」

そそそそそれってもしかしてプロp・・・
改めて私も姿を確認する、容姿は今まで通り地味だ

「わ、私まだ姿が変わってないですよ・・・?」

そう言うと彼は即座にこう返す、多分さっきの子にもこう言ってたのだろう

「ありのままの貴方が好きなんです!!」

そして彼は語った、私達の元々の姿は愛しく美しい物であると
まさかまさかの種族自体を愛してくれている男性がいた
多分先ほどの女性はドッペルゲンガー・・・
そしてこのプロポーズを言ったのだろう
しかしタイミングが悪く失恋、そして私と出会った・・・

「ムウルさん・・・返事をお願いします・・・!」

彼に返事を求められた、もちろん私の返事はこうだ

「他の女性に負けないよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします♪」

こうして私たちは偽りのない夫婦になったのだった
さっきの自虐からまさか本当にそういう男性がいるとは思わなかったが
この出会い方もまた、ドッペルゲンガーだからできたことなのか

そう思うと私は私が少しだけ好きになれた気がした
12/03/18 14:10更新 / だんちょー
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