第2話 新しき出会い・前編

患者、ジン・ブレイバーが目覚めてから2日目の朝…。
山から顔を出した太陽は東寄りに傾き、それによって足元から伸びた少々縦に長い影は壁に、地面に映し出される。
その形は様々なもので、同じ形の物は早々あるものではない。
人であったり、建物であったり、あるいは店先に並ぶパンや魚であったりもする。
だが、明暗は違えど影は全て黒一色。混じり気など一切無い。
そういった影の中で、他の建物よりも数倍大きな、影とは正反対の色をした真っ白な建物があった。
建物の大きさに比例するように、数多く設置されている窓からは外の風景が映し出され、東側の窓には暖かい日の光が差し込んでいる。
その建物は“病院”と呼ばれる場所だ。
言わずもがな、病人を診察・治療する為の施設である。
病院の大きさからして、入院設備のある総合病院であろう。
ロータリーの中心には大きな樹…その樹の周りには藪が特定の間隔を空けて植えられていた。
藪から少し離れ、道を挟んだ所に広い庭が設けられていて、様々な症状を持った人達が、健常者達が歩いていた。
もちろん、その中には看護婦も居る。
松葉杖を使っている者に付き添う看護婦、杖で足元を確認しながら散歩している者に付き添う親族の者…様々である。
そんな者達の半分以上を占めるのは、人外の者…魔物娘だ。
割合にして、6:4で魔物の方が多いと思われる。
そういったように数が多い魔物娘の3人組が、玄関に居た。
種族で言えば、
少し汚れた繋を着たドワーフ。
真っ白なランニングシャツを着て、首にタオルを巻いているジャイアントアント。
ヘソ出しのピンク柄をしたTシャツを着て、青いジーンズのホットパンツと黒いニーソックスを履いたサキュバスの3人だ。
その中に1人、人間の男性がいた。
この場で見れば浮いているように見える彼は黒い髪に黒い目と純ジパング人のような風貌なのだが、その服装は無地の黒いTシャツと青いジーパンと、明らかにジパング人が身に着けるような格好では無い。
少年は太陽に正面にして大きく伸びをすると、口を開けて大きく欠伸をした。

「ふあぁ〜…ようやく退院できました。ありがとうございます、エルロスさん」

一頻り伸びをした後、彼―――ジンは自分の背後に伸びる影の先から少し離れた場所に立つサキュバス―――シェインに感謝の言葉を述べる。
その言葉に、、シェインは笑顔で答える。

「いやん、『エルロス』だなんて呼ばないで、『シェイン』って呼んで!それにいいのよ、お仕事だし、ジン君可愛いし♪」

胸の下で腕を組み、大きな胸を少々強調しながらシェインは言う。
ジンはそんな仕草をするシェインを、特に胸から目を反らして『そんなことですよ』と呟く。
だが彼女にとっては、その初心な所作が可愛いのだが。

「そういえば、ニーズヘッドさんとゴートレットさんが居ませんが…」

急に思い出したように、ジンはシェインの隣に居るドワーフ―――マリィに問う。
少女は『ああ、あいつらな』と自分も思い出したように話し出す。

「ロスは警備隊の仕事で、フロリスは町長としての会見とかがあるんで来れないんだと」
「へぇ…小さい体で頑張りますね、ゴートレットさん…」
「お前それ言うとフロリス怒るぜ?言ーってやろ言ってやろー」
「ちょ!?やめてくださいよ!僕はただ感心しただけで…!」
「でもぶっちゃけ、怒った時のアイツ怖いと思うか?」
「え!?…怖く、はなさそうですけど…」
「それも言ってやろー」
「子どもですか!あ、子どもか…」
「ガキじゃねぇってんだろガキ!」
「えぇ〜…子ども(に見える人)にガキって言われた…」

ジンの膝の少し上の位置までしかない身長のマリィは、全身を使って小さくない事をアピールしようとするが、どう頑張っても身長は伸びない。
子どもの背伸び程度の努力である。
それでもマリィは精一杯背伸びをしようと頑張っている。

「テメェ今度ガキ扱いしやがったら愛用のハンマーそのドタマにぶちあてっからな!」
「さらっと処刑宣告!?」

悲鳴にも聞こえるツッコミがロータリーに響く。
その声を聞きはしても、気にする人はどこにも居なかった。
ただ、見兼ねたのか、更に隣に居るジャイアントアント―――レイルが二人の間に割って入る。

「まぁまぁ、こんな所で言い合っててもしょうがないんだし、移動しようよ!」


「ジン君の新しい家に!」


 * * *

ジンが目を覚ましてからの2日間、ロス、フロリス、レイル、マリィ、シェインの5人は訪れる時刻は違くとも、決まってジンの居る病室に足を運んでいた。
お土産や世間話など、暇を潰す為の遊び道具などを持ち寄って集まっては楽しく遊んだ。
実の所、ジンは記憶喪失以外にどこも不調は無い。
一応精神科の医師に見せたが、それも1日で終わって生活に支障は無いと診断され
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