無音。
静寂。
閑静。
暗黒。
漆黒。
暗闇。
気付けばそんな世界に唯一人、少年は居た。
なぜここに居るのか、そんな事は知らない。
ただ、居たのだ。
ここは、どこ…?
声を出したのに、声が聞こえない。
ただ頭の中に声が響く。
それは山彦のように、文字だけが頭の中に。
誰か…誰か居ないのか…?
歩く。
だが、歩いているのか?
否、進んでいるのか?
地面は、あるのか?
周りが暗くて何も見えない。
上を見ても星は無い。
足は確かに動いているのに、進んでいる感じがしない。
なんなんだ、ここは!
叫んだ―――感覚がした。
声を張り上げようと呟こうと、ただ頭の中に響くのみ。
―――<時は来た>―――
また頭の中に声が響く。
だがこれは己のでは無い。
――――<朝が来て、昼が来て、夜が来る>――
―<夜の時こそ今この瞬間>―――――
―――――<陽は落ちた>―
――<闇の支配は世界に届く>――――
少年にはワケが分からない。
なんの事を言っているんだ?
しかし不思議なことに、自然と受け入れていた。
―――<だが忘れるな、ジン・ブレイバー>―――
…ジン…ブレイバー…?
――<一国を作り上げた瞬間から、反抗勢力と言うものは出来る>――――
――――<生きようとすれば、阻害する者が現れる>――
―――――<忘れるな、ジン・ブレイバー>―
―――<暗いから“闇”では無い>―――
* * *
「ふぅむ…」
バサリ。
書庫のような一室で、紙束のような物が落ちる音がした。
落ちた先は、机。
落ちる前はどこにあったのだろう。
それは、少女の手の中から落ちたものだ。
「…結局、あの遺跡は落盤で無くなってしまったか…」
はぁ、と溜息を吐きながら机の上、先ほど落とした書類の上に突っ伏す。
余程ショックがあったのだろう。
何やら『重要な古代の遺産が〜』と嘆いている。
例の遺跡から出た後、少女はもっと詳しく調べる為に調査団20名を集めた。
全員、考古学者だ。
中にはこれからの勉強にと、新人考古学者も居たらしい。
遺跡から出て2日後、この少女―――バフォメットのフロリスは、考古学者のみで構成された団体をその遺跡へと送りこんだ。
安全確認は既にした。だから考古学者だけでも大丈夫だろうと、大して心配もせずに送りこんだのだった。
だが、帰ってきた報告は…。
『件の遺跡は、落盤事故によって道を閉ざされており、調査の続行は不可能』、と。
なんでも入る前から既に道は塞がれており、誰も遺跡の中に入る事が出来ずに立ち往生してしまったらしい。
重要な文化の遺産だというのに、調べられないとは…。
「残念じゃのぅ…はぁ〜…」
…しかし、落盤、か。
あの遺跡には、入って少年を保護しただけである。
落盤など、滅多な事で起きる物では無いのだ。
あとは、水晶が崩壊したくらいか。
しかしそれでも落盤が起こった理由には足らない。
一体、何が…?
そこまでフロリスは考えていると、不意にドアが叩かれた。
「誰じゃ」
『ああ、おれだ、マリィだ』
ドア越しから、聞きなれた声が耳に届いた。
あの時、一緒に調査に乗り出した魔物娘、ドワーフのマリィだ。
幼女だと言うのに男勝りな口調は相変わらずで、分かりやすい。
「なんじゃ、入れ」
『いや、誘いに来たんだがよ」
言葉の途中でマリィは入ってきた。
木で出来たドアを半分だけ開き、その間から小さな身体をヒョコッと覗かせる。
「あん時保護したガキんちょが目ェ覚ましたってよ」
「ほぉ、あの少年か」
「ああ。あんたの事だから心配してると思ってよ」
「気が効くの。ワシも丁度ヒマしとった所じゃ。早速行こうかの」
そう言ってフロリスは席を立ち、マリィの居る入口へと歩く。
「にしてもおめぇよ、よくもまぁこんなしみったれた部屋の中に居られんな。息がつまっちまうぜ」
「何を言うか、学者であるワシからすれば居心地良い事この上ないわ」
「ッカ〜!やだね〜、おれはこうならねぇように気を付けねぇと」
「…そんなにイヤか…?そう言われるとワシ、結構傷つくんじゃが…」
「おら、グダグダ言ってねぇで行こうぜ」
「言わせたのはおぬしじゃろが!」
騒がしく談笑しながら、2人は歩き出す。
一路、その少年が居る場所へと。
* * *
「…」
歩くたびに鉄の音がする。
煉瓦の道を歩き、木の葉を踏み、少々寒い風の中を通り、やがて木で出来た床の上に立つ。
そこに居るのは女性。
デュラハンのロスだ。
彼女が今居るのは、総合病院。
細かく言えば、総合病院の入り口の手前。
病棟は木で作られており、広い庭はリハビリに使われ、池では鑑賞用の魚が泳ぐ。
そこかしこに露出度の高い
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