……生き、てる。
目が覚めた。覚めることが、できた。
「あっ、起きたのね!」
「リエル……?」
「司、おはよー
hearts;」
リエルは僕を認めると、一直線に駆けてきて抱き付いてきた。
リエルの姿は『沼地のリリム』で、あの奴隷の衣装もそのまま。
肌と肌が触れ合い、その感触で理性が危うく飛びそうになる……
「司……おいしかったわよ
hearts;」
あの矛盾した初夜のことは、キスの前も後もハッキリと覚えている。
僕も裸だし、やっぱりリエルに食べられてしまったんだろう。
「パン種が残ってないから、昨日の果物だけなんだけど――食べる?」
「操って犯させているのに抵抗が全く無かったのは嬉しかったかな。
快楽のルーンも多めに刻んでおいて良かった」
ベッド脇の小さなテーブルにつき、軽食を摂る。
『軽い習慣性』のせいだろうか? もう、虜の果実を拒む気が起きなかった。
「僕、まだ生きてるよね?」
「……それは、考え方による、かもしれないわね」
尋ねると、リエルは体を離し、少し考え込んだ。
ちょっと寂しいかも。
「司は私に食べられちゃって、しもべにされたのよ。人間としては終わっちゃってるわ。
でもね、それは私も半分同じ。私も司の味を覚えちゃって、忘れられなくなった……」
これがリエルの本気の一部なのだろう。唯一存在していたドアが、寄らずとも開いた。
髪も、いつもの金色に戻る。
「はい、魅了も人間に化けてた時のレベルにまで落としました――
貴方は自由。逃げても追わないわよ?」
僕は愕然(がくぜん)とした。
魅了される前にあった『逃げたい』という感情が消え失せている。
リエルの本性を見ていたのに、あのどうしようもない欲望が湧き上がってこなかった。
そして――
リエルと離れたくない。
欲望と融合した感情は、完全にリエルから離れることを拒んでいた。
リエルの言う通り、僕は人間としては終わってしまっているんだろう……
「ほら、貴方は人間としては終わっちゃったのよ。このままインキュバスになるしかないわ」
リエルは、笑顔を向けた。可愛い。抱き締めたい。
その通りで言い返せない――あれ?
「インキュバス? 同族になるってこと? 干物じゃなくて?」
インキュバスってのは、そういう魔物のはずだ。
「干物? インキュバスになって、私に精を捧げ続けるのよ。
教団が人間に何を吹き込んでいるのかは知らないけど、魔物娘は夫を大事にするわよ?」
サキュバスでもリリムでもなく――魔物娘が主語、か。
どうも、『人間ではなくなる』ということを定義の中に入れなければ、
魔物娘は殺人をしない存在であるらしい。
今までの話を総合すると、多分魔物娘はみんなリエルのように、人間を『食べる』のだろう。
「あ、そうそう。司に対して私は、一回たりとも嘘をついてはいないはずよ。
私が『沼地のリリム』本人であることは隠していたけどね。
『最近、初めて王魔界の外に出た』って予想も、自分の事実そのものなんだから」
思えば、スライムにも、門番のオークにも、
あの仲良しの精霊たちにも、そして僕を捕食したリエルにも、
今の結果から逆算したら、罠であった物資の運搬だってそう――悪意を、全く感じない。
……僕は、魔物娘が、リエルのことが、少しわからなくなってしまった。
種族がオスを捕まえる、遺伝子レベルの戦略だー! って言われたら、
それまでなんだけどね。
次に聞きたいのは、あの、その……交わりの時のことについてだ。
急に弱気になったリエルや極悪非道になった僕、それに疑問を抱かなかったあの状況。
『操って犯させた』とは言っていたが、あれは一体なんだったんだろうか。
いや、魔法をかけられたことだけはわかってるよ?
「それはね、この本なのよ」
「それは、魔法の教科書?」
「半分、当たりかな? これはサキュバスに昔から伝わる古い古い物語の本よ。
私は、幼い頃から魔法を扱うイメージに、この物語の似た場面を重ね合わせているわけ。
サキュバスのお姫様が、沼地の岩山に住む征服者に降伏の貢ぎ物として奴隷にされて、
侵略の度に増える他の種族のお姫様たちと一緒に日々慰み者にされる物語で、
私はこの話が好きなのよ」
沼地? 岩山? お姫様? 奴隷? 慰み者?
今までリエルから聞いたり聞かなかったりした、キーワードのオンパレードだ。
超能力なんて使えないし、悟りも開いてないのに、『嫌な予感がする』んだけど……
あ、【鑑定】があったね。
「王女として生まれた以上は、囚われの身で奴隷のように犯されてみたいじゃない。
だから、現実にお話を少しだけ混ぜて、私を『囚われの姫』に、司を『征服者』にする、
劇場のような状況をお互いに信じ込ませる魔法を習ったのよ」
要するに、僕だけじゃなくてリエル自身も、自
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録