「ん・・・っっっ!・・・はっ!?あれ、ここは・・・」
目を開けるとそこには岩肌がびっしりとつまっている天井が見えた。
ハーリストクは天井を視認すると同時に自分がベッドで眠っていたことに気がつく。
「あれ?なんで俺はここで眠ってるんだ?たしか、え〜と・・・そうだ!俺はアイツに説教をかましていたはず・・・あれ?でもその後の記憶が無いな・・・・・・っていうことは」
その時に誰かが部屋に入ってくる気配を感じ、そちらに視線を向けると水桶に手拭いをかけて持ってきているサラナを見つけることが出来た、それと同時にサラナは手に持っていた水桶を落としてしまい固まってしまう。
「・・・・・・サラナ?」
「・・・は・・・は・・・」
「えっ?おいどうしたんだ?」
「ハーリストクさーん!!!」
「グハッ!?」
突如固まっていたサラナはその表情を今にも泣き出しそうなモノに変えていき、戸惑うハーリストクをよそに全力で抱きついた。
当然ドラゴンの全力のタックル&ホールドを食らったハーリストクはすさまじい衝撃につい声を出してしまう。あまりの痛さに怒りをあらわにしようとしたハーリストクはサラナの表情を見た瞬間、何も言うことが出来なくなっていた。
「ひぐっ、ひっぐ・・・ハーリストクさん・・・」
泣いていたのだ。ドジとはいえ、あのドラゴンと呼ばれる魔物がたかだが一人の人間のために大粒の涙を流していたのだ。
「お、おい、なんで泣いてるんだよ」
「ひっぐ・・・ひっ・・・えっぐ・・・」
「・・・泣くなよ、お前が泣いてたら俺まで泣きたくなるじゃねえか」
「だって・・・だって!!!ぐすっ、ハーリストクさんが倒れてからもう5日はたったんですよ!!!このまま死ぬんじゃないかって、心配心配でたまらなかったんですよ!!!」
「・・・そうだったのか、悪かったな」
「悪いと思ってるんなら、もう2度とあんな真似をしないでください!!!」
「わ、わかった」
「ぐすっ、本当ですか?」
「ああ、約束は絶対に守るから」
「約束ですからね・・・」
「ああ、約束だ」
そんなやり取りを終えた後、少しは落ち着いたのかサラナも平静を取り戻し今まで泣いていたのが恥ずかしかったのか慌てて目元を擦り後ろを向いてしまう。そんな姿がつい可愛らしく見えてしまったのかハーリストクはクスッと笑ってしまう。
「ところで、ここはサラナの部屋だよな?もしかしてずっと看病してくれていたのか?」
「そ、そうです」
「そうか、ありがとうな」
「あと、レイナさんも看病してくれたんですよ」
「あいつが?へえー意外だな」
「レイナさんが看病の仕方を教えてくれなかったら私今頃何も出来なかったと思います」
「・・・かもな」
普段からよくドジを連発するこのドラゴンのことだから、ろくに家事もやったことがないことを考えるに看病の仕方がわからなくても仕方がないのかもなと一人結論付けて、そっと笑みを浮かべているとむすっとした表情のサラナが目に入った。
「どうせ私は看病もろくに出来ないドジなドラゴンとか考えていたんでしょう」
「よくわかったな」
「顔に書いてましたよ」
ますますむすっとした表情になり不機嫌になるサラナ。だがその表情も直ぐに無くなりかわりに悪戯を思いついたかのような表情に切り替わる。
「そういえば、レイナさんから聞きましたよ。どうしてあんな無茶をしたのか」
その言葉を聞いた直後、ハーリストクは体が強張るのを感じた。同時におせっかいなサキュバスを今度見かけたら絶対に仕返ししてやるとも心に決めるのであった。
「その理由を聞いて、私本当に嬉しかった。まさか私のためにそこまでしてくれるなんて思っても見なかったから」
「勘違いするなよ、俺はただマーディブルックの野郎が気に食わなかったのと俺の所為でサラナに被害が出るのが嫌だっただけなんだからな」
「わかってますよ。でも私のことを考えて戦ってくれたのは本当じゃないですか」
「そ、そりゃまあ、結果的にはそうなったけどよ」
「その気持ちだけで十分ですよ。本当にありがとうございます」
その時のサラナの笑顔はハーリストクの今までの人生の中で見たこともないくらい綺麗で、嬉しそうで、ともかく素晴らしいの一言に尽きる、そんな笑顔を放っていた。
その笑顔につい恥ずかしくなり顔が赤くなってくるのがわかり、ハーリストクは「おう」と短く答えそっぽを向いてしまう。
そのまま時は流れ、しばらくの間沈黙がその部屋を支配していた。
ハーリストクはあまりの気まずさにこれからどうするかを考えようとしていたが混乱した脳は思うように働いてくれず、うまく思考がまとまらなかった。
「ハーリストクさん・・・その・・・」
「ん?どうした」
サラナの方に振り返ると何故か顔を赤らめてもじもじしている姿が見て取れた。
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