レイナに転移魔法をかけれらたハーリストクは気がつくとサラナが住んでいる洞窟付近にある村のど真ん中に転移していた。
時間は夜のためか周囲に人はおらず、寝静まっているようだった。
「どうやら、まだやつらはついていないようだな」
間に合ったことに安堵の息をつき、これからのことを思案するハーリストク。
(おそらく教団の連中は馬車や馬を用いて全速力で向かっているはずだ。それから考えるにおそらくは明日の朝には到着するだろう。だとしたら・・・あそこで待ち伏せをするか村人やサラナを巻き込むわけにはいかないからな)
考えをまとめたハーリストクは決意を新たに、転移するときに兵士から奪ってきた剣を力強く握り村から静かに立ち去ってゆく。
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朝日が静かに上り、鳥の鳴き声が響き、動物達がこぞって動き始めるなかのことだった。どこからともなく何かが走るような音が聞こえ始める。はじめは小さくかすかに聞こえるくらいの音だったのだが、やがてそれは大きく響きはじめ、次第に大地を揺るがすほどの音に変わっていた。
その音を聴いた動物達は身の危険を感じ素早く逃げ出し身を隠し始める。
そして、先ほどまで静かだった森の道に件の足音を響かせる集団が現れる。そうそれは紛れも無くセルリアン教団支部の馬達が駆ける足音だったのだ。馬達は容赦なく草花を踏み潰し、すさまじいスピードで駆けていく。
その音はまったく途切れる様子を見せず、いつまでも体に響くような音を立てて突き進んでいた。
「皆のもの!!!もうすぐに件のドラゴンが潜伏している村付近に到着する!!!そこの村もドラゴンを崇拝している者達と聞く、間違いなく神に反逆せし者どもだ!!!到着次第、神の威光をもって浄化するのだ!!!」
その騒音の中でマーディブルック神官長は声を張り上げ兵士の指揮を鼓舞していた。兵士達も己が指名を果たさんと神官長の鼓舞に答え馬を加速させていく。
やがて、兵士達は村のふもとに位置する坂道の入り口に差し掛かっていた。村は高地にあり、その周りは自然で溢れる場所なのだが、そこに向かうには1本の坂道を通らなくてはならず、他の道は断崖絶壁に阻まれており模索することは不可能であり、ある意味天然の要塞に近い立地条件だった。この坂道を突破すれば、目標はもう目の前ということもあり兵士の士気は最高潮に達していた。
マーディブルック神官長はほくそ笑み、また一つ出世への道が開かれると気分を高揚させている・・・そんな時だった。
「悪いがここは通行止めだぜ!!!」
突然声が聞こえたと思った次の瞬間のことだった。
バキッ! ゴロ ゴロロ ドンガラゴロゴロ!!!!!
坂の上から突然小規模な岩が次から次へと転がり落ち、教団兵の先団へと襲い掛かろうとしていた。
「う、うわああああ!!!!!」
「ぶつかる!!!」
「あぎゃあああああ!!!!!」
「止まれ!全隊止まれ!!!落石だ!!!」
先頭にいた教団兵は成す術も無く落石に巻き込まれ押しつぶされてゆく。
後方にいた隊長格の兵が号令を出したおかげで後方部隊は巻き込まれずにすんだがその被害は甚大で騎馬隊はほぼ全滅。残ったのは馬車に乗り込んでいる歩兵部隊のみであった。
「何だ!何が起こっているのだ!?」
突然のことに動揺を隠せないマーディブルック。
しかし、坂の上を見上げた瞬間にその表情は驚きから怒りの表情へと変貌する。
「何故貴様がそこにいるのだ・・・ハーリストク・シュタイナー!!!」
「決まっているだろう?てめえの馬鹿げた作戦を潰すためだ!!!」
そう、そこにいたのは先ほど転移をしてきたハーリストクだった。
ハーリストクは村を去った後、教団の兵力を減らすためにこの坂道を利用し、岩を徹夜で運び込み罠を張ったのだ。
「どうだ?大群で一気にドラゴンを仕留めようと来た矢先に一人の男によって、騎馬隊を失った感想は?」
「ぐぐぐ・・・!!おのれ、ふざけた真似をしおってからに!貴様どうやってあの牢を脱出して我々より先回りが出来たのだ!!!」
「そんなこと今から死ぬてめえらに話す義理はねえな」
そういうとハーリストクは剣を眼前に構えて宣言をする。
「俺が生きている限りはどうあってもこの道は通さねえ、ハーリストク・シュタイナーいざ参る!!!」
宣言した後にハーリストクは駆け出し、一直線に突っ込んでいく。
「くそ!皆のもの!!!奴は我が教団を裏切り魔物の手先と化したようだ!神の名のもとに奴も浄化してやるのだ!!!」
マーディブルックが鼓舞するのと同時に馬車から降りていた兵達は駆けてくるハーリストクを目にして少しばかり動揺していたがすぐに気持ちを切り替え剣と盾を構えて駆け出し始める。
『う
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