中編 楽しみな存在

ブレイズはフレンと戦い勝利した後、迷惑をかけたと一言残してエリエールを抜け、シンボリ大陸を後にする予定だったのだが。

「そうだ。しばらくカカロンの定期船は使えないんだけど、お前どうするんだ?」
「えっ?」

レオンの口から飛び出したのは超がつくほどのビックリ宣言だった。
なんでも、今時期は海が荒れやすいためしばらくは船が行き来できないようになるらしい。
冒険者なら依頼でも受けて食いつなぐのが妥当だが、生憎ブレイズは天下のお尋ね者、とてもではないがギルドの厄介になることも、街の厄介になることもできない身、しかし、ブレイズはさも当然といった風にこんなことを言い始めた。

「それなら、しばらくはこの大陸でも散策するさ、寝床なら雨風しのげれば何処でも寝れるし♪」
「・・・うーん、いやちょっと待った」
「???」
「ブレイズ、この大陸にはこの要塞貿易都市エリエールを除くと港町カカロンくらいしか行くとこがないぞ。後は、ダンジョンか農村か宿屋がそこら辺にあるくらいだし、悪いことは言わねえからよオレのギルドに泊まってけ」

突然の申し出にブレイズだけでなく、周りに居たグランやイカロスも驚いていた。

「レオンだっけ?あなた気はたしかかしら?」
「何言ってんだ。オレは本気だぜ?良く言うだろう困った時はお互い様ってよ」
「彼女は一応天下のお尋ね者ですが、それを匿ってはレオン様のひいてはエリエールにとって良くないと思われますが?」
「馬鹿いってんじゃねえよイカロス!例え犯罪者だろうが、何だろうが、ブレイズは別に街を襲いに来たわけじゃねえんだ。拒む理由はねえよ」
「し、しかし、万が一にでも彼女が街の住民を襲った場合はどうするのですか!?」

グランの言葉に、レオンは反応してグランの胸倉を思い切り掴みあげて威圧感をかける。
その威圧に何も言えなくなるグラン。

「もう一度、言ってみろ。例えお前でもぶん殴るぞ!ブレイズのさっきの表情は見ていただろ。あれが本気で好きで人を殺す奴に見えたか?・・・どうなんだよ?」
「・・・・・・すいません、出すぎたことを言いました」

その言葉を聞くと同時にレオンは胸倉を離した。

「まあ、お前の気持ちも分からなくも無い、だが、オレは信じるぜ。ブレイズは根っからの悪人じゃねえってな」

二カッと笑う姿はとてもいつも仕事をサボる算段をするレオンには見えなかった。

「変わってるわね、あなた達の領主は」

ブレイズも何故かくすりと笑ってしまい。
久しぶりに人を信用してみて良いかなと思ってしまったほどだった。

「そんじゃとりあえずギルドに来てくれや、生憎空き部屋はいくらでもあるからな好きに使ってくれて構わねえ。それとグラン武器を返してやってくれ」
「なっ!?本気ですか!レオン様!」
「だってよ、武器は戦士の魂だぜ?本当なら絶対に手放したくはないはずだ。オレなら絶対に手放すなんてしないね」
「し、しかし・・・」
「く・ど・い。これは領主命令だ」
「わ、わかりました」

グランは本当に渋々といった感じで武器を返却していた。

「・・・本当に変わってるわね・・・・・・」

今度はその光景に呆れてしまっているブレイズがそこにいた。

かくしてブレイズはギルドの厄介になることになり、船が動く時期までという条件で居候することが決定したのだった。

それからしばらくの間、ブレイズはギルドで生活を続けていた。
最初は長らく人を頼っていなかったためにかなりギクシャクとしていたが今では大分慣れ始めていた。

−−−エリエール冒険者ギルド−−−

「おはようございます。ブレイズさん」
「あらおはよう。フレイヤは朝から訓練かしら」

今ブレイズと会話をしているのはこの冒険者ギルドに所属しているヴァル=フレイヤ、最初は何故こんなところにお尋ね者がと警戒していたがしばらく一緒に居るうちに蟠りは解けてしまい今では訓練の相手をしてくれとせがんでくるほどだ。

「ええ、まだまだ駆け出しの冒険者ですからね、少しでも早く強くなって世界を冒険できる実力を手にしたいんです」
「本当に真面目ね。そういえば、いつも後ろからついて来ている子達はどうしたのかしら?」

ブレイズが言ういつもの子達というのは、フレイヤの仲間であるゴブリン3姉妹のことだ。

「カリン達ならまだ部屋で寝てますよ。あの子達は朝に弱いですからね」
「あの子達らしいわね」
「それよりも、今日も私に稽古を付けていただけませんか?」
「いいわよ♪居候させてもらっている身ですものいくらでもつけてあげるわ♪」

ブレイズの一日のはじまりは大抵フレイヤとの早朝稽古から始まることが多い、元から戦いが大好きなブレイズは喜んでフレイヤとの早朝稽古を受けて、そしていつも軽く打ち負かしている。

一応お尋ね者のブレイズはあま
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