前編 2人の出会い

「あそこに噂の奴が・・・」

遠く目で街が視認できる高台でサラマンダーが一人呟いていた。
彼女の名はブレイズ=ソラリス、全世界で指名手配を受けている戦闘狂で以前はバトルクラブにも所属していたほどの腕前だ。
今はもっと強くなるためにバトルクラブを抜けて旅をしている。

「どれほど強いのかな?楽しみにしているよ・・・勇者君♪」

ブレイズの目的は噂に聞こえたとある勇者と戦うことだった。
たまたま聞こえたその噂を信じてブレイズは勇者の行方を追っていた。
全ては楽しい戦いをするために・・・

−−−要塞貿易都市エリエール南関所前−−−

「エリエールか・・・また厄介なとこに来てるものだね・・・でも、難関が多ければ多いほど楽しみも増えるしいいか♪」

要塞貿易都市エリエールとは街の周りを高い防壁で囲み外敵の侵入を拒む要塞と化した貿易都市で要塞が出来て以来外敵の侵入を許したことが無いまさに無敵の都市である。
ブレイズはそんな街に今から襲いに行こうというのに物凄く気楽に歩いて関所に近づいていた。
関所には数人の兵士が待機していて目を光らせていた。

「待て、わが都市に何用だ!」

ブレイズが近づくと兵士が気づき通行を止めようとする。

「いやね、噂の勇者君がここに居るって聞いてね。ちょっと戦ってくれないかなと思ってね♪」
「勇者?何のことかは知らないがわが都市に争いごとを持ち込まれては困る!早々にお引取り願いたい」
「そう言っても、遥々会いにやってきたんだから、探すだけ探させてよ。ね、お願い♪」
「駄目なものは駄目だ!」
「・・・そう、それなら」

そういうとブレイズはさっきまでとは明らかに違う表情をしていた。

「強引に通るね♪」
「な、なに!!?・・・を・・・」

兵士の腹部にブレイズのボディブローが炸裂していた。
多少警戒していたはずの兵士に気づかせることも無いまま攻撃していたのだ。

「き、貴様!何をする!」

離れてみていた兵士達が近寄り声を荒げて剣を構える。

「何って・・・ただボディにパンチ入れただけよ?通してくれないからちょっと気絶させたのだけど、それがどうかした?」
「どうかじゃない!我々に攻撃するということはこの街を襲うと同じことだ!」
「・・・そうね、目的の勇者君に会うためならこの際人の一人や二人くらい殺してもいいかもね」
「何!?貴様、本当に魔物か!?」
「魔物ね・・・たしかに普通の魔物とはちょっと違うかもね・・・私、戦うことしか愛せていないのだから」

ブレイズの目は先ほどの穏やかな眼光から一変して戦闘狂がよくする狂喜の目に変わっていた。
兵士達の間に緊張が走り、ごくりと唾を飲み込んだ。
一触即発、そんな緊張感が漂う中とある声が響いた。

「やめろ!お前達!」

関所の中からそんな声が届き、兵士達は唐突に動きを止めて後ろを見る。

「た、隊長・・・」
「何故止めるんですか!?」
「馬鹿者!相手の力量も分からんのかお前達は!!!」

その一括に兵士達は縮こまり剣を下ろし始める。

「へえー・・・エリエールでも指折りの使い手であるあなたに出会えるなんてね、なんてラッキーなのかしら♪・・・ねえ南関所守備隊隊長ケーニッヒ=グラン」
「私のことを知っていてもらえるとは光栄だね。戦闘狂火竜さん」

グランの一言にその場にいた兵士達に緊張が走っていた。
全世界で指名手配を受けている犯罪者が目の前に居るのだ。
緊張しない方がおかしい。

「グランさん、私はただ噂に聞こえた勇者君と戦ってみたいだけなんだけど・・・中に入れろとまでは言わないから連れてきていただけないかしら?」
「・・・冗談を言ってもらっては困る。第一、この街にそのような人物はいないとさっき兵士にも言われていただろう?」
「私の情報網を侮ってもらっては困りますね。たしかな筋の情報でこの街に勇者君が来ているっていう情報を手にしているんです。この街の領主に面会するためだという情報をね」
「・・・・・・知らんものは知らん」
「なら、捜索するだけさせてください。街の人に危害は加えないと約束しましょう。なんなら、武器を預けてもいいですよ?」
「・・・・・・無理だな。貴様は犯罪者だ。そのような者が平気で街を歩けると思っているのか?」
「そうですか・・・なら」
「と言いたいところだが私としても無駄な血が流れるのは避けたい。そこでだ。私と戦い勝てたならその人物とやらの所に案内してやろう」
「本当ですか?」
「本当だ。私とてリザードマンだ、強い者の噂を聞けば戦いたくもなる。気持ちは分からなくも無い、だが・・・私の仕事の都合上タダでは通せないという話なだけでな、悪くない条件だと思うがな?」

しばらくブレイズは考え込み、答えを出した。

「ええ!その条件でいいですわ♪強い人とそれも同じ魔物
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