深い深い森の中、あたりを見回して目に映るのは、樹齢何百年は経っているであろう巨木群、無造作に伸びた草花、コケがこびり付いている岩、まさに樹海と言うにふさわしい森である。
「はぁーここはどこやねん」
そんな森の中で女性の声が発せられた。
「こないなことになるやら、森を通らずに迂回した方がよかったわ」
どうやら声の主は森を通ってしまおうと考えたらしいが、見事に迷ったらしい。
「はぁー何が悲しゅうて、わてが旅なんぞせなあかんね。おっ父の考えることはわてには理解でけへんわ」
この迷子の人物の名は御巫友華(ミカナギトモカ)。
ある日突然、父親に旅に出ろと家から追い出されてしまった可哀想な女の子である。
友華の姿は黒髪が肩まで伸びており、白い着物に青い法被を着ており腰には友華の愛刀である和道十文字が挿されている。
「地図やとこの森を抜ければ町に出られる風に書いてあるんやがなー」
とぼやいてはいるが、実は地図にはこの森を通ってはいけないという印が書かれているのだが友華は生まれて初めて地図を見たためそんな知識があるわけもなく、迂回しなくても真っ直ぐに森を通ればすぐじゃないかと安易に認識してやってきてしまっていたのだ。
グーーーーーーーー キュルルルルル
友華の腹の虫が盛大になる。
「はぅー、お腹すいたわー」
友華は食料も持たずに旅に出たため、丸一日は何も食べていない状態だったのだ。
「こ、このままやと、わて、餓死してまうわ」
このまま果ててしまうのかと考え始めたときだった。
モワー クンクン クンクン だらだらだら
突然香ばしくて良いにおいが漂ってきた。
友華は匂いを嗅いだ瞬間によだれが垂れ始めた。
「な、なんやろー?じゅるり、ええ匂いがするんやけど」
友華はその匂いがするほうにふらふらとした足取りで歩いていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
しばらく匂いにつられて歩いていた友華の目の前に洞窟の入り口が現れた。
「匂いは、ここからするんやねー」
そのまま警戒することもなく、ふらふらっと入っていく友華。
洞窟の中は誰か住んでいるのか所々にたいまつが壁に設置されていた。
しばらく歩くと何やら笑い声が聞こえ始めた。
「ぎゃははははは 旨いなこれ!」
「当然だろあたいが取ってきた食料と酒だぜ」
「おまけに戦利品まで取ってくるんだから今回は最高だねー、しばらくは楽しめそうだよ、ぎゃははははは」
といった笑い声が友華の耳に聞こえてきた。
どうやらこの奥にいるらしい。
「すみませんー、なにやら美味しそうな匂いにつられてきたんやけど、わてにも少し分けてくれへんかなー?」
とまったく危機感を持たずに話しかける友華。
「うん?だれだいあんた?」
「まさか、あの町の追ってかい?ご苦労なこってねえ」
そこに居たのは、赤い体を持ち頭からは立派な二本の角が生えていて、世界は自分のためにあるといわんばかりの勝気な表情をしたアカオニが二人も居た。
「追って?なんのことやねん?わてはただの旅人や。森を歩いておったら道に迷ってしもうてな、そしたらこの洞窟からええ匂いがしてきてな、腹が減っていたさかいに辛抱たまらんくてのう、ちょっとでええんや少し食べ物分けてくれへんか?」
突然あらわれた人間に警戒していたアカオニの二人だが、あまりにも敵意が感じられずに拍子抜けしてしまい、少し唖然とした顔をしていたが次第におかしくなってきたのか二人で豪快に笑い始めたのであった。
「あはははははは、あんたおもしろいね、あたいたちの姿を見た奴らは大抵腰を抜かすんだけどね」
「ぎゃははははは、気に入ったよあんた、腹が減っているんだって?そんじゃ一緒に飯でも食うかい?」
「ほんまでっか、うれしいわ」
あっというまに打ち解けてしまった三人であった。
「さっき町からぶん取ってきた食料だがこいつはうまいぞ」
そういって、ジューシーに焼かれた肉を差し出してくるアカオニ。
「はぐ、もぐもぐもぐ、っん、ほんまや、これすごく美味しいわ」
「あんた酒はいける口かい、あたいらと飯を食うからには酒の一つや二つは飲めねえとな」
「うーん、飲んだことあらへんのやけど、そんなに旨いもんなんか?」
「そりゃーそうさ、酒は旨い!特にあの町の酒は銘酒だからな、飲んだことないなら、ほれ一杯やってみな」
そういってもう一人のアカオニが杯を差し出してくる。
「そんならー、一杯いただきますわー」
クイッ ごくり
「どうだ、旨いだろう」
「・・・・・・」
「どうした?ありゃもしかして酒に弱かったのか?」
「・・・・・・ぃ」
「うん?何か言ったか?」
「もーうーいーぱーい、ひっく」
そこ
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