「ひえええええええ!!!!!!」
「待てコラー!!!」
闘技場に響き渡る声、発しているのはもちろん闘技場でバトルをしている者たちだが・・・
「逃げるんじゃねえ!!!」
「おねがいだからもうやめてー!!!!!!」
何故かバトルせずに追いかけっこをしていた。
もちろんただの追いかけっこではなく命のやり取りをする追いかけっこなのだが、やはり緊張感に欠ける。
追いかけているのは俺は山賊だと言わんばかりの格好をした斧を振り回す男だ。
逃げているのは・・・
「やっぱりのうりょくをじゆうにあやつるだなんてむりだよー!!!!!!」
命喰者ことDFバトルの一員でもあるグリン・レーパーである。
現在彼は斧を振り回す男から必死に逃げ回っている。
なぜ彼が戦わずに逃げているのか?
単純な話が彼は戦い方も分からない一般人と同レベルだから戦えないのである。
そして戦えないのに何故ここに居るのか?
それはデルフィニアとある契約を交わしてしまったからだ。
その契約は・・・
『その能力を自由に使えるようにすれば、ここから逃げる事を許そう』
というものだからだ。
能力というのはグリンが持つ命喰者のことだ。
命喰者は自分に命の危機が迫ると自動的に発動するもので命の危機に晒した相手の命を吸い取ってしまうという能力なのだ。
普通に考えれば、どうやっても自由に使うというのは無理な話だ。
しかし、それでもこの地獄から抜けるには自分の能力を自由に使えるようにしなくてはいけない。
そのためにグリンは戦う事を決意したのだが、やはり戦闘中に素人が能力を操る術を見つけるのは困難なわけで、現在必死に逃げ回っているというわけだ。
「はあ、はあ、やっと追い詰めたぞ!」
息切れをしながら男はようやく追い詰める事に成功したと笑みを浮かべている。
「はあ、はあ、はあ、や、やめてください・・・」
追い詰められたグリンも息切れをしながら必死に懇願をする。
「ぼ、ぼくをころそうとしたら、あなたがしんでしまいます。だから・・・」
「逃げ回っていたくせにどうやってお前が俺を殺そうってんだ!あ〜ん!?」
男はグリンの言葉を遮り、持っていた斧を勢い良く振り下ろした。
「ひっ!?」
グリンは目を瞑り来るであろう衝撃に身構えていた。
しかしいつまでたってもその衝撃が来ないので恐る恐る目を開けると目の前で斧が止まっていてブルブルと震えていた。
視線をさらに上にあげると男が自分の胸を抑え、顔は青ざめて苦しそうなうめき声を出していた。
「ウッ・・・グゥゥウウウウ・・・・グワアアアアアアアア!!!!!!」
そしてうめき声が徐々に上がりついには白目を向いて、叫び声をあげ始めた。
だんだんと声は小さくなりやがて口から血を吐き出しはじめて、そのまま前のめりに倒れこんだのである。
「う、うわ!?」
グリンは自分に倒れこんでくる男を避けるために慌てて体を起こして横に避けた。
男は倒れこんだっきり何の反応も示さなくなっていた。
審判が駆け寄り状態を確認してこう告げた。
「勝者 グリン・レーパー!!!」
勝ち名乗りを受けてへたんと腰をおろすグリン。
観客は一応拍手だけはするもののやはり面白みに欠けるのか勢いはあまり無い。
グリンはしばらくした後に立ち上がり、闘技場を後にした。
−−−DFバトル闘技場控え室−−−
グリンは戻ってくるなり戦士用のベッドへとダイブした。
DFバトル戦士用のベットだけあってとてもふかふかしている。
そのふかふか差加減にどんどん全身の力が抜けていく。
「・・・・・・いきてるんだな、ぼくは」
グリンは無意識にそんな事を発していた。
「ぼくの・・・のうりょくか・・・・・・どうすればいいのかな?」
そんな自問自答のようなことをつぶやいていると。
「何をなやんでおるんじゃ?」
「うわ!?」
「急に大きな声をあげるでない!おどろくじゃろうが!」
そういうと声の主はポカリと頭を小突く。
イテテと頭をさすりながら声の主を見てみるとそこには可愛らしい幼女の顔があった。
「えっ?こども?」
「むっ!ワシは子供ではない!ミレーヌという立派な名前があるバフォメットじゃ!」
「・・・えっと、そのみれーぬさんがなんでここにいるんですか?」
グリンがもっともな疑問を口にする。
「そうじゃな、理由としてはお主のことが心配じゃったからじゃな。戦う力も無いのに無理やりここで戦っておるんじゃろう?お主の精神状態が無事かどうかも確かめたくてな」
「でも、なんで?みずしらずのぼくのために」
「まったく見ず知らずというわけではないぞ、お主デルフィニアに拉致されてきたのじゃろう?」
「!?・・・はい」
デルフィニアという名に一瞬ビクッと反応を示すグリン。
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