今回はバトルというよりはある一人の少年の悲惨な決して救われる事の無いストーリーを重視したバトル物です。
なので特定の対戦者は出てきません。(所謂雑魚キャラしか出てこないというかバトルすらちゃんとしたものが無いです)
その事を理解した上でお読みください。
ではどうぞ。
−−−DFバトル闘技場控え室−−−
一人の少年が椅子に座り、ひざを抱えて震えていた。
少年はまるで呪詛でもつぶやくかのようにこの言葉を繰り返していた。
『死にたくない・・・もう嫌だ・・・誰か助けてよ』
この言葉を聞けば分かるように少年は戦いが得意なわけではない、むしろこれまでの人生において戦いとは無縁の生活を送っていた。
少年は毎日農具を手に地面と格闘を続ける農民だった。
そうあの事件が起きて、あの美しくも残酷なドラゴンに拉致されるまでは・・・。
コンコン
「!!!」
控え室の扉がノックされる。
その音にビクッと過剰な反応を見せる少年。
ガチャリという音をたてて、ある人物が入ってきた。
「あ・・・」
「やあグリン・レーパー、調子はどうだね」
入ってきたのはこの少年をさらった張本人ことバトルクラブの主のデルフィニアである。
少年はデルフィニアが現れた事によりいっそう震えを増し、目には恐怖の色でいっぱいになっていた。
「ふっ、そこまで怖がられると少々良心が痛むではないか、怖がらないで欲しいな」
「な、なに・・・いってる、んですか・・・こんなめに、あっているのは・・・だれの・・・せいだと・・・」
「たしかにこのような目にあわせているのは我に違いないが・・・そもそもの原因は貴様にもあるのだがな、『命喰者(ライフイーター)』」
デルフィニアの言葉にまたもビクッと脅えるグリン。
「理不尽な話だが、貴様の能力は我の目から見れば面白い玩具にしか見えないのだよ、恨むならそのような能力を開放させてしまった己を恨むが良い」
「・・・・・・」
デルフィニアの言葉にグリンはさらに涙目になり、悔しさに握りこぶしを作りさらに震えるのだった。
「だが、そこまで我の元から逃げ出したいのならば契約をしないか?」
「・・・けいやく?」
「そうだ」
「・・・どうすれば・・・いいんですか」
「簡単な話だ。その能力を自由に使えるようにすればいい」
「!?・・・そ、そんな、むちゃくちゃな」
「無茶苦茶ではないぞ、貴様はすでに有名人だ。今表に出て行けば、危険人物として追われ続けるか、教団の連中に捕まりいいように利用されるのが関の山だ、ならば自分の能力をコントロールできた方が都合が良いとは思わないか?
むしろこれはチャンスだぞ、貴様が生き抜くための力を手にする事が出来る上にこの地獄からも開放される、良いこと尽くめではないか」
たしかに良いこと尽くめかもしれないが、グリンの持つ命喰者は発動条件が限定されている。
それは、自分が死に掛けた時だけそれも本人の意思と関係なくに発動してしまうのだ。
能力は相手の魂を吸い取り、自分の寿命にしてしまうこと。
結果として自分が死ぬことなく相手を殺す事はできるが、それでも一般人程度の力しかないグリンにとっては毎回寿命を磨り減らして戦わなければならないから溜まったものではない。
戦士でもないグリンにとってこの契約はまさに最悪といってもいいものだった。
万に一つ、億に一つの可能性でしかないのだ。これを最悪といわずしてなんというのか?
グリンは絶望の表情を浮かべ黙り込んでしまう。
「まあすぐに返事をよこせとは言わないさ、気が向いたらいつでも私の部屋に来たまえ」
そういうとデルフィニアは控え室を後にした。
「・・・・・・」
再びグリンはひざを抱えて震えだすのであった。
−−−−−−−−−−
「盗み聞きか、ミレーヌ?」
「盗み聞きとは人聞きが悪いのじゃ、偶然おぬしの姿を見かけたので後を追いかけてきたらお主の会話が聞こえただけじゃよ」
「それを世間は盗み聞きというのだが」
「・・・こほん、それはともかく聞きたいことがあったのじゃが良いかの?」
「・・・ここで話すのはちょっと悪い、我の部屋で話そう」
「いいじゃろう」
そういうとミレーヌは指をパチンと鳴らした。
すると二人の足元を魔法陣が囲みだした瞬間に二人の体はあっという間に消えてしまったのだった。
−−−デルフィニアの私室−−−
誰も居ない私室に魔法陣が展開される。
魔法陣が光った瞬間に先ほど消えた二人が姿を現す。
「さあ着いたのじゃ」
「相変わらず無駄に高度な魔法を使うのだな」
「無駄とは失礼じゃな、ワシの頭脳があったればこその魔法じゃぞ」
実のところ切っ掛けは楽チンに移動できる方法は無いかなと模索した結果だったりする。
「さて先ほど聞こうとした話じゃ
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