スキンヘッドVSダークプリースト(後編)

 童子はあらかじめ買ってきていたメリケンサックを装備する。
そして適当な体勢を取る。
対するアトロポスは両手を空間にかざした。
するとパッと細長い投擲用の剣が両手に3本づつあらわれ、それをガシッと掴み投擲の構えを取る。

【両者の準備は出来たようです!!!
それでは行きます!!!レディーーーーファイト!!!!!】

 試合開始のコールが宣言された。
童子は勢いよくダッシュしてアトロポスに向かっていく。
アトロポスは童子をじっと見ているだけで特に動く気配は無い。

「おおおおおおお!!!!!!いくぜー!!!!!!!」

 ダンッと地面を蹴って高く跳躍する、そのまま拳をぐるっと振りかぶりそのまま落下とともに振り下ろした。
アトロポスはトンッと後ろに飛び難なく回避する。
拳はそのまま地面に当たった。

ガチン ビキ ビキビキ バリバリバリ ドッカーン

童子の拳はコンクリートの地面を難なく砕いた。
その光景に観客は驚きの声をあげる。

「どうだ!!!見たかこの威力!!!自分でもちょっとびっくりだぜ!!!」
「素晴らしい威力ですわ。とても一般人が放った一撃とは思えないほどに、ですが・・・」

アトロポスは素直に童子の攻撃に感心していた。
恐らく童子の一撃をもらえば負けるのは確実だと確信できるくらいだ。
それでも彼女は笑みを崩さずにこう言った。

「当たらなければ、どうという事もありませんわ」
「へん!強がり言いやがって!すぐに当ててやるぜ!!!」

 そう言って、再び思いっきり振りかぶり拳を繰り出す童子。
アトロポスはさっと攻撃をかわす。
振りかぶった拳が空を切る。
勢いあまって、たたらを踏む童子。

「おっとっと、かわすのうめえな!それならこれはどうだ!!!」

 くるっと空中を回って右足で回し蹴りを放つ童子。
この攻撃もアトロポスはギリギリで攻撃をかわす。
着地したあとに右足を軸に左手で裏拳を繰り出す。
その裏拳もしゃがんでかわされる。
だがまだ童子の攻撃は続く、さらに左足を軸に右足で蹴りを繰り出す。
だがこの攻撃もアトロポスは難なく後ろに飛んで回避した。

「マジかよ!!!今のは当たると思ったのに!!!」
「凄いですね。大振りですが素人があんなに素早い連続攻撃を繰り出すとは正直に関心しました」
「へっ、なに余裕ぶっこいてるんだ!もうすぐお前に攻撃が当たるのも時間の問題だぜ!」

 端から見れば童子が一方的に攻めているように見えるこの戦い、童子はまだ気がついていなかった。
相手がまだ一回も攻撃をしてこないという事実に。

「ふふふふふ、そうですね。たしかにこのままかわし続けるだけでは負けてしまうかもしれませんね。ですが・・・私も攻撃をはじめたら・・・どうでしょうか?」
「何?」
「私はまだ一回も攻撃していないのですよ。あなたに私の攻撃をかわすことができるかしら?」

 笑みを浮かべながらそう言うと、アトロポスの左手が一瞬だけブレタ。

ヒュッ 

 そんな音が聞こえた瞬間、童子は即座に横に倒れこむように飛んでいた。
横に倒れた後に後ろを向くと黒鍵が1本だけ壁に刺さっていた。

「凄い反射神経ね、そのまま立っていたら右肩に当たっていたのに」
「ま、マジかよ・・・全然見えなかった」
「どうしたのかしら?さっきまでの威勢の良さが無いわよ」
「は、はん!なかなかやるじゃねえか!だが俺はまだ全開じゃねえんだ舐めんなよ!!!」
「そう。よかったわ」
「へ?」
「だって素人とはいえ私に期待をさせたんですもの、これで終わられたらつまらないじゃないですか」

 今まで鷹援團で地獄の特訓を繰り返して、これ以上は無いくらいに体を鍛え上げたつもりでいた。
喧嘩こそしたことが無かったがバトルクラブに興味を持ったのはなんとなく自分を変えてくれる何かがあると直感で感じた事が原因だったからだ。
実際にかつて無いほどの新鮮な経験をしている。
だが、望んだはずの展開なのに童子は生まれて初めての動揺をしていた。
目の前の戦闘のプロはいまだに余裕の笑みを浮かべているのだ。
こっちはさっきから全力で攻撃しているというのに向こうにはまだ余力がある。

「へえー!そんなに期待されると本気を出さざるを得ないなー!」

 強がりである。
虚勢を張っていないと本当にやばいと感じたからだ。
心の弱さを見せれば負けると直感でそう感じていたのだ。

「・・・うふふ、凄いですね。相当動揺しているはずなのにまだ強気な態度が取れるなんて」
「!・・・動揺何のことだい?」
「無理をしなくてもいいですよ、私はあなたのことが気に入りましたから殺すつもりは毛頭ありませんし、この試合はあなたの特訓の時間と思っていただければいいんです」
「なんだって?」
「あなたは本当に素晴らしい素材です。経験しだいであ
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