第六章 陰謀と祝いの日記(シリアス、ほのぼの、微ギャグ)

 コツコツコツコツ・・・・・

大きな通路に響きわたる靴の音。
一人の男がその大きな通路歩いていた。
男の姿は黒いローブを身にまとい、手には青い宝玉を付けた杖を持っている。
しばらく歩き、男は大きな扉の前に立った。

 コンコン

2回ほどノックをした。

「・・・入りたまえ」

「失礼します」

 ガチャ ギィイイイ バタン

「教団魔導師グレッグル、ただいま帰還いたしました」

グレッグルと名乗った男は片膝をつき頭を下げた。
その先には白髪の頭に白い髭をたくわえた老人が座っていた。

「うむ、良くぞ戻った・・・と言いたいところだがお主が戻ってきたということはエリエール奪還は失敗したのじゃな」

「はっ、申し訳ございません」

「まあよい、元々成功する見込みが少ない作戦だったのだ。少なくともまた一つ魔物を恨む口実ができただけ良しとしようではないか」

「はっ、大主教様」

大主教、それは全世界にある教団の長に当たる人物の事。
大主教は神の教えを広める長であるのと同時に神の声を聞ける唯一の人物でもある。

「さてグレッグルよ、今回の作戦で遭遇した人物で危険と思われる人物はいたか?」

「はっ、やはりエリエールの領主にしてギルドマスター、そしてかつては世界に名を馳せた勇者の子孫でもある。ターキン=レオン、エリエールにおいてもっとも危険な人物と思われます」

「やはりか、かつては勇者と崇められていたというのに、まったく厄介な子孫を残してくれたものだ、なあアルフォンスよ」

大主教は昔の友人思い出すような表情でつぶやいた。

勇者アルフォンス、かつては教団と共に戦い魔物を殲滅せんと戦った男だった。
当時はまだ親魔物派も少なく、魔物は絶対悪と信じられていた時代でもあった。
アルフォンスの実力はすさまじく幾多の聖戦で魔物を葬ってきた。
当時の魔王軍の記録に一番危険な人物として残っているくらいだ。
しかし突然、アルフォンスは勇者をやめると言い出し、エリエールの初代領主として街づくりに没頭していったそうだ。
そういった経緯から教団からは裏切り者のアルフォンスとして記録に残してあり現在でも教団の危険人物指定とされている。

「あの頃のアルフォンスはまさに希望の星といっていいほどだったのだが、今では裏切り者扱い。まったく人生とはわからんものだ」

「大主教様、実は後一人ほど気になる人物がおります」

「ほう、レオン以外に気になる人物がおるのかグレッグルよ」

「はっ、この者は今回の作戦潰した主犯と言ってもいい人物です。まだ駆け出しの冒険者のようですが、いずれは我々教団にとって厄介な人物になるかもしれません」

「その者の名は?」

「ヴァル=フレイヤ」

「!?ヴァル=フレイヤか・・・まさかその名を聞こうとは思いもしなかったよ」

「大主教様?」

「グレッグルよ、お主に新しい命令を与える。お主はヴァル=フレイヤを見張るのじゃ、そして逐一私に報告しておくれ」

「はっ、大主教様のご命令とあらば、しかしなぜ見張るのですか?」

「お主の知るところではない、これは神のお言葉だ」

「・・・はっ、それでは行ってまいります」

グレッグルは何かブツブツとつぶやいた、同時にグレッグルが持つ杖が輝きだしグレッグル自身を包み込んだ。

 フッ

グレッグルはその場から消えた。残ったのは机に向かう大主教のみとなった。

「果たして、お主はどちらに味方をするのかな、戦の女神の名を継ぎし者よ」

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

エリエールギルド前

「やっと帰ってこれたか」

ギルドの前に姿を現したのは一週間前の依頼で怪我をしたフレイヤだった。
彼女の怪我は本来なら全治一ヶ月なのだが、医者の予想をはるかに上回る回復力でたった一週間で完治させてしまったのだ。
この回復力に担当の医者は驚愕の表情を見せていた。

「思ったより退院が遅れてしまったが、やっと今日から正式な依頼が受けられるんだな」

 ガチャ ギィイイイイイ

そう言いつつフレイヤはギルドの扉をゆっくりと開けた。

 パン! パパン! パパパパン!

開けたのと同時に中から一斉に破裂音が響き渡った。
フレイヤは何事だと言った顔で驚いていた。

退院おめでとう!!!!!

中には見知った顔と見知らぬ顔の人物達がいた。

「「「退院おめでとう姉貴(フレイヤさん)(フレイヤお姉ちゃん)」」」

まず最初に駆け寄ってきたのはゴブリン三姉妹のカリンとコリンとマリンだった。
三人ともとても嬉しそうな表情をしている。

「退院おめでとさん」

「おめでとうなのじゃ」

次に来たのはレオンとアーニーだった。

「レオン殿、それにアーニー殿これはいったい・・・」

「なあに、単純にフレイ
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