八軒目:とある研究所とそれぞれへの贈り物

※以前よりは短いですが10000字超です。



 PM20:00

「(エ△エ) まずはメフィル、君だ。コレが預かり物の現状で解析出来た範囲の性能。あとこっちで改修した部分。それと今後予想される能力とその対策だ」

 先生は綺麗にラッピングされた細長い箱を取り出すとメフィルさんの前に置いた。
 メフィルさんがそれを開けると、中からUSBメモリーが現れる。

 「受け取ったわ。それと……貴方達。さっきの情報は一応機密情報もあるから、ちゃんと忘れなさいね?」

 どの部分、と言わないあたりが嫌らしい。
 要は全部忘れろという事だろう。
 メフィルさんはUSBメモリーを掴むと席を立つ。

 「またね豪君。今夜の仕事が終わったら、お姉さんに付き合って頂戴
hearts;」

 投げキッスをしながら魔法陣を展開するメフィルさん。
 誰に向けたか知らないが、俺が棒立ちの状態になっていると愛生ちゃんと沙耶が空中で何かを捕らえるようなダイビングをしてきた。
 その様子に呆気に取られた顔をするも、クスリと笑ってメフィルさんは展開した魔法陣の向こう側に消えていく。
 俺はその様子をソファに背中を預けながら手を振って見送った。

 「……お前等、何してんの?」

 「い、いや〜」

 「お邪魔虫を退治していただけですので、お気になさらず。豪様」

 息を切らせながらのコンビプレーは見事だったが。
 虫ねぇ……そういやここ郊外だし、そういうのも居るのかね。
 
 「(エ△エ) ちなみにデビルバグとベルゼブブは居ないぞ。男も居ないしゴミもないからな」

 先生はまたラッピングされた箱を取り出した。
 先程よりも小さく、子供の手の平にも乗るくらいで形はほぼ正方形である。
 愛生ちゃんは箱を開くと、感嘆の声を上げた。

 「凄い……豪様、見て下さい。綺麗な蒼色です」

 「へぇ、確かに。深みがあるっていうのか、神秘的な感じがするな」

 「(エ△エ) あのマイティスという男が最後に使ったアイテムを参考に指輪型のマジックアイテムにしてみた。指輪自体には行き先を登録した〈帰還(リコール)〉の術式を施している。魔宝石ではなく練成した結晶体だが、下手な宝石より硬度があるし貯蔵魔力量も多い。使用時はその場から離れたいと思うだけで発動する」

 「あ、でもこれ二つありますね。何でなんですか?」

 愛生の感嘆に俺が同意し、先生が解説を加え沙耶が新たな疑問をぶつける。
 先生は続けて疑問の答えを述べた。

 「(エ△エ) 実に明快だな。彼女には妹が居るのだろう? ならばもう一つは妹にあげると良い」

 戦場になるなら、そこから護衛対象が安全地帯に瞬時に移動した方が良いにきまっているからな、と先生は補足した。
 そりゃそうか。守りながら戦うのってかなり大変って聞くしな。
 その場から非戦闘員が居なくなるだけでも、現場の人間がかなり助かるだろう。
 
 「豪様豪様、付けて下さいまし♪」

 跳ねるような声で愛生ちゃんが箱を差し出す。
 でもなぁ、こういうのって俺が付けていいもんなのかね。
 妹さんと一緒にお互い付けた方が絵になるんじゃないか?

 「(エ△エ) サイズの事なら気にするな。指輪側で合わせられるからな。よく考えてやるといいぞ」

 まぁ、新しいアクセサリーを付けてみたいっていう感覚なのかね。
 期待を裏切るのも悪いし付けてあげるとしよう。
 俺が指輪を取り出すと、愛生ちゃんは嬉しそうに左手を差し出す。

 「薬指にお願いしますね♪」

 「そういうのは好きな人としなさい」

 俺はそういうと左手の小指に指輪を通す。
 先生の言うとおり、指輪は愛生ちゃんの細い指にしっかりと合わさった。
 その様子に愛生ちゃんは大層不満そうな表情を浮かべる。

 「豪様はいけずです……」

 目に見えて頬を膨らませるのだが、仕方ないだろう。
 俺ロリコンじゃないし。

 「左手の薬指にはつける指輪は幸運を逃さないって意味があるらしいぜ? 薬指に指輪を嵌める相手を逃がさないようにっていう俺なりの気遣いだよ」

 相手は俺以外だけどな! とは流石に声に出さないが。
 俺が愛生ちゃんに指輪を付け終わると、女性陣が白い目でこちらを見ていた。何でや。

 「豪様は本当にいけずです……」

 「(エ△エ) 細かいトリビアは知っているくせに肝心な場で逃げるとは。豪の主治医辞めます」

 「流石にそれはないでしょう、豪……」

 「俺の評価ダダ下がり!? というか先生は洒落なってないから止めて!」

 本気で洒落になってないんで止めて下さいお願いします。
 狼狽する俺の様子に諦めがついたのか、愛生ちゃんは先生に話し掛ける。

 「アマルさん、申し訳ないのですが送って頂けますか?」

 「(エ△
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33