七軒目:とある重甲冑と研究所での安息

※14000字超です。もう長文確定なので長いって書かなくても良いかなと思えてきました。
※最早恒例ですが時間がある時に暇潰しでご覧下さると嬉しいです。




 PM 18:00
 どのくらい泣いていたのか。
 数分か、数十分か。
 まさか数時間という事はないだろう。そうなればとっくに先生達の呼んだ応援が掛けつけている。
 何にせよ、少女は泣き止んだ。
 止んだはいいが俺の腰にしがみ付いたまま離れない。何でや。

 「……本当に冗談みたいに事を進めるわね。貴方」

 聞き覚えのある声に首だけ振り向くと、何時の間にか牢で出会ったロリっ娘がベッドに腰掛けていた。
 脚を組んでムッチリと変形した太腿は見る奴が見れば垂涎ものだろうが――生憎俺にそっちの趣味が無いのでスルーする。
 というかさっきは暗くて分からんかったが、惜しげもなく晒された青い肌と黒い蝙蝠のような翼から種族はどうやらデビルのようだ。
 親も悪魔だし知り合いも悪魔みたいな奴ばっかだし、俺の人生に悪魔は付きもの――というか憑きものなのだろうか。

 「アンタか……あの子達は大丈夫か? 全員助かったか?」

 「問題ないわよ。船内の誘拐犯はほぼ全員確保。今は救護班が対応してるし万一に備えて護衛も居るわ」
 
 本当は制圧班だったんだけどね、と少女らしく笑いながらロリっ娘が補足する。
 あぁー……確かソラさんが全部倒しちまったんだよな。
 やる事無くて笑うしかない訳か。
 
 「貴女が天宮 愛生(あまみや あいお)さんね? 私はメフィル・フォン・ファウト。現時点での現場責任者です」
 
 わぉ、結構偉い人だった。
 俺このロリっ娘に売り言葉に買い言葉で喧嘩売ってた気がするんだけど。
 ……先生の知り合いみたいだし、何とかならんかな?

 「ご家族が心配されております。治療を受けてからご家族の下にお送りしますので、同行願えますか?」

 「嫌です」

 瞬間、メフィルと呼ばれた少女が笑顔のまま固まった。
 愛生と呼ばれた天使の少女は俺の後ろに回りこんで盾にしてくる。
 メフィルは俺の後ろを覗き込むようにして再度愛生に話し掛ける。

 「……ご家族に元気な姿を見せて安心させたいでしょう?」

 「……言葉が足りませんでした。この者も一緒でなくては嫌です」

 先程より強く俺にしがみ付く愛生ちゃんだが、流石にそれは意味不明だ。
 メフィルさんだって困って――って怖えぇぇぇぇ!?笑顔全然崩れてないけど超怖え! 不思議!

 「それは頂けません。彼は一般人ですので、愛生さんの存在を今正確に伝える訳にはいかないのです。心苦しいでしょうが後日改めて――――」

 「嫌です嫌ですいーやーでーす! お父様とお母様に紹介するのです!」

 「フフ、ご冗談を。この男性はきっとこの後のっぴきならないご用事が有るに決まっています。愛生さんもご家族の下で家族団欒としてから年末年始の大忙しに振り回される日常がお待ちでしょう? この男性へのご挨拶はそれらが終わって三賀日を過ぎ去った後での旧正月辺りで宜しいではありませんか」

 「だったら今日からずっと我が家に住まわせます! 部屋も余っていますし問題ありません!」

 「俺の予定と人権の有無を勝手に決めんな」

 片や圧迫の笑顔。片や敵意満載の膨れっ面。
 俺は自分を中心にクルクルと回る地獄絵図に耐えられずボヤくが、それすら燃料とされてしまう。

 「ご覧なさい、愛生さん。貴女が我侭を言うから彼も困っているでしょう。治療して差し上げますので大人しくGo Homeしやがって下さいな」

 「貴女こそのっぴきならないご用事があるのでは? さっさと私と彼を連れ出せばご用事に間に合いますよ? ……あ、すみません。そんなもの有りませんでしたね? でなければこんなところに居ませんものね」

 「――言うじゃない、頭でっかちの小鳥ちゃんが。媚薬と触手漬けにしてその羽根真っ黒にしてあげようかしら?」

 「――お褒めに預かり光栄ですね。あと、貴女偽者の幼女の匂いがします。年齢詐称も程々にしないとニッチ層にすらそっぽを向かれますよ?」

 「フフ、ウフフフフフフフフ……」
 「アハ☆ アハハハハハ……」

 何で俺を挟んでやるんですかねぇ……?
 声に出すと更なる燃料投下に成りかねないので黙っているが、そもそもこんな事してて良いのか。
 
 『(エ△エ) 良い訳ないだろう。このきゃんきゃんバニー共が』

 「関連要素欠片もないな!? って先生、どうしたんだよ。連絡ないから心配してたんだぞ」

 何かあったのか、ノイズ混じりで先生の映像と音声が届く。
 唐突に視界に現れた仏頂面に、俺は思わず突っ込みを入れた。

 『(エ△エ) 僕の声が聞けなくて不安だったのかね? 可愛い事言
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