四軒目:とあるデュラハンの留守番

※前回よりは少し短めです。
※顔文字が苦手な方には申し訳ない文章となっています。



 PM 14:15

 インターホンを押しても誰も出ないのは何ででせうか。
 寒さに震えながら携帯を取り出して時間を見てみるが、寒風に晒されながら待つ事十数分。
 電池と時間が減るだけで一向に誰も姿を現さない。
 一応物音はするので居る事は間違いなさそうなのだが、この調子では呼び鈴が壊れているのではと疑いたくなる。

 「いっそ裏に回るか……?」

 普通はそこまでしない。
 正直今の段階でも不審人物として通報されかねないのだが、今回に限りそうではない。
 何の変哲もない二階建ての家だが、表札にある名前は“日藤(ひとう)”。
 俺の家の向こう三軒両隣と言えばいいのか、親交の深い家である。
 年齢が長じるに従って家族ぐるみの付き合いも減ってきたが、一緒に育ってきた沙耶(さや)とはいまだに仲が良い為多少の非常識は笑って許して貰える筈だ。
 そこまで考えたが、最後に一回くらいはインターホンを鳴らして家に電話するくらいはするべきだろう。
 そう考えてインターホンを押そうとしたのだが――ドタドタと忙しない足音が響いてきた事に嫌な予感がしたので即バックステップした。

 
 「すみません! 遅くなりました!!」


 擬音を付けるなら『グォン』というところであろうか。
 風を切るような勢いで開け放たれた扉は非常に殺傷度が高そうだった。
 効果範囲内に居たら間違いなく先程の加木のような痛烈な一撃を貰う羽目になっていたろう。
 
 「沙耶。慌ててんのは分かるが前にも言ったとおり、まず開ける前に人が居るか確認しろ」

 こいつは昔からそそっかしいというか慌てん坊というか、口調に反して落ち着きがない。
 学校で他の級友と話してる時はしっかりしているんだが、知っている人間の前では油断するのか兎に角周りが見えない時が多い。
 この間なんて何もないところですっ転んで頭が取れてたからな。
 俺がキャッチしてなきゃどうなっていた事か。

 「へ?…………え、豪……?」

 おーおー、見て分かるぐらい目が白黒しておるわ。
 どうやら呼んだサンタが俺だとは、コイツは知らなかったようだな。

 「な、何で居るの!? 私全然聞いて――ちょ、ちょっと待ってて! お父さん! お母さん! 豪、豪がサンタに――っていなーーーい! 何処行ったのーーーーーー!?」

 パニック起こすほどの事か。
 声に涙が混じり始めてるが、正直寒い。
 沙耶には悪いがせめて玄関の中くらいには入れて貰おう。
 
 「おーい沙耶ー、寒いんで上がるぞー?」

 「ふぇ!? 待って、ちょっと待って! 片付けるから!」

 ……散らかしてるとは珍しいな。
 コイツの親父さんもお袋さんもそういうのは結構厳しい人だから、俺が行く時は結構片付いていた記憶しかない。
 まぁ、幼少期の話しだし最近はお邪魔してないしな。
 年齢ゆえの反抗とか、今は親父さんもお袋さんも居ないみたいだから気が抜けてたのかもな。
 
 ……そう考えると俺が寄越されたのってもしかして沙耶の監視も兼ねてか?
 あの親父さんやお袋さんならやりかねんのが怖い。
 というかさっきから重いもの引き摺ったり適当に寄せて満足した後崩れて驚いたり何か適当なモン被せて誤魔化そうという類の発言が聞こえまくってるんですが。
 アイツ本気で何してんだ?

 「大丈夫かよ、梃子摺(てこず)ってるようなら手伝うぜ? 俺、ボランティアだし」

 音のする方をひょっこり覗き込むが、部屋の中には居なかった。
 サッシが開け放たれているところからどうやら作業は室内ではなく屋外で行っているようだ。
 俺が踏み込むと同時に外から沙耶が息を切らして帰って来る。

 「はぁ……はぁ……なんで……あんなに重いのよ……・!」

 「重いって重いもんだったら手伝えって言えばいいだろ」
 
 俺の呼び掛けで漸く俺の存在を思い出したのか、沙耶を中腰のままこちらに顔を向ける。
 瞬間、絵に描いたように目を丸くして驚いた表情を浮かべるのだがそこまで大げさにされると珍獣扱いされてるようで悲しくなってきた。

 「ちょ……っ!? 待っててって言ったでしょ! 何で入ってくるの!」

 「応、お邪魔してるぜ。ついでに悪い子はいねが?」

 「赤いけど地方と時期が違うわよ! アンタ子供泣かせたいの!?」

 おーおー、狼狽してても突っ込みは入れるか。
 これはこれで楽しいんだが、話が進まないのでそろそろ流れを戻そう。
 
 「沙耶、言葉遣いが普段と違うぞ。親父さん達が居なくても『普段どおり』にな?」

 多少意地悪い表情を作ると沙耶は納得がいかない顔を浮かべつつも、二、三度咳払いをする。
 意識的に空気を仕切ると改め
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