「もうちょっと続くぞ、良い子達!」
「ニンニン!」
「何処に向けて話してんですか、アンタ達」
既に車上の人となっている近江一家と真崎一家。
車両の中部ほどから後部に掛けて六人は楽に座れそうな車の運転を俊哉の母親である春海が行い、その助手席には息子の俊哉が座っていた。
中部の座席には助手席背部に有麗夜、真ん中に悠亜、運転席の後ろに二人の母親であるエリスティアが乗り込んでいる。
俊哉が突っ込みを入れたのは後部座席。
紅白のニンジャ達は年を越えても健在だった。
「普通の服も持ってるでしょう。何で着ないんです?」
「ああ俊哉。それ、罰ゲームなのよ」
正面を向いて運転しながら、天気の話題でも返すように春海が答えた。
「……何やったんです。アンタ等?」
首だけ振り返ると、紅白のコスプレニンジャ達が視界に入る。
表情は金属製のマスクに頭巾、額当てで隠されて全くといっていい程分らないが『恥じるところ無し』と言わんばかりに堂々としていた。
口を開いたのは赤いニンジャ―――有麗夜と悠亜の父親、真崎 久(まさき ひさし)だった。
「うむ。実は張り紙の内容に気付かなくてね。朝まで妻とハッスルしていたんだ」
そう答える久を見た後、俊哉は視線だけでその妻のエリスティアを見た。
夜の事を思い出しているのか、若干頬を赤らめながら外の景色を無言で見ている。
久は尚も続けた。
「いやぁ、背中を引っ掻かれながら吸血されていたから痛くて気持ち良いのか気持ち良くて痛いのかよく分らなかったなぁ。しかも正常位でがっちり僕をホールドしてくるからそのまま何度も子宮にぶちまけちゃって。やっぱり私の妻は世界一可愛いんだな、って実感したよ」
「仔細な状況説明ありがとうございます、久さん。ご帰宅されたら存分に続きをして下さい。……で、父さん、アンタは何で年甲斐も無いコスプレ続けてるんですか」
頭を掻きながら照れている赤ニンジャの横でふんぞり返っている白ニンジャ。
俊哉の父、利秋(としあき)である。
彼は鷹揚に頷くと両の拳を固く握り、、胸を張って答えた。
「友である久君一人に恥ずかしい思いをさせる等、僕には出来ん!僕等は仲間……分かち難い運命の仲間なんだっ!!」
「一応恥ずかしいという自覚はあったんですね。意外です」
「当たり前だろう?誰が好き好んでこんな格好をすると思っているんだ?」
さも心外だ、とばかりに首を左右に振る利秋。
心なしか隣の赤い装束を纏っている久が当初よりも大分色褪せたように見える。
「本音は?」
俊哉の質問に再び鷹揚に頷いて、胸を張って答える利秋。
「日の当たる内にこの格好で外出るのってドキドキするな!ちょっと快感だ」
「母さん、先に病院に行って下さい。手遅れになってしまいます」
「あら、無駄よ?その人その服を着ると大体そうなるの。時間もあんまり無いし、終わらせて自由時間を楽しみましょう?」
俊哉よりも慣れているのか、表情を一切崩さず運転を続ける春海の発言に俊哉は頭を抱え―――その後、中部の座席で一番騒がしくなるであろう人物が静かな事に気付いた。
「そういえば有麗夜、大丈夫か?あんまり寝てないだろ。平気か?」
体を捻って後ろを見ようとしたところ、悠亜が口元に自分の指を置き静かにするよう仕草で止めてきた。
「眠ってるよ。かなり熟睡してるから、目的地までは寝かせてやってくれないかな」
後ろを見ると、有麗夜が悠亜に膝枕をして貰っていた。
比較的小柄な有麗夜だからこそ出来たのだろうが、見てみると座席からややずり落ちた状態で膝枕をして貰っているようで体勢としてはかなり苦しいのが想像できる。
が、そんな事はお構いなしなのか有麗夜は至福の表情を浮かべて夢の住人となっていた。
「リクライニングにしたらどうです?後ろの物体Xを許容できれば楽になると思いますが」
俊哉の提案に苦笑いしながら返答した。
「お父様や小父様に迷惑が掛かってしまうからね。それに有麗夜も本当に苦しければ自分で起きるだろうし、このままで良いと思うよ」
その発言に、後部座席の中年達は体を震わせながら静かに叫んでいた。
「友よ……こんな若い娘に新年早々心配して貰えるなんて、今日はなんていい日なんだ……っ!」
「私の娘は良く出来た娘だろう……友よ。悠亜、有麗夜もお前も苦しかったらすぐ言うんだぞ?私達はどんな事でも耐えられるからな?」
有麗夜を気遣ってか小声に切り替える紅白ニンジャ達。
「いいんですよ、小父様、お父様。座席を戻すのも少し手間ですから気にしないで下さい」
更に無言でテンションを上げる中年達。
その様子に俊哉は軽い溜息を一つ吐
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