※本編には若干の暴力表現、頭の悪い文章表現が含まれます。
ご覧頂く前にはご注意を願います。
もう、此処に居るようになってから、どの位経ったろう。
領主様から旦那様探しを勧められたのはいいけれど、未だに私が欲しいと思う人が此処には来ない。
春。花が咲く頃になると5〜6人の男女のグループが良く来ていた。
夏。日差しが強くなって暑くなる頃だと、それに加えてとても大きな音を立てて何人もの男の人が大勢来る事も珍しくなかった。
秋。春の頃より少ない人数が纏まって来る事が多かった。
冬。訪れる人は身寄りがなく住む所もない人達だけだった。
この国の季節を少なくとももう一巡しそうな位になるけど、未だに私は【良い人】に出会えない。
他の子はもう旦那様を見つけて、周りの一戸建ての家に移り住み毎日愛を囁きあっている。
誰でもいいから襲っちゃいなよ、と友達は言うけど、どうしても踏み込めない。
理由は簡単。前にした失敗をどうしても思い出してしまうからだ。
以前勇気を出して意識を繋げた事もあったけど、初めてで緊張してしまい何も出来なかった。
夕暮れの教室。
目の前にいる男性は先輩で、私は同じ部活の後輩。
今日は先輩の誕生日で放課後時間を貰って私が告白。
先輩にOKを貰ってその場で組み伏せられて犯された後、先輩に優しいキスを貰ってお持ち帰りされる予定だった。
部活でもクラスでも目立たないけれど、日に焼け易いのか若干黒い肌をしており細身の長身。
運動部でもないのにしなやかな筋肉が付いていて、日本人と思えない彫りの深い顔立ちをしている。
実は我が強いのか、眼光は鋭いのだけれど掛けている太目のフレームの眼鏡のお陰で暴力的な印象は無い。
そんな人を選んだのだけれど、私が何か言う前に教室を出てしまいそのまま消えていった。
あまりの唐突さにしばし呆然としていたのだが、我に返って急いで後を追った先に彼は居なかった。
何処に行ったか分からず、廊下を端から端まで移動したが結局見つからない。
諦めて別の所に移動しようとした所、隣の教室から喘ぎ声が聞こえた為覗いてみる。
すると、そこには他の子との女教師プレイにどハマリして腰を振っていた彼の姿が見えたのだ。
白状する。私はこの時点でもう彼を諦めた。
言いたくは無いが、私は今彼に組み伏せられているゴーストよりも身体つきが貧相だ。
胸は平均だろうが、腰は大きくくびれておらずお尻も大きくは無い。
取り立てて肉体的優位性の無い私がこのシチュエーションで選べるのは、後輩という付加属性だけなのだ。
相手を引き止められなかったという大きな失敗が横取りという結果を許してしまった。
獲物を逃したショックと嬉しそうに交わう姿を見せ付けられた当時の私はどうにも出来なかった。
今でもその光景は忘れられず私は少し、皆と距離を置くようになった。
三階一番奥の女子トイレ。
そこが私にとっての聖域だった。
大体のゴーストは決まった所に居らず自由気ままに行動している。
大勢の男の人が移動してくるならその先に。
大勢の男女が移動してくるならその中に。
少人数ならその後ろにと、それとなく付いていっては彼等の自宅に持ち帰られる。
私のように決まった所に引き篭もるゴーストなんて、あまり居ないだろう。
それでも皆は私に声を掛けてくれる。
『男一杯だよ、迷っちゃう♪』とか。
『あの人チョーイケメン☆ねね、どう思う?』とか。
『お持ち帰り…ジュルリ』とか。
決して私を無視せず、必ず声を掛けてきては一緒に行こうと誘ってくれた。
でも、ダメなのだ。私が欲しいのはあの人だから。
今日も何の気なしに窓から外を見る。
車が正面の校門から入ってくる。
ざわめくゴーストの皆。
どうやら男らしい。
ぼんやりと眺めると、私は大きく目を開いた。
あの人だ。
いや、正確には違うのだろうが顔立ちが瓜二つと言っていい。
頭蓋に衝撃が走ったような感覚。
動機は早くなり、下腹の辺りが物欲しそうな感覚を伝えてくる。
今すぐ行かなければ。
他の子に取られてしまう。
またあんな思いをしないように、強引にでも引きずり込んで自分の身体で相手を溺れさせてしまわなければ。
窓からすぐにでも飛び出そうとした時、不意に声を掛けられる。
「あ、花ちゃんいた〜」
女子トイレのドアから突然女の子の上半身が飛び出してくる。
長い髪をリボンで結わえ、前に垂らしている少しポワポワした雰囲気のゴースト。
確か、数日前に来た男の人の集団にくっ付いていったゴースト軍団の中に居た子ではなかったか。
…何でここに居るの?
とっくに夫を見つけてイチャつ
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