ガラガラと、車輪が回り、重機の唸り、たくさんの靴音が雲ひとつ見当たらない晴天のビル街あちこちで鳴り響き、いやでも街が慌ただしいことであると伝えてくる
そんな炎天下一歩手前の天気の中、翔一もまたその音の一つを奏でていた。
「あっつい!」
その不満を掛け声にして、翔一は荷台で運んでいた黒いコンクリートを砂利などが混じった瓦礫が山積みになっている場所へとぶちまける、勢いよく放り出されたコンクリートは僅かな土煙と共にむわっと熱気を放出していった。
『そう騒ぐな、余計に熱くなるだけだぞ』
「動いてないお前には言われたくない……」
腰に付けたベルト――その中に埋蔵されているアダムスに悪態をつきながら翔一は暑さでだるくなった腕に再び力を込め直して荷台を押し始める
少しでも気を紛らわせることができればと、翔一はボンヤリと数日前まで記憶を遡らせていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「工事……ですか?」
「うん、なぁーんでも檜室……まぁ人間の街全てに言えることなんだけど、とにかくここは魔物娘にとって住みづらくってしょうがないらしい」
事件のゴタゴタも一先ずは落ち着き、表向きは再び暇を持て余している探偵へと身を戻した翔一だったが、その平穏も長く続かずに再び剛二に呼び出しを食らっている
「そりゃあ人間が住むことしか想定されていませんからね、当たり前ですけど」
「そそ、だから今街全体の大規模な工事が行われる予定なんだけど……それにキミも参加して欲しくてね」
剛二の言葉に、翔一は首をかしげる
確かに街全体の大工事となれば人手を大量に必要とするだろうし、檜室だけでそれを補える人員はいないだろう
しかし街の外の業者を呼べばいいだけの話なので、わざわざ素人の翔一が出しゃばる必要はない
「? 業者の人たちがいれば十分じゃないですか」
その意図を剛二に率直に告げる翔一だったが、剛二は少し周りの様子を伺う素振りを見せた後、声を潜めて言った。
「……ここだけの話、魔物娘も工事に参加する」
「!」
「すこし考えれば当たり前だし、彼女たちが参加する正当性は十分にある……だからこそ何かあった時、僕たちはすぐに対応できない、私立探偵の君しかいないんだ、身軽に動けるのは」
つまりは、魔物娘にしろ人にしろ、工事の手伝いをするフリして何かよからぬ事が起こった時の為の対抗策として、翔一を予め現場へと送り込んでおきたいのだろう
「……わかりました、でも俺だけで大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫、どっちも牽制さえしとけば迂闊な真似はしないでしょ」
魔物娘の方は性質的にそこまで悪質なことはやらないだろうし、と付け加えられて二人の密談は終了した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「あぁ……終わらない」
そうして常に目を光らせて工事に勤しんでいた翔一だったが、あんまり魔物娘の方に注目しているといらぬトラブルを呼び込みかねず、かと言って工事の方に集中しすぎると頼まれたことが果たせないという板挟みがますます翔一の体力を奪っていく
『コンクリートを剥がして運ぶだけだろうに……』
「その量が半端ないからこうなってんの……」
現在行われているのは魔物娘のために歩道のコンクリートをレンガに変える作業だ。
現在の季節は初夏、このまま放っておけば靴の履けないラミアやスライム種等の魔物娘が火傷を負いかねないとして大急ぎで断熱性のレンガを敷こうというのだ。
更に横幅も広めに取り直さなければいけないので車道も車ひとつ分のみ、今度追加される条例で個人の車と自転車が使えなくなるらしい
「バスが使えるからまだいいけどなぁ……」
『ちゃんとした改装計画ができるまでは本格的な受け入れはできないだろうな……全国となれば早く見積もって10年ほどか?』
「それまで彼女たちが待ってくれてるといいけどな……」
移民の受け入れにも準備はいる、歓迎の有無は置いておいてそれは避けられない問題だ。
それが今までと全く違う生き物だというのならなおさらだ。
生物だけの視点で見ても風土病は大丈夫か? 薬は投与していいのか? 手術の仕方は? 科学以外の要因はどうなるのか? などなど考え始めればキリがない
それ以外にも人権、外交関係、宗教、その他計り知れない何かが複雑に絡み合って最早一人で全てを思考するのは不可能だ。
「魔物娘の――魔法世界だっけ? じゃその辺の問題は侵略して支配して……で力押しでなんとかしてきたんだろ?」
『全てがそうとまではいかないがな、だがここ、科学世界じゃそうはいかない……情報化に伴う社会の複雑さもそうだが、兵器も発達しすぎている、下手を打てば凄惨な戦争だって起こる』
実際に大規模な戦争が起こるとはとても思えないが、少なくとも今無理に魔物娘をこの世界に入れると世界中のあちこ
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